愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
142 / 386
あなたが見えない

あなたが見えない・・・その2

しおりを挟む
「それじゃあ…ん?仕事が入った。開始は十分後だ。5分ごとに送りつける。準備しておけ!」

 リオンが自分勝手な言葉を残して転移した。

「……」

 皆、少ない情報の中での早い展開に呆然としていた。

(これは…)

 サイカはリオンが転移した後に何かの紙が落ちているのを見つけた。近づいて確認すると、それは指示がメモされた紙切れであった。

(『十分後』って、まさかコレやるってこと?)

「みんな、来てください!」

 サイカはすぐに人を集めた。

 メモのの内容は箇条書きで7つ書かれていた。

・5分ごとにモンスターを送る。旗を立ててある。

・送りつけるモンスターはお前らではやれない。罠に嵌めてアイテムで攻撃しろ

・家は安全

・周りは崖、落ちるな

・外付け倉庫に必要なものはだいたい入れてある

・トイレは玄関入って左に進め

・危なくなったら球を割れ

 の以上である。

「旗?」

 カイトが疑問に思って呟く。

「あそこだと思うよ」

 リュートが答える。そこには、きの棒に白い布を括り付けただけの見窄らしい旗があった。

「アレか…」

「私はこっちの方が気になるのだけどアイテム?この魔道具のことかしら?」

 サリアがリオンが残した武器を指して言った。

 「ん、多分そう、しかも、機械タイプのお高いヤツ」

 アヤメが答える。

「ちょっと!あなた達、そんなに集まったら他の人が見れなくなります!離れてください!」

 サイカはギュウギュウに詰めてメモを見るリュート達を引き剥がした。

「そう言われてもな~、見ながら試したいし…」

 カイトが名残惜しそうにメモを覗く。

「じゃあ、こうしよう!」

 そこで、リュートがある提案をした。

ーーーーーーーー

「はーい、注目!」

 『触媒魔法』で形成されたホワイトボード前でリュートが呼びかける。

「これから、メモの内容について話していこうと思います。リオンさんの話では十分後に訓練が始まるとのことです」

 リュートは『闇魔法』で作られたチョークでメモの内容はをボードに書き連ねた。

「まず一つ目、見ての通りだね、シンプルだ。旗はあそこにある。トウカ先生の助言通りにラウド先生をけしかけよう」

 説明を終えると文を射線で消した。

「二つ目、パワーレベリングです。今年は大変な年になりそうです」

 リュートが線を引こうとした時、リョウカ質問をした。

「えっと、どう言うことなのです?」

 申し訳なさそうに聞く。

「パワーレベリングの特徴は分かる?」

「それは分かるのです!」


 この世界でのパワーレベリングとは遥か格上の相手を実力関係なしに倒す行為である。大量のマナを一気に吸収するため大幅な成長を可能にする。
 しかし、一見やり得にも思えるパワーレベリングだが欠点がある。人が吸収できるマナの総量にはがあり、それは地道な訓練でしか増やすことが出来ない。

「そういう事だね」

「どう言う事です!?サイカっちは分かるのです?」

「…今は目の前のことを考えてください」

 サイカが目を逸らして答える。

「何なのです!?意味わからなくて怖いです!」

「フフ…知らない方が良いものとは結構ございますよ」

 ニナがリョウカの耳元で囁く。

「…ッ!いっそ教えるのです。覚悟できれば多少マシになるのです!」

(うぁー…)

 サイカはニナの黒い本性を垣間見た。

「三つ目はそのままの意味だと思う。いないと思うけど戦いたく無い人は中に避難すればいい」

(?いないと思う?私、訓練で命掛けたく無いのです。皆んな分かってるのです?)

 リョウカは一人理解できずに混乱する。

「アヤメーー!」

 リュートが家の前に立つアヤメに声をかけた。

「ふんっ!」

 アヤメが玄関の柱を殴る。

「この通り」

 リュートが前を向く。

(どの通りなのです!?意味がわからないのです!意味がわからなすぎて…意味がわからないのです!)

 リョウカの思考は混沌を極めた。

「四つ目、カリスに軽く調べてもらったところ、円形に出っぱった台地みたいになってる。安全装置みたいなの多分無いから」

 リュートが線を引く。

(あっ、これは理解できたのです!)

「五つ目、倉庫はあそこ。魔道具のコアはおそらくそこにある」

「有ったわよー!」

 サリアがコアを片手に手を振る。

(これも余裕なのです!)

 リョウカに活力が戻る。

「六つ目はいいとして七つ目、球は使ってないサリアたちの班のを使えってことだと思う。ここで一つ問題がある。」

 リュートが線を引き、真剣な表情で言う。

「何なのです?」

 リョウカが声に出して聞く。

「時間がない、40秒で支度しろ!」

 リュートが叫んだ。

(絶対終わらないのです!)

ーーーーーー
 クラスメイト全員が魔道具を装備して旗を囲んでいる。
 装備は多種多様であり大きく分けての近接、援護、遠距離の三種類がある。コアの構成は皆、機動と防御に特化させて攻撃を魔道具に頼る形となっている。
 旗から近い順に近接部隊、援護部隊、遠距離部隊に分かれた。近接、援護の部隊は適当に、遠距離部隊はピクシーが担当した。
 部隊の手前には申し訳程度の壁と家の前まで通じる塹壕が引かれている。

(ほ、本当に終わったのです。皆んな速いのです…)

 皆が息を呑み標的を待つ。

 5、4、3、2、1

 旗の真上に丸々と太った齧歯動物ラット系モンスターが現れた。

(来たっ!)

 リュート達はモンスターに一斉に襲い掛かる。

「え……」

 カイトは呆気ない結果に思わず声を漏らした。
 遠距離部隊の放った攻撃がモンスターの脳天を貫通したのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...