愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
175 / 386
声が聞こえない

声が聞こえない・・・その15

しおりを挟む
しかし、まあ~。なんて言ったらいいのか。というより、なんて理解したらいいのか。
それに、私が驚いたのは、愛奈という名前が、夏樹さんが考えていた名前だったなんて。

まあ、それも、確かに、驚いたといえば、驚いたんだけど・・・。
それよりも、その名前を、何の疑問も、何の違和感も持たないで、
当たり前の事のように、生まれてきた子供に付けてしまう雪子の神経の方。

それどころか、2人目の娘が生まれたとしたら、その娘の名前まで決めていたなんて・・・。
もし、その名前を、ううん、そんな雪子の心情よりも、もし、自分の名前の由来が、
雪子の昔の恋人が付けようとしてた名前だったって、愛奈ちゃんが知ったら・・・。
意外と喜んだりして・・・。んな事はないわ・・・。と、言いきれない?・・・どっち?

「でも、雪子・・・?」

「な~に?」

「う~ん、まあ~、言っても仕方がないかしら?雪子だもんね」

「ん・・・?」

「それじゃさ、もし、生まれたのが男の子だったら?」

「ふーちゃんとの間に生まれていたらって事?」

そんなに気軽に言うんじゃないっちゅ===の!
あたしだって、あたしだって夏樹さんとのって、一度や二度、いえ、何度も・・・んまあ、いいけど。

「んまあ、そうとして、その時は、何て名前にしようと思ってたの?」

「別に、決めてなかったわよ」

わよ?・・・だよ!・・・じゃなくて・・・わよ?なんか混合してない?今の、雪子って?

「決めていなかったって、それじゃ、どうするつもりだったの?」

「ふーちゃんは、大空に羽ばたくような名前がいいな~って」

「な~んだ、一応は考えていたんじゃないの」

「違うよ。もし、男の子だったら、お前が決めろって!」

「お前って、雪子が決めろっていうわけ?」

「うん・・・」

なるほどね。でも、良かったわ。翔太君の名前まで夏樹さんが決めていなくて・・・えっ?
ちょっと!ちょっと!ちょっと!待ってね!雪子さん?翔太君の翔って・・・うっそ?

「雪子・・・・?」

「な~に?」

「あのさ、それで、翔太君の名前は誰が決めたの?」

「翔太さんの名前は旦那さんが決めたのよ」

「旦那さんが?」

「うん、そうだよ」

「それじゃ、翔太君の翔太って名前は旦那さんが考えたのね?」

「違うよ・・・」

おおお===い!違うよって・・・違うよって・・・。私の耳が悪いの?

「それじゃ、誰が決めたの?」

「だから、旦那さんだってば」

「ちょっと待って。それじゃさ、どうやって、翔太って名前を決めたの?」

「うんとね、旦那さんと私とで、色々な名前の候補を出して、その中から一番良いのを選んだのよ」

「それじゃ、雪子も、色々な名前を候補に考えてみたって事?」

「違うよ・・・」

だ~か~ら~・・・トップギアから、いきなり1速に減速しないで・・・。

「違うよって、それじゃ、雪子は、どんな名前を考えたの?」

「翔太さん・・・」

あい・・・?あい!あい!あい!・・・?

「どうして・・・は、訊かなくても何となく分かったけど、それで、よく翔太って名前に決まったわね?」

「だって、大空に羽ばたくようにって願いを込めた名前って素敵でしょ?」

「でも、どうして翔太なの?翔星とか翔大とかの方がかっこいいんじゃないの?」

「あまりかっこいい名前だと重荷になるかな?って、思って」

しっかしまあ~、なんて言ったらいいのか・・・。でも、そういう事だったのね。
夏樹さんと再会しなければ、ずっと、知らないままだった。雪子の、隠し続けていた心の想い。
でも、そんな雪子の想いを知った私としては、新しい疑問が生まれていたけど。

どうして、雪子が、こんなにも長い年月の中でも、何気ない日々を普通に過ごしてこれたのか?
その事が、今まで、どう考えても分からなかったけど、今、やっと、分かったわ。

まさか、愛奈ちゃんの名前も翔太君の名前も、どちらも、夏樹さんと細い糸で繋がっていたなんて。
私としては、聞かされた今でも、ちょっと、信じられないような話だけど・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...