148 / 386
あなたが見えない
あなたが見えない・・・その8
しおりを挟む
その頃、直美はというと、京子の言葉に四苦八苦しながら何とか怪しまれないように、
車窓から見える景色や世間話で、京子の疑心をかわしていた。
「ねえ、直美・・・?」
「はい・・・?」
「さっきから、あの人の話題に触れないようにしてるのは、私の気のせいかしら?」
「ははっ・・・そうよ、気のせいよ、きっと気のせいだと思うわよ」
「そうかしら・・・?」
「でも、京子・・・?」
「何・・・?」
う~ん・・・何も、そんな突っかかるような訊き返ししなくてもいいと思うんだけど・・・。
「何って・・・別に、何って言うほどの事でもないんだけど・・・」
「だから、何よ・・・?」
「言ってもいいんだけど。なんか、京子って、すぐ怒るから・・・」
「別に、怒らないわよ・・・」
「そうお・・・?」
「別に、怒ったりしないから言ってみてよ・・・?」
「それじゃ、言うわよ・・・。京子は、どうして、そんなに夏樹さんにこだわるのかな?って、ちょっと思ったのよ」
「別にこだわってなんてないわよ。直美、おかしいんじゃないの?」
おいおい・・・思いっきり!こだわってるでしょうが・・・?
「京子が、夏樹さんと離婚してから、もう10年でしょ?」
「そうね・・・」
「そろそろ忘れてもいいんじゃないの?」
「何を・・・?」
おおお===っ!怖わっ!
でもさ~、今さら、夏樹さんがどこで何をしてようが、
誰かに、とやかく言われる筋合いじゃないと思うのよね。
それでなくても、京子は、夏樹さんの事が嫌いで離婚したわけだし。
これが、お互いが好きで好きで仕方がないのに、どうしても別れなきゃいけなかったっていうんならさ、10年過ぎようが20年過ぎようが、心のどこかに、いつもその人がいるっていうんならわかるわよ?
でも、京子の話を聞く限りでは、お互いが、お互いを罵り合って別れたって聞いてるしさ。
あっ・・・この件に関しては、夏樹さんは否定してたけど・・・。
夏樹さんの話では、京子の方が一方的に夏樹さんを罵っていたって言ってたし・・・。
たぶん、こっちが正解だと思う。
京子は、いったい、何をどうしたいって思ってるのかしら?
「直美・・・?そこを右よ・・・」
あひっ・・・。そこを右に曲がったら、夏樹さんの家の前に一歩近づいてしまうじゃないのよ。
「ねえ、直美・・・?」
「はい・・・?」
「なんか、さっきから、あの人の家の前の道路を走りたくないみたいに見えるんだけど?」
「そ・そんな事ないわよ!」
「ふ~ん・・・それじゃ、そこの十字路を右に曲がってくれる?」
今日の京子は、どうしても、夏樹さんの家の前を通りたいみたいだわ。
これって、やっぱり女の勘っていうやつなのかしら?
まあ、確かに京子がさっき勘付いた通り、雪子さんは、今、こっちに帰って来てるには来てるけど。
とはいえ、いくらなんでも、夏樹さんに会いに来てるとは、ちょっと思えないんだけどな~。
「でも、京子は、どうして、夏樹さんの家を知ってるの?」
「私が、あの人の家を知ってたら、何か悪いの?」
「私、思うんだけどね・・・」
「何・・・?」
「もう、10年も前の事なんだからさ、夏樹さんの事は忘れた方がいいんじゃないの?」
「なんか、そのいい言い方って、私が、あの人に、まだ未練があるみたいな言い方じゃない?」
言い方じゃない?ってか、いや~思いっきり!未練、あり!あり!なんですけど・・・。
直美が運転する車が、夏樹の家が見える距離になる直線道路に差し掛かったあたりから、
「どうぞ、誰も見えませんように」と、心の中で祈りながら、
夏樹の家の方に視線を移しながら車を走らせていく。
すると、直美の祈りが通じたのか、夏樹の家の庭にも、家に続く細い上り坂にも、
誰の姿も見えなかったので、京子に気付かれないように、
直美は心の中で、ホッと、ため息をついた・・・直後である。
「ほら!直美?私が言った通りでしょ?」
「へっ・・・?」
夏樹の家の周りに誰もいない事に安心していた直美が、
京子が指さす方に視線を移してみると、郵便局から出てきたらしく、
夏樹と雪子が仲良く腕を組みながら、こちらに向かって歩いてきていた。
げっ・・・うそぴょーん・・・どぼちて?どぼちてなの?どぼちて、そこにいるの。お二人さん?
