愛して欲しいと言えたなら

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声が聞こえない

声が聞こえない・・・その14

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「ねえ?雪子って、昔から人形劇とか好きだったの?」

「別に、好きじゃないわよ」

「だって、いま、人形劇が好きみたいとかって」

「裕子って、変なところが鈍いのは、今も、変わっていないみたい!」

「ちょっと、雪子?それって、どういう意味よ?」

「どうって、言葉の通りなのだ!」

言葉の通りなのだ・・・通りなのだ・・・なのだ・・・なのだ?
なのだって言われても・・・なのだ。は、夏樹さんといる時の雪子の言葉使い。
う~ん・・・わからん・・・もしかしたら、私ってホントに鈍感なのかしら?

「う~ん、言葉の通りって言われても、何の事だか分からないわよ」

「メール・・・ふーちゃんとの」

夏樹さんとのメール?・・・あっ、もしかして。
なるほど、なるほどね、そういう事だったのね。

確かに、それじゃ、誰が見ても分からないはずだわ。
雪子が、友達と人形を使って、物語を作ってるようにしか見えないというメールの内容じゃ、
翔太君が見ても分からなかったのは頷けるわ。

「夏樹さんとのメールって、メールの中で人形がお話をしているメールだったの?」

「人形じゃなくて、ぬいぐるみさんたち」

「ぬいぐるみさんたち?あっ、そうか、そういえば、夏樹さんの家にはぬいぐるみが沢山あったものね」

「ふーちゃんがクマさんのぬいぐるみさんで、私が、うさぎさんのぬいぐるみさんなのよ」

「うさぎさん?雪子は猫じゃないの?」

「猫さんはうさぎさんと仲良しさん!」

「仲良しさん?」

「そ・・・。仲良しさん!」

「う~ん・・・なるほど。でも、その2匹だけだったら話の内容で分かられちゃうんじゃない?」

「他にも、カバさんやキツネさんにワンちゃん、いろんなぬいぐるみさんたちも登場するの」

カバさん?・・・なぜに、カバさんが先頭なの?
でも、夏樹さんらしいかもしれないわね。
雪子の心をよく知ってないと思いつかないアイデア。

親友気取りの私なんかよりも、夏樹さんの方が、ずっと、雪子を知っているのね。きっと。
少し焼けるけど、それでも、嬉しいと思えちゃうし・・・う~ん・・・なんか複雑かも。

「でも、それを週に一回してるの?」

「違うよ。私がメールが出来る時だよ」

「なるほど。それなら、雪子としては安心だしメールもしやすいわね・・・。でも、いつから、そうなったの?」

「うんとね。翔太さんが見てからかな?」

「あっ、そうか。雪子の疑いが晴れたんだから、もう、いつでも大丈夫なのね」

「むふふぃ・・・そういう事だのだ!」

なのだ!・・・ね・・・。

私も、一度でいいから、夏樹さんの前で「なのだ!」って言ってみたいけど。きっと、無理ね。
それに、私が、「なのだ!」、なんて言ったら、
夏樹さんの事だから「お前、何か悪い物でも食べたの?」な~んて言われるのがオチだし・・・。

美人がぶりっ子なんて、悪魔が冗談を言うようなものだし・・・。
あっ、自分で自分の事を「美人が」なんて・・・やだわ。

「そう言えばさ、さっき、愛奈ちゃんが自分の名前の事を言っていたみたいだけど、どうしてなの?」

「どうしてって訊かれても、私にも、分からないかも」

「分からないかもって。さっきの雪子の口ぶりでは、何か、知ってるような感じだったけど?」

「う~ん。愛奈さんが、まだ、小学生の頃に、愛奈っていう名前の事を訊かれた事があったの」

「雪子が?」

「うん。それで、私は、それなりに答えたんだけど」

「もしかして、旦那さんの方で、愛奈ちゃんに何か言ったの?」

「そうみたい。愛奈さんって、私が決めた名前でしょ?」

「そうだったわよね」

「旦那さんとしては、別の名前を付けたかったみたいだけど」

「雪子が、一歩も引かなかった?」

「うん。それとね」

「それと?」

「どうして愛奈って名前なのかって、旦那さんが不思議に思ったみたいで」

「まあ、確かにね。生まれてくる子供の名前って、普通は、夫婦二人で考えるものね」

「そうなの。だから、旦那さんにも、愛奈って名前の由来とか訊かれたし」

「そりゃ訊かれるわよね。なにせ、雪子が頑として引かないんだから」

「別に、いいと思うんだけどな」

「雪子の方はね。それで、なんて答えたの?」

「うん。私が小さい頃から、もし子供が生まれた愛奈って名前にしようって決めていたって!」

「答えたのね!」

「うん・・・」

「んじゃさ、もし、2人目も女の子だったら、どうしたの?」

「愛里さん。愛の里と書いて、あいりさん!」

「それじゃ、もし、3人目も女の子だったら?」

「ふーちゃんは、子供は二人がいいって」

はい・・・?
今、何とおっしゃいました・・・雪子さん?

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