愛して欲しいと言えたなら

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声が聞こえない

声が聞こえない・・・その15

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しかし、まあ~。なんて言ったらいいのか。というより、なんて理解したらいいのか。
それに、私が驚いたのは、愛奈という名前が、夏樹さんが考えていた名前だったなんて。

まあ、それも、確かに、驚いたといえば、驚いたんだけど・・・。
それよりも、その名前を、何の疑問も、何の違和感も持たないで、
当たり前の事のように、生まれてきた子供に付けてしまう雪子の神経の方。

それどころか、2人目の娘が生まれたとしたら、その娘の名前まで決めていたなんて・・・。
もし、その名前を、ううん、そんな雪子の心情よりも、もし、自分の名前の由来が、
雪子の昔の恋人が付けようとしてた名前だったって、愛奈ちゃんが知ったら・・・。
意外と喜んだりして・・・。んな事はないわ・・・。と、言いきれない?・・・どっち?

「でも、雪子・・・?」

「な~に?」

「う~ん、まあ~、言っても仕方がないかしら?雪子だもんね」

「ん・・・?」

「それじゃさ、もし、生まれたのが男の子だったら?」

「ふーちゃんとの間に生まれていたらって事?」

そんなに気軽に言うんじゃないっちゅ===の!
あたしだって、あたしだって夏樹さんとのって、一度や二度、いえ、何度も・・・んまあ、いいけど。

「んまあ、そうとして、その時は、何て名前にしようと思ってたの?」

「別に、決めてなかったわよ」

わよ?・・・だよ!・・・じゃなくて・・・わよ?なんか混合してない?今の、雪子って?

「決めていなかったって、それじゃ、どうするつもりだったの?」

「ふーちゃんは、大空に羽ばたくような名前がいいな~って」

「な~んだ、一応は考えていたんじゃないの」

「違うよ。もし、男の子だったら、お前が決めろって!」

「お前って、雪子が決めろっていうわけ?」

「うん・・・」

なるほどね。でも、良かったわ。翔太君の名前まで夏樹さんが決めていなくて・・・えっ?
ちょっと!ちょっと!ちょっと!待ってね!雪子さん?翔太君の翔って・・・うっそ?

「雪子・・・・?」

「な~に?」

「あのさ、それで、翔太君の名前は誰が決めたの?」

「翔太さんの名前は旦那さんが決めたのよ」

「旦那さんが?」

「うん、そうだよ」

「それじゃ、翔太君の翔太って名前は旦那さんが考えたのね?」

「違うよ・・・」

おおお===い!違うよって・・・違うよって・・・。私の耳が悪いの?

「それじゃ、誰が決めたの?」

「だから、旦那さんだってば」

「ちょっと待って。それじゃさ、どうやって、翔太って名前を決めたの?」

「うんとね、旦那さんと私とで、色々な名前の候補を出して、その中から一番良いのを選んだのよ」

「それじゃ、雪子も、色々な名前を候補に考えてみたって事?」

「違うよ・・・」

だ~か~ら~・・・トップギアから、いきなり1速に減速しないで・・・。

「違うよって、それじゃ、雪子は、どんな名前を考えたの?」

「翔太さん・・・」

あい・・・?あい!あい!あい!・・・?

「どうして・・・は、訊かなくても何となく分かったけど、それで、よく翔太って名前に決まったわね?」

「だって、大空に羽ばたくようにって願いを込めた名前って素敵でしょ?」

「でも、どうして翔太なの?翔星とか翔大とかの方がかっこいいんじゃないの?」

「あまりかっこいい名前だと重荷になるかな?って、思って」

しっかしまあ~、なんて言ったらいいのか・・・。でも、そういう事だったのね。
夏樹さんと再会しなければ、ずっと、知らないままだった。雪子の、隠し続けていた心の想い。
でも、そんな雪子の想いを知った私としては、新しい疑問が生まれていたけど。

どうして、雪子が、こんなにも長い年月の中でも、何気ない日々を普通に過ごしてこれたのか?
その事が、今まで、どう考えても分からなかったけど、今、やっと、分かったわ。

まさか、愛奈ちゃんの名前も翔太君の名前も、どちらも、夏樹さんと細い糸で繋がっていたなんて。
私としては、聞かされた今でも、ちょっと、信じられないような話だけど・・・。
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