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傷つけたい
傷つけたい・・・その15
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どうして、そんな事を訊くのだろう?
京子は、意外な事を訊いてくる直美に疑いを持ち始めていた。
しかし、その事に気がつかない直美は、質問の内容を変えて、もう一度訊いてみた。
「京子から見て、夏樹さんは雪子さんのことをどう思ってると思うの?」
「どうって・・・やっぱり、あの人・・・。そうだったのね」
「ううん・・・京子が、今、思った事は間違ってるわよ」
「間違っている・・・?あの人は、雪子さんと付き合ってるんじゃないの?」
「ううん。雪子さんとは付き合っていないみたいよ」
「でも、あの時・・・」
「雪子さんと、すれ違った時のことでしょ?」
「ええ、そうよ・・・」
「でも、夏樹さんは雪子さんとは何でもないみたいよ」
「うそよ。だって、あの時、あの人と雪子さん。二人とも、仲良く腕組までして歩いてたのよ」
「ええ。その事なら、夏樹さんに聞かされたけど」
「でしょ?普通に考えて、何でもない男と女が、あんな風に腕を組んで歩いたりなんてしないんじゃないの?」
「でしょうね・・・」
「でしょうねって?いい、直美。あの人は、今は独身かもしれないけど、雪子さんは違うのよ?」
「そうはいっても、一応は、女同士が腕を組んで歩いただけだし・・・」
「ちょっと、直美・・・?」
「えっ・・・?私、何か、変な事を言った?」
「言ったわよ。いい、直美?いくら周りからは女同士に見えたとしても、あの人は男なのよ?分かる?」
「それは、そうだけど・・・。でも、夏樹さんは、もうすでに女みたいよ?」
「ちょっと、直美ってば?」
「はい・・・?」
「いったい、あの人と、どんな話をしてたの?」
「どんなって・・・」
「それじゃ、どうして、あの人が雪子さんのことをどう思ってる?なんて、私に、訊くの?」
う~ん・・・まずいぞな・・・。
この展開は、非常に、まずいんでないんかい・・・?
夏樹から聞かされた色々な事の中から、京子に話していい事と、話してはいけない事とを、
変に意識しながら会話をしようとするからなのだろうか?
それとも、今は、まだ、京子とは会いたくないと思いながら仕方なく会いに来たからなのだろうか?
直美は、変に勘繰られないように、それとなく気を使い使い話すぎこちない会話をしながらも、
自分がまだ知らない夏樹の事を知りたいと思う気持ちが、直美の心のどこかにあるのかもしれない。
本当なら、夏樹との会話の内容を、それなりに京子を傷つけない範囲で話すつもりだったはずが、
気がつくと、夏樹の事を、京子に訊いてしまう自分に少なからず驚いていた。
その頃、日が暮れ始めた頃、裕子は、街外れのカフェテラスにいた。
喫茶店のマスターと話をしたあと、真っ直ぐ家に帰る気になれなくて。
静かな場所で、さっきまでの会話を思い出しながら自分なりに整理してみていた。
堕ちるなら地獄まで・・・か・・・。
雪子って、そんな感じの愛し方をするような子だったかしら?
子供の頃から雪子と友達だった裕子は、今日までの長い年月、ずっと、雪子を見てきたのだから、
彼女の性格について誰よりも分かっているはずだった・・・。去年の暮れの、あの夜までは・・。
今までは、大人しくて、優しくて、もの静かな可愛い女の子・・・そう思っていた。
裕子は、もし、あの夜の雪子を見ていなかったら、マスターの言葉を信じる気にはなれなかったかもしれない。
堕ちていくなら地獄まで・・・なんて。
そんな愛し方など、雪子には出来るはずはないし、ありえるはずもない。
そうじゃなくても、もし雪子がそんな危険な愛し方が出来るような相手と巡り合える確立なんて、
普通に考えても、きっと、天文学的な確率でしかない・・・。
いや、それ以前に、あの大人しい文学少女の雪子には、そんな愛し方など初めから出来るはずもないし、
雪子が、そんな風に人を愛するような性格ではない・・・と。きっと、裕子はそう思っただろう。
あの夜、夏樹の腕の中で、子供みたいに無邪気な微笑みで甘えていた雪子を見るまでは・・・。
でも、今になって考えてみれば、思い当たる事がないとは言えないのよね。
あの雪子が、私に隠れて夏樹さんと付き合っていたこと。
しかも、それは、私が夏樹さんと別れる前だったこと。
それだけじゃないわ・・・。
会えば、かなり高い確率で夏樹さんとケンカをしていた雪子にも驚いたけど。
それより、何より、あれほど奥手だと思っていた雪子が、会えば毎日のように夏樹さんと愛し合っていたなんて、今でも、信じられないし。
雪子の中で止まっていた時間が動き出した事に、雪子は気がついてないかもしれないと、マスターは言っていたけど。
不思議よね、これからの雪子の事が、心配な事は、心配なんだけど。
それよりも・・・そんな雪子が少し羨ましいと思ってしまう気持ちも、私の中にはあるし。
