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声が聞こえない
声が聞こえない・・・その6
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雪子の姿を見つけた裕子は、すぐに声をかけようとはしなかった。
温泉の玄関近くのベンチに座り直す裕子を見つけた雪子が嬉しそうに手を振っている。
雪子って、ほんとに困った子ね・・・。
あんなに嬉しそうな顔して、あんなに嬉しそうな仕草で手を振られたら、こっちも手を振るしかないじゃない。
少しすると、今度は、運転席側のドアが開いた。
開いたドアの方へ駆け寄っていく雪子は、まるで(嬉しい)が、服を着て歩いているみたいである。
案の定、というより、それ以外にはないと思うのだが、裕子にとっては、やはり案の定のようで。
車から降りてきた夏樹の姿を見ると、どうしても、複雑な思いに駆られてしまうみたいである。
しっかし、ほんと女よね~、夏樹さんって。
いったい、誰が想像したかしら?
あの夏樹さんが、30年後にまさかの女装家になっているだなんて。
そして、裕子の視界の中にいる、女装をしている夏樹に抱かれた自分が過去にいたのだと。
確かに自分は、今、見ている、あの夏樹に何度も何度も抱かれた記憶が幻ではないのだと思うと、
裕子を抱いた事を、今でも覚えているはずの夏樹が、どんな気持ちで今の私を見ているのだろうか?
そんな思いが、裕子の中で懐かしい記憶と、今の複雑な感情が浮かんでは消えてを繰り返していた。
でもさ、考えてみたら、夏樹さんって、雪子の事も抱いたのよね?
まあ、もちろん、今は、まだ、雪子を抱いてはいないとは思うけど・・・よね?・・・まだ?
う~ん・・・まだ?の、疑問はこの際どこかに置いとくとして。
という事はさ、夏樹さんって、私と、雪子の、二人と寝た人になるのよね?
などと、一人、摩訶不思議な笑みでブツブツひとり言を言っていると、不意に夏樹の声が聞こえた。
「あんた、何、一人でニヤけてるの?」
「えっ・・・?」
夏樹の声に思わず顔を上げると、夏樹と雪子が、覗き込むように裕子を見つめていた。
「裕子、変なんだ・・・」
「えっ・・・いえ・・・あの・・・ってか、それより、雪子?あんた今までどこに行ってたのよ?」
「どこって・・・ふーちゃんのところだよ」
「・・・のところだよって」・・・どうやら裕子には、ふーちゃんという言葉が言えないらしい。
しかし・・・。と、言うべきか、相変わらず・・・。と、言うべきか。
それとも、人目を気にしないで・・・。と、言うべきか。
こちらも、漏れる事なく、夏樹の腕に絡みついている雪子なのである。
「ほら。もう、離れなさい」
「え===っ!どうしてでありますか?」
「何、言ってるのよ。ちゃんと見せてあげたでしょ?」
「ピンクのおぱんちゅでありますか?」
「そうよ・・・」
「裕子、ふーちゃんね、今日はピンクのおぱんちゅなのでありますよ」
雪子に急に話を振られた裕子は、返す言葉よりも、自分の意思とは無関係にその視線が、
夏樹のスカートの腰より少し下あたりをウロウロしてしまっていた。
「あら?あんたも見たいの?」
「えっ・・・?」
「ダメよ、ここじゃ、人が見てるかもしれないでしょ?」
「えっ・・・いえ・・・あの・・・別に・・・」
「ほんと、あんたって、あたしの前では借りてきた猫みたいになっちゃうのね」
そう言って微笑んでいる夏樹を、少し意地悪そうな視線で返すのが今の裕子には精一杯のようで。
首を少し傾げて、また、微笑む夏樹に「まったく、もう~」・・・そう言って笑う裕子であった。
「裕子・・・。雪子を、お願いね」
夏樹は、そう言って優しく微笑むと、腕に絡みついている雪子を裕子に引き渡した。
しかし、裕子に引き渡された雪子はというと、自分を引き渡した夏樹を意地悪な視線で見つめながら。
「いいもん!今度は、裕子と浮気しちゃうんだもんね」
えっ・・・私と、浮気って・・・。
ちょっと、雪子・・・?
あんた、夏樹さんと、どんな関係になってるわけ?
「ふふっ・・・心配しなくても大丈夫よ。今、裕子が思ったような関係にはなっていないから」
今、私が思ったような関係になってないって、夏樹さんに言われても。
愛奈ちゃんに聞かされた後の私としては、その言葉を信じるのは、ちょっと無理があるような。
「あんた、何、考えてんのよ?大丈夫よ。まだ、雪子とはAまでしかしてないわよ」
「違うよ。Bまでしたでありますよ」
「してないでしょ・・・?」
「だって、ふーちゃんがぎゅっ!って、したでありますよ」
夏樹の腕を離れた後も、どうでもいいような話で盛り上がっている雪子を見ていると、
喫茶店のマスターの言っていた話が、少しづつ、現実味を帯びてきているのかもしれない?
