愛して欲しいと言えたなら

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声が聞こえない

声が聞こえない・・・その9

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確かに、雪子が以前のように、夏樹さんといる時の自分を私に隠さなくなったのは、
私としても、嬉しいのは、確かに嬉しいんだけど・・・。でもね・・・。
いったい、どっちの雪子が本当の雪子なのか?だんだん分からなくなってきちゃうわ。

「そうそう。それよりも、早く、愛奈ちゃん心配しているから連絡しないと」

「そうね。それじゃ、連絡をしようかしら」

「でも、旦那さんは、愛奈ちゃんに何も言わなかったのかしら?」

「言わないっていうより、愛奈さんは、あまり、旦那さんとは口を利かないから」

「口を利かないって、どうして?旦那さんと喧嘩でもしたの?」

「そういう訳じゃないけど。前に言ったでしょ?旦那さんが、翔太さんに、私のメールの相手を確かめさせたって」

「それって、確か、愛奈ちゃんが断ったって言ってたわよね?」

「うん。それで、翔太さんに頼んだんだろうけど」

「しかし、よくバレなかったわよね?」

「ふふっ。きっと、裕子が見たとしても分かんなかったと思うわよ」

「分かんなかったって、夏樹さんが、どんなに女の人の言葉を使っていたって分かるんじゃないの?」

「そう、思う?」

「う~ん。確かに、それだけだったら、メールの会話の内容で分かっちゃうかもしれないわね」

「でしょ・・・」

「でも、翔太君には、分からなかったわけでしょ?」

「うん。全然、分からなかったみたい。ふふっ」

ふふって・・・。
しかし、まあ、ただ普通に交わしているだけの、夏樹さんとのメールの話なのに。

きっと・・・嬉しいのね。
私とする何気ない些細な会話の中であっても、ほんの少しでも夏樹さんを感じられる時間が、
雪子にとっては、嬉しくて嬉しくて仕方がないのね。
そんなに幸せそうな顔しちゃって・・・。じゃなくて・・・もう。

「私が見ても分からないって、いったい、雪子は夏樹さんと、どんなメールをしてたの?」

「どんなって、普通の会話よ。どこににでもあるような、何気ない、日常の会話」

「日常の会話・・・?」

「うん。そうだよ」

「日常の会話って、それじゃ、どうやって、お互いの気持ちを確かめたりとかしてたの?」

「お互いの気持ちって。裕子ったら、私は、これでも、まだ、人の妻なのよ」

いや、雪子が、それを言う?・・・
えっ?・・・まだ・・・?
いえ、その前に、まだ、人の妻・・・?

「でも、そんなどこにでもあるような、ただの日常の会話だけじゃ、飽きちゃうんじゃないの?」

「どうして?」

「どうしてって。だって、おはようとか、おやすみなさいとか、今日は何があってとかって感じなんでしょ?」

「違うわよ。ちゃんと会話してるわよ。ふーちゃんと私の恋愛物語パート2を」

はい・・・?
夏樹さんと雪子の恋愛物語パート2って、ちょっと、雪子?

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