愛して欲しいと言えたなら

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あなたが見えない

あなたが見えない・・・その17

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夏樹さんを見かけた・・・?
いえ。まだ、早いわ!
夏樹さんかもしれない?という事は?
愛奈ちゃんが見かけた人が、まだ、夏樹さんと決まったわけじゃないんだから。

「愛奈ちゃんが見かけたって・・・?。どこで、見かけたの?」

「見かけたとはいっても、病院の駐車場なんです」

「病院の駐車場・・・?」

「はい。ちょっと、病院の外のコンビニに行こうと思って、玄関を出ようとした時に」

「駐車場に、雪子がいたの?」

「はい。誰かに、車で送ってきて頂いたみたいでした」

「そうだったの・・・。それで?」

「はい。私が見かけたのは、ちょうど、お母さんが車から降りてきたところだったんです」

「それで、雪子を送ってきた人が、もしかして、メールの相手かもしれないと思ったのね」

「いえ・・・」

「いえって・・・?まだ、あるの?」

「はい。車からお母さんが降りたすぐ後に、運転席のドアが開いて、運転していた人も降りてきたんです」

なぜに降りてくるのよ!夏樹さん?
あっ・・・まだ、夏樹さんと決まったわけじゃないけど。

「それで・・・?」

「はい。私は、お母さんの方へ行こうと思ったんですが、思わず、足が止まってしまって」

「どうして・・・?何か、あったの?」

「はい。あの・・・これって、裕子さんに言ってもいいのか、ずっと、悩んでいたんですけど」

おいおい・・・夏樹さんである可能性が100%に限りなく近づいているような・・・。

「もしかして、その事と、愛奈ちゃんがさっき言ってた趣味とか、趣向とかと、関係があるの?」

「はい・・・。ただ、裕子さんに、どういう風に訊いたらいいのか分からなくて・・・」

「そう・・・。とりあえず、続きを話してみてよ」

「はい・・・。実は、運転席から降りてきた人のところに、お母さんが駆け寄って・・・それで」

「それで・・・?」

「それで、お母さんが、急に、その人の腕に自分の腕を・・・」

あっ・・・100%になったかも?

「雪子が、その人と腕組をしたのね?」

「はい・・・。でも、どう見ても、お母さんの方から、腕を組みにいったように見えたんです」

「雪子の方から・・・?」

「でも、そこまでは、まだ、よかったのですが・・・」

えっ・・・?
まだ、続きがあるの・・・?

「雪子に、何か、あったの?」

「はい・・・。実は・・・あの・・・」

「いいから、その続きを話してみてよ」

「はい。実は、あの・・・その・・・二人が、いきなり、抱き合ったんです」

あう・・・。ノックアウトのゴングの音が聞こえてしまったような・・・。
病院まで雪子を送ってきたっていうのは、間違いなく夏樹さんだわ。

でも・・・やっぱり、雪子は、夏樹さんに会いに行ったのね・・・。
しかし、まあ、普通、抱き合うかしらね・・・。
病院の駐車場でって・・・。しかも、まだ、明るいっていうのに。

「抱き合ったって、だって、まだ、外は明るかったんじゃないの?」

「そうなんです・・・。だから、駐車場にいた他の人たちも、みんな、驚いたみたいで」

「でしょうね・・・」

「でも・・・」

「でも・・・?」

「はい・・・。私には、抱き合ったというよりも、お母さんの方から抱きついたように見えたんです」

あちゃー・・・。

「それに、すぐに離れるのかなと思ったんですけど・・・」

「離れなかったの・・・?」

「はい。けっこう、長い時間抱き合ったままで・・・。それで・・・」

「それで・・・?」

「その時のお母さんって、私の知ってる、お母さんじゃないみたいで・・・」

きっと、もう一人の雪子だわ・・・。
夏樹さんと一緒にいる時の雪子には、私でも、信じられなかったくらいなんだから。
ましてや愛奈ちゃんは、雪子の娘なんだから、そんな母親の姿を見たら驚くもの無理はないわね。

「もしかして、雪子が、その人に甘えまくってた・・・みたいな?」

「はい・・・そうです・・・。その通りです。どうして、分かったんですか?」

「えっ?あはっ、何となくよ!何となく・・・。でも、それと雪子の趣味と、どう関係があるの?」

「あの・・・言ってもいいですか・・・?」

「大丈夫、言ってみて!私は、何を聞かされても驚かないから」

「はい・・・。あの、もしかして、お母さんって、同性愛者だったんですか?」

はい・・・?
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