愛して欲しいと言えたなら

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傷つけたい

傷つけたい・・・その13

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その頃、直美は、早くも後悔の渦の中にいた。
最初に夏樹と会ってから、もう半月も過ぎているわけだし、このまま、何のかんのと言い訳まがしい断り方をしていても仕方がないので、とりあえず、京子に会いに来てみたのだが・・・。

でも、ちょっと見ないうちに、京子の顔つきが変わったんじゃないかしら?
前は、もっと、おっとりしてたっていうか、優しい顔つきだったような感じだったと思ったけど・・・

「今日は、子供たちはお仕事?」

「仕事っていっても、バイトよ!バイト!」

「バイト・・・?」

「だって仕方がないじゃない?どっちも高校中退してるんだから」

「そうだっけ・・・?」

「そうよ。だから、どこかに就職っていっても、そんなとこなんてあるわけないじゃない?」

「でも、探せばどこか見るかるんじゃない?それに、この先もずっとバイトっていうわけにもいかないんじゃないの?」

「父親がもっとしっかりしてたら、少しはましな大人にでもなってたんだろうけど」

「でも、それと子供たちの事とは違うんじゃないの?」

「同じよ。父親が適当だから、子供たちまで適当な人間になってしまうのよ」

父親・・・夏樹さんって事なんだろうけど・・・。
京子って、いつから、都合が悪くなると何でもかんでも夏樹さんのせいにするようになったのかしら?

そうじゃなくても、京子だって、一応は子供たちの母親なんだから、
父親がどうとかこうとかって話じゃないと思うんだけどな~。
私だって女手一つで娘を育ててきたけど、娘の悪いところを父親のせいにした事なんてないし。

「そういえば、子供たちの小さい時の教育とかって、京子がしてたんじゃないの?」

「な~に?私の教育が悪かったって言いたいの?」

あ~、また、始まった・・・。
な~んか、夏樹さんと離婚してからの京子って、何か言うとすぐに突っかかるような言い方をするようになったわよね。
何かっていうよりも、ちょっとでも自分が悪く言われそうな言葉に対してって言った方が正解ね。

「別に、そういうわけじゃないけど。何でも夏樹さんが悪いっていうのは、ちょっと、どうかと・・・」

「どうして直美が、あの人をかばうの?」

あっ・・・しまった・・・。これは言ってはいけない、お約束条項だったわ。

「別にかばってるわけじゃないけど、一応は、私も離婚した口だし」

「何、言ってるのよ。直美だって、別れた元旦那の悪口をさんざん言ってたじゃないのよ」

「そうだったっけ・・・」

「そうよ。あんな人だったとは思わなかったとかって色々悪口を言ってたわよ」

「でも、それと夏樹さんとは違うと思うわよ・・・」

「直美、あの人に何を言われたの?」

ハチャー・・・またまた、まずってしもうた・・・。

「何って・・・別に・・・」

「あの人の事だから、私の悪口でも言ってたんでしょ?」

「別に、京子の悪口とかって、何も言ってなかったわよ」

な~んか、会話が成り立ってないような気がするけど・・・。
かといって、夏樹さんの気持ちをって思っても、私が何か言えばすぐに突っかかってくるし。
これじゃ、会話が成り立たないんじゃないんかい・・・?

あっ・・・やっぱ!私、どこかキャラが変わってるし・・・。
それでなくても、私としても、なんか分からなくなってきてるし・・・。
今日のところは、もう、帰った方がいいかもしれないわね。
とりあえずは、京子にも会ったわけだし・・・。

「今日は、そろそろ帰るわ・・・」

「帰るって。もう、帰るの?」

「えっ・・・?」

「だって、まだ、来たばかりじゃない?」

「でも、ちょっと買い物とかして帰らないといけないから」

「やっぱり、あの人に何か言われたのね?」

「言われたも言われないも、何かっていえば、すぐに突っかかってくるんじゃ何も話せないでしょ?」

「別に、突っかかってなんてないでしょ?」

「京子は、自分では気がついていないだけだと思うわよ。夏樹さんじゃないけどさ、京子がそんなんじゃ、そのうち、子供たちにも嫌われちゃうと思うわよ」

あっ・・・言っちゃった・・・。
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