と、思った。そんな不安の中で、二人の笑いに合わせるように微笑みを浮かべる裕子であった。
温泉の玄関近くのベンチに座り直す裕子を見つけた雪子が嬉しそうに手を振っている。
雪子って、ほんとに困った子ね・・・。
あんなに嬉しそうな顔して、あんなに嬉しそうな仕草で手を振られたら、こっちも手を振るしかないじゃない。
少しすると、今度は、運転席側のドアが開いた。
開いたドアの方へ駆け寄っていく雪子は、まるで(嬉しい)が、服を着て歩いているみたいである。
案の定、というより、それ以外にはないと思うのだが、裕子にとっては、やはり案の定のようで。
車から降りてきた夏樹の姿を見ると、どうしても、複雑な思いに駆られてしまうみたいである。
しっかし、ほんと女よね~、夏樹さんって。
いったい、誰が想像したかしら?
あの夏樹さんが、30年後にまさかの女装家になっているだなんて。
そして、裕子の視界の中にいる、女装をしている夏樹に抱かれた自分が過去にいたのだと。
確かに自分は、今、見ている、あの夏樹に何度も何度も抱かれた記憶が幻ではないのだと思うと、
裕子を抱いた事を、今でも覚えているはずの夏樹が、どんな気持ちで今の私を見ているのだろうか?
そんな思いが、裕子の中で懐かしい記憶と、今の複雑な感情が浮かんでは消えてを繰り返していた。
でもさ、考えてみたら、夏樹さんって、雪子の事も抱いたのよね?
まあ、もちろん、今は、まだ、雪子を抱いてはいないとは思うけど・・・よね?・・・まだ?
う~ん・・・まだ?の、疑問はこの際どこかに置いとくとして。
という事はさ、夏樹さんって、私と、雪子の、二人と寝た人になるのよね?
などと、一人、摩訶不思議な笑みでブツブツひとり言を言っていると、不意に夏樹の声が聞こえた。
「あんた、何、一人でニヤけてるの?」
「えっ・・・?」
夏樹の声に思わず顔を上げると、夏樹と雪子が、覗き込むように裕子を見つめていた。
「裕子、変なんだ・・・」
「えっ・・・いえ・・・あの・・・ってか、それより、雪子?あんた今までどこに行ってたのよ?」
「どこって・・・ふーちゃんのところだよ」
「・・・のところだよって」・・・どうやら裕子には、ふーちゃんという言葉が言えないらしい。
しかし・・・。と、言うべきか、相変わらず・・・。と、言うべきか。
それとも、人目を気にしないで・・・。と、言うべきか。
こちらも、漏れる事なく、夏樹の腕に絡みついている雪子なのである。
「ほら。もう、離れなさい」
「え===っ!どうしてでありますか?」
「何、言ってるのよ。ちゃんと見せてあげたでしょ?」
「ピンクのおぱんちゅでありますか?」
「そうよ・・・」
「裕子、ふーちゃんね、今日はピンクのおぱんちゅなのでありますよ」
雪子に急に話を振られた裕子は、返す言葉よりも、自分の意思とは無関係にその視線が、
夏樹のスカートの腰より少し下あたりをウロウロしてしまっていた。
「あら?あんたも見たいの?」
「えっ・・・?」
「ダメよ、ここじゃ、人が見てるかもしれないでしょ?」
「えっ・・・いえ・・・あの・・・別に・・・」
「ほんと、あんたって、あたしの前では借りてきた猫みたいになっちゃうのね」
そう言って微笑んでいる夏樹を、少し意地悪そうな視線で返すのが今の裕子には精一杯のようで。
首を少し傾げて、また、微笑む夏樹に「まったく、もう~」・・・そう言って笑う裕子であった。
「裕子・・・。雪子を、お願いね」
夏樹は、そう言って優しく微笑むと、腕に絡みついている雪子を裕子に引き渡した。
しかし、裕子に引き渡された雪子はというと、自分を引き渡した夏樹を意地悪な視線で見つめながら。
「いいもん!今度は、裕子と浮気しちゃうんだもんね」
えっ・・・私と、浮気って・・・。
ちょっと、雪子・・・?
あんた、夏樹さんと、どんな関係になってるわけ?
「ふふっ・・・心配しなくても大丈夫よ。今、裕子が思ったような関係にはなっていないから」
今、私が思ったような関係になってないって、夏樹さんに言われても。
愛奈ちゃんに聞かされた後の私としては、その言葉を信じるのは、ちょっと無理があるような。
「あんた、何、考えてんのよ?大丈夫よ。まだ、雪子とはAまでしかしてないわよ」
「違うよ。Bまでしたでありますよ」
「してないでしょ・・・?」
「だって、ふーちゃんがぎゅっ!って、したでありますよ」
夏樹の腕を離れた後も、どうでもいいような話で盛り上がっている雪子を見ていると、
喫茶店のマスターの言っていた話が、少しづつ、現実味を帯びてきているのかもしれない?
と、思った。そんな不安の中で、二人の笑いに合わせるように微笑みを浮かべる裕子であった。
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