とはいっても、その相手が夏樹さんなのは、私としては、それなりに複雑な心境なのも確かかも。
京子は、意外な事を訊いてくる直美に疑いを持ち始めていた。
しかし、その事に気がつかない直美は、質問の内容を変えて、もう一度訊いてみた。
「京子から見て、夏樹さんは雪子さんのことをどう思ってると思うの?」
「どうって・・・やっぱり、あの人・・・。そうだったのね」
「ううん・・・京子が、今、思った事は間違ってるわよ」
「間違っている・・・?あの人は、雪子さんと付き合ってるんじゃないの?」
「ううん。雪子さんとは付き合っていないみたいよ」
「でも、あの時・・・」
「雪子さんと、すれ違った時のことでしょ?」
「ええ、そうよ・・・」
「でも、夏樹さんは雪子さんとは何でもないみたいよ」
「うそよ。だって、あの時、あの人と雪子さん。二人とも、仲良く腕組までして歩いてたのよ」
「ええ。その事なら、夏樹さんに聞かされたけど」
「でしょ?普通に考えて、何でもない男と女が、あんな風に腕を組んで歩いたりなんてしないんじゃないの?」
「でしょうね・・・」
「でしょうねって?いい、直美。あの人は、今は独身かもしれないけど、雪子さんは違うのよ?」
「そうはいっても、一応は、女同士が腕を組んで歩いただけだし・・・」
「ちょっと、直美・・・?」
「えっ・・・?私、何か、変な事を言った?」
「言ったわよ。いい、直美?いくら周りからは女同士に見えたとしても、あの人は男なのよ?分かる?」
「それは、そうだけど・・・。でも、夏樹さんは、もうすでに女みたいよ?」
「ちょっと、直美ってば?」
「はい・・・?」
「いったい、あの人と、どんな話をしてたの?」
「どんなって・・・」
「それじゃ、どうして、あの人が雪子さんのことをどう思ってる?なんて、私に、訊くの?」
う~ん・・・まずいぞな・・・。
この展開は、非常に、まずいんでないんかい・・・?
夏樹から聞かされた色々な事の中から、京子に話していい事と、話してはいけない事とを、
変に意識しながら会話をしようとするからなのだろうか?
それとも、今は、まだ、京子とは会いたくないと思いながら仕方なく会いに来たからなのだろうか?
直美は、変に勘繰られないように、それとなく気を使い使い話すぎこちない会話をしながらも、
自分がまだ知らない夏樹の事を知りたいと思う気持ちが、直美の心のどこかにあるのかもしれない。
本当なら、夏樹との会話の内容を、それなりに京子を傷つけない範囲で話すつもりだったはずが、
気がつくと、夏樹の事を、京子に訊いてしまう自分に少なからず驚いていた。
その頃、日が暮れ始めた頃、裕子は、街外れのカフェテラスにいた。
喫茶店のマスターと話をしたあと、真っ直ぐ家に帰る気になれなくて。
静かな場所で、さっきまでの会話を思い出しながら自分なりに整理してみていた。
堕ちるなら地獄まで・・・か・・・。
雪子って、そんな感じの愛し方をするような子だったかしら?
子供の頃から雪子と友達だった裕子は、今日までの長い年月、ずっと、雪子を見てきたのだから、
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今までは、大人しくて、優しくて、もの静かな可愛い女の子・・・そう思っていた。
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そんな愛し方など、雪子には出来るはずはないし、ありえるはずもない。
そうじゃなくても、もし雪子がそんな危険な愛し方が出来るような相手と巡り合える確立なんて、
普通に考えても、きっと、天文学的な確率でしかない・・・。
いや、それ以前に、あの大人しい文学少女の雪子には、そんな愛し方など初めから出来るはずもないし、
雪子が、そんな風に人を愛するような性格ではない・・・と。きっと、裕子はそう思っただろう。
あの夜、夏樹の腕の中で、子供みたいに無邪気な微笑みで甘えていた雪子を見るまでは・・・。
でも、今になって考えてみれば、思い当たる事がないとは言えないのよね。
あの雪子が、私に隠れて夏樹さんと付き合っていたこと。
しかも、それは、私が夏樹さんと別れる前だったこと。
それだけじゃないわ・・・。
会えば、かなり高い確率で夏樹さんとケンカをしていた雪子にも驚いたけど。
それより、何より、あれほど奥手だと思っていた雪子が、会えば毎日のように夏樹さんと愛し合っていたなんて、今でも、信じられないし。
雪子の中で止まっていた時間が動き出した事に、雪子は気がついてないかもしれないと、マスターは言っていたけど。
不思議よね、これからの雪子の事が、心配な事は、心配なんだけど。
それよりも・・・そんな雪子が少し羨ましいと思ってしまう気持ちも、私の中にはあるし。
とはいっても、その相手が夏樹さんなのは、私としては、それなりに複雑な心境なのも確かかも。
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