愛して欲しいと言えたなら

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声が聞こえない

声が聞こえない・・・その10

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恋愛物語パート2って・・・なに?
っていうか、そんな会話のメールだったら、翔太君が見たらすぐに分かったんじゃないの?
んにゃ、あの夏樹さんの事だから、きっと、誰にも分からないような何か奇策な方法で、
雪子と会話をしているんだわ・・・。ありえるわね。
などと、一人で頭の体操をしている裕子を、面白そうな瞳で見つめながら雪子は愛奈に連絡を入れた。

「あっ、もしもし、愛奈さん?」

「あっ、お母さん、どこ行ってたの?今、どこにいるの?今、何してるの?」

「え・・・あ・・・あのね・・・」

「お母さん、何回も連絡をしたのに、スマホの電源入れるの忘れてたんでしょ?」

「え・・・あ・・・まあ・・・」

「朝、起きたらお母さんいなくなってるし、裕子おばさんにも連絡をしてみたんだけど、お母さんの居場所は分からないっていうし、で、今、お母さんはどこにいるの?」

「うん・・・あのね・・・」

と、返答にしどろもどろしている雪子の右手から裕子がスマホを取り上げると。

「愛奈ちゃん・・・」

「あっ、裕子おばさん?」

あ~んも~。お願い、おばさんって言わないで・・・。

「さん、でいいわよ、さん、で・・・」

「あっ、ごめんなさい。思わず出ちゃってました。それで、お母さんは無事なんですか?」

「無事って?ふふっ、雪子は、どこも怪我なんてしていないわよ」

「だって、お母さん、なんか上手く話せないみたいだったから」

「ふふっ・・・。それは、愛奈ちゃんが機関銃みたいに質問攻めにしたから、雪子がびっくりしちゃったのよ」

しっかし、まあ~。何も、ここまで猫かぶらなくても良いと思うんだけど。
私のお隣に座ってお澄まししている雪子さんは、いったい、どちらの雪子さんかしら?ふふっ。
で、ありますよ!の、雪子さんは、どちらにお出かけかしら?

スマホを両手で塞ぎながら、面白そうに話しかけてくる裕子を、
雪子が、恨めしそうな瞳で見つめ返している。

「愛奈ちゃん、大丈夫よ、雪子はここにいるから」

「よかった・・・。でも、お母さんは、いったい、どこに行っていたんですか?」

「それがね、雪子のお父さんが少し体調が悪くなったらしくて、雪子のお母さんの方から、夜遅くに連絡があったらしいのよ」

「おじいちゃんが?」

「そうみたい。それで一応、お父さんには、その事を伝えてから出かけたみたいなのよ」

「あの、バカおやじが!ウザいんだよ!まったく・・・」

えっ・・・?
ってか、おいおい・・・。ちょっと、待って。何?その低音での発声練習的な声は?
んでもって、その、突然、変身みたいな多重人格は、雪子の専売特許じゃなかったの?

「ちょっと、愛奈ちゃん?そんな風に言うもんじゃないわよ」

「えっ・・・?」

「えっ・・・?って、もしかして、今、言った事を覚えていないとかって言わないわよね?」

「私、何か、変な事を言いました?」

ああ~もう・・・。ダメだわ。
でも、前もって、雪子の多重人格を知っていなかったらと思うと、なんか、ゾッとするわね。

「ふふっ・・・きっと、愛奈ちゃんはお母さんに似たのね」

「そうかな?」

「そうよ、勝気な性格なんて、雪子そっくりだわ」

「勝気って、お母さんがですか?」

「普段は、大人しいけどね・・・」

「それって、やっぱり、私の名前と関係があったんですね」

はい・・・?何を言っちゃってるの?愛奈ちゃん?
ってか、変な言葉使いで考えてしまう私って、どこか壊れたのかしら・・・?

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