「あれが、あの人の本性なのよ。まったく、どこまで、私を馬鹿にしたら気が済むのかしら?」
隣の席で呟く京子の後半の言葉が、だんだんと強くなっていく予感を感じ取った直美は、
思わず心の中で呟いた・・・。「私は、貝になりたい・・・」・・・あう。
車窓から見える景色や世間話で、京子の疑心をかわしていた。
「ねえ、直美・・・?」
「はい・・・?」
「さっきから、あの人の話題に触れないようにしてるのは、私の気のせいかしら?」
「ははっ・・・そうよ、気のせいよ、きっと気のせいだと思うわよ」
「そうかしら・・・?」
「でも、京子・・・?」
「何・・・?」
う~ん・・・何も、そんな突っかかるような訊き返ししなくてもいいと思うんだけど・・・。
「何って・・・別に、何って言うほどの事でもないんだけど・・・」
「だから、何よ・・・?」
「言ってもいいんだけど。なんか、京子って、すぐ怒るから・・・」
「別に、怒らないわよ・・・」
「そうお・・・?」
「別に、怒ったりしないから言ってみてよ・・・?」
「それじゃ、言うわよ・・・。京子は、どうして、そんなに夏樹さんにこだわるのかな?って、ちょっと思ったのよ」
「別にこだわってなんてないわよ。直美、おかしいんじゃないの?」
おいおい・・・思いっきり!こだわってるでしょうが・・・?
「京子が、夏樹さんと離婚してから、もう10年でしょ?」
「そうね・・・」
「そろそろ忘れてもいいんじゃないの?」
「何を・・・?」
おおお===っ!怖わっ!
でもさ~、今さら、夏樹さんがどこで何をしてようが、
誰かに、とやかく言われる筋合いじゃないと思うのよね。
それでなくても、京子は、夏樹さんの事が嫌いで離婚したわけだし。
これが、お互いが好きで好きで仕方がないのに、どうしても別れなきゃいけなかったっていうんならさ、10年過ぎようが20年過ぎようが、心のどこかに、いつもその人がいるっていうんならわかるわよ?
でも、京子の話を聞く限りでは、お互いが、お互いを罵り合って別れたって聞いてるしさ。
あっ・・・この件に関しては、夏樹さんは否定してたけど・・・。
夏樹さんの話では、京子の方が一方的に夏樹さんを罵っていたって言ってたし・・・。
たぶん、こっちが正解だと思う。
京子は、いったい、何をどうしたいって思ってるのかしら?
「直美・・・?そこを右よ・・・」
あひっ・・・。そこを右に曲がったら、夏樹さんの家の前に一歩近づいてしまうじゃないのよ。
「ねえ、直美・・・?」
「はい・・・?」
「なんか、さっきから、あの人の家の前の道路を走りたくないみたいに見えるんだけど?」
「そ・そんな事ないわよ!」
「ふ~ん・・・それじゃ、そこの十字路を右に曲がってくれる?」
今日の京子は、どうしても、夏樹さんの家の前を通りたいみたいだわ。
これって、やっぱり女の勘っていうやつなのかしら?
まあ、確かに京子がさっき勘付いた通り、雪子さんは、今、こっちに帰って来てるには来てるけど。
とはいえ、いくらなんでも、夏樹さんに会いに来てるとは、ちょっと思えないんだけどな~。
「でも、京子は、どうして、夏樹さんの家を知ってるの?」
「私が、あの人の家を知ってたら、何か悪いの?」
「私、思うんだけどね・・・」
「何・・・?」
「もう、10年も前の事なんだからさ、夏樹さんの事は忘れた方がいいんじゃないの?」
「なんか、そのいい言い方って、私が、あの人に、まだ未練があるみたいな言い方じゃない?」
言い方じゃない?ってか、いや~思いっきり!未練、あり!あり!なんですけど・・・。
直美が運転する車が、夏樹の家が見える距離になる直線道路に差し掛かったあたりから、
「どうぞ、誰も見えませんように」と、心の中で祈りながら、
夏樹の家の方に視線を移しながら車を走らせていく。
すると、直美の祈りが通じたのか、夏樹の家の庭にも、家に続く細い上り坂にも、
誰の姿も見えなかったので、京子に気付かれないように、
直美は心の中で、ホッと、ため息をついた・・・直後である。
「ほら!直美?私が言った通りでしょ?」
「へっ・・・?」
夏樹の家の周りに誰もいない事に安心していた直美が、
京子が指さす方に視線を移してみると、郵便局から出てきたらしく、
夏樹と雪子が仲良く腕を組みながら、こちらに向かって歩いてきていた。
げっ・・・うそぴょーん・・・どぼちて?どぼちてなの?どぼちて、そこにいるの。お二人さん?
「あれが、あの人の本性なのよ。まったく、どこまで、私を馬鹿にしたら気が済むのかしら?」
隣の席で呟く京子の後半の言葉が、だんだんと強くなっていく予感を感じ取った直美は、
思わず心の中で呟いた・・・。「私は、貝になりたい・・・」・・・あう。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる