177 / 386
声が聞こえない
声が聞こえない・・・その17
しおりを挟む
夏樹は、自宅へと続く細い道には入らないで、直美の車のすぐ近くに車を止めた。
時計を見ると、夜の9時を少し回っているらしく、あたりはすっかり暗くなっていた。
夏樹は車を降りると、直美が立っている場所まで歩いて行く。
「どうしたの、こんな時間に?」
「ええ・・・いつの間にか、こんな時間になってしまいました」
「いつから、こんな時間になってしまったの?」
「えっ・・・?」
「あっ、間違えた、いつから、こんな時間になるまで待ってたの?」
「ふふっ・・・明るい頃からですけど。でも、待っていたわけじゃなくて、夏樹さんの家の明かりを、何度か、通り過ぎながら見てました」
「明かり・・・?灯てないわよ?」
「あっ、えへへ・・。灯くのをでした」
「あはは。あんた、面白いわね!」
「いえ・・・まあ・・・」
「な~に・・・あたしに、恋でもしちゃった?」
「えっ・・・?」
「ふふっ、そんな顔をしてるわよ。今の、あんたの顔」
「えっ・・・?そんなことはないですよ!」
「あら?そんなに、あたしのことが嫌いだったの?」
「あっ・・・いえ・・・。そんなことはないですけど」
「どっちなの・・・?」
いきなり、どっちなの?と、訊かれた直美が、返答に困っている姿を微笑みながら見つめる夏樹。
「ふふっ・・・。冗談よ!冗談。それよりも、京子に何かあったの?」
何かあったの?
京子に何かあったの?
それは、心配しているという意味?
京子は元気?でもなく、子供たちに何かあったの?ではなく・・・。
ストレートに京子に何かあったの?と、訊く夏樹さん?その言葉は、どういう意味なの?
「別に、意味なんてないわよ」
「えっ・・・?」
なんで分かったのかしら?
私は、まだ、何も言っていないのに。
やっぱり、夏樹さんって、超能力者なんじゃないかしら?
「違うわよ。あんたが、あたしに会いに来る理由なんて、京子の事しかないでしょ?」
「あの・・・どうして、そう思ったんですか?」
「どうしてって、あんた京子の親友でしょ?それに、もし、子供たちに何かあって、あたしに知らせなければならないような事態とでもいうなら、あんたじゃなくて、京子が、直接、あたしに会いに来るわよ」
確かに・・・。
「それにね、もし、子供たちが借金取りにでも追われて何ともならないなら、京子は警察か、もしくは弁護士にでも頼むはずよ」
なるほど・・・。言われてみれば、確かに。だわ。
確かに、京子の性格からしたら、夏樹さんの言う通りかもしれないわ。
「それじゃ、行きましょ!」
「えっ、行きましょって?」
「こんなところに、いつまでもいたって仕方がないでしょ?」
「あっ・・・はい。確かに」
「それじゃ、早く、家に入りましょ?」
「家って・・・あっ、はい・・・。」
「あんた、何、真に受けてんのよ」
「えっ・・・」
「こんな暗くなった夜に、あんたみたいな綺麗な女性があたしの家にって。んなわけないでしょ?」
「えっ・・あっ・・・」
「暗くなくても、あんたが、あたしの家に入ったなんて京子が知ったら、きっと、閻魔大王になっちゃうわよ」
「それじゃ、夏樹さんは、誰も、家に入れた事がないんですか?」
「な~に?雪子の事を言ってるの?」
「あっ・・・そういわけじゃ・・・」
「いいわよ、別に・・・。雪子は入ったわよ」
「やっぱり・・・」
「何が、やっぱりよ。変な勘繰りは要らないわよ」
「でも・・・」
「雪子はね、あたしを探していたの。あの家には、あんなに沢山のぬいぐるみたちが住んでいるのに、それなのに、あたしだけがいないって・・・。」
「えっ・・・?」
「キッチンを探しても、リビングを探しても、どこを探しても、あたしがいないって・・・」
「あの・・・」
「でもね、どこを探しても、あたしがいないんじゃなくて、今の雪子には、あたしが見えないの」
突然、話を急カーブさせる夏樹なのだが・・・。
なぜか直美には、そう話す夏樹の瞳が、とても、寂しく、悲しみの中にいるような気がした。
時計を見ると、夜の9時を少し回っているらしく、あたりはすっかり暗くなっていた。
夏樹は車を降りると、直美が立っている場所まで歩いて行く。
「どうしたの、こんな時間に?」
「ええ・・・いつの間にか、こんな時間になってしまいました」
「いつから、こんな時間になってしまったの?」
「えっ・・・?」
「あっ、間違えた、いつから、こんな時間になるまで待ってたの?」
「ふふっ・・・明るい頃からですけど。でも、待っていたわけじゃなくて、夏樹さんの家の明かりを、何度か、通り過ぎながら見てました」
「明かり・・・?灯てないわよ?」
「あっ、えへへ・・。灯くのをでした」
「あはは。あんた、面白いわね!」
「いえ・・・まあ・・・」
「な~に・・・あたしに、恋でもしちゃった?」
「えっ・・・?」
「ふふっ、そんな顔をしてるわよ。今の、あんたの顔」
「えっ・・・?そんなことはないですよ!」
「あら?そんなに、あたしのことが嫌いだったの?」
「あっ・・・いえ・・・。そんなことはないですけど」
「どっちなの・・・?」
いきなり、どっちなの?と、訊かれた直美が、返答に困っている姿を微笑みながら見つめる夏樹。
「ふふっ・・・。冗談よ!冗談。それよりも、京子に何かあったの?」
何かあったの?
京子に何かあったの?
それは、心配しているという意味?
京子は元気?でもなく、子供たちに何かあったの?ではなく・・・。
ストレートに京子に何かあったの?と、訊く夏樹さん?その言葉は、どういう意味なの?
「別に、意味なんてないわよ」
「えっ・・・?」
なんで分かったのかしら?
私は、まだ、何も言っていないのに。
やっぱり、夏樹さんって、超能力者なんじゃないかしら?
「違うわよ。あんたが、あたしに会いに来る理由なんて、京子の事しかないでしょ?」
「あの・・・どうして、そう思ったんですか?」
「どうしてって、あんた京子の親友でしょ?それに、もし、子供たちに何かあって、あたしに知らせなければならないような事態とでもいうなら、あんたじゃなくて、京子が、直接、あたしに会いに来るわよ」
確かに・・・。
「それにね、もし、子供たちが借金取りにでも追われて何ともならないなら、京子は警察か、もしくは弁護士にでも頼むはずよ」
なるほど・・・。言われてみれば、確かに。だわ。
確かに、京子の性格からしたら、夏樹さんの言う通りかもしれないわ。
「それじゃ、行きましょ!」
「えっ、行きましょって?」
「こんなところに、いつまでもいたって仕方がないでしょ?」
「あっ・・・はい。確かに」
「それじゃ、早く、家に入りましょ?」
「家って・・・あっ、はい・・・。」
「あんた、何、真に受けてんのよ」
「えっ・・・」
「こんな暗くなった夜に、あんたみたいな綺麗な女性があたしの家にって。んなわけないでしょ?」
「えっ・・あっ・・・」
「暗くなくても、あんたが、あたしの家に入ったなんて京子が知ったら、きっと、閻魔大王になっちゃうわよ」
「それじゃ、夏樹さんは、誰も、家に入れた事がないんですか?」
「な~に?雪子の事を言ってるの?」
「あっ・・・そういわけじゃ・・・」
「いいわよ、別に・・・。雪子は入ったわよ」
「やっぱり・・・」
「何が、やっぱりよ。変な勘繰りは要らないわよ」
「でも・・・」
「雪子はね、あたしを探していたの。あの家には、あんなに沢山のぬいぐるみたちが住んでいるのに、それなのに、あたしだけがいないって・・・。」
「えっ・・・?」
「キッチンを探しても、リビングを探しても、どこを探しても、あたしがいないって・・・」
「あの・・・」
「でもね、どこを探しても、あたしがいないんじゃなくて、今の雪子には、あたしが見えないの」
突然、話を急カーブさせる夏樹なのだが・・・。
なぜか直美には、そう話す夏樹の瞳が、とても、寂しく、悲しみの中にいるような気がした。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる