131 / 386
傷つけたい
傷つけたい・・・その11
しおりを挟む
確かに、そうかもしれない。
夏樹さんなら、雪子の事を一番に考えても不思議じゃないかもしれない。
でも、ちょっと待ってよ?それじゃ、雪子のあの言葉はどういう意味になるのかしら?
確か、雪子は、夏樹さんは自分が一番可愛い人なんだとかって言ってたんじゃなかったかしら?
「あの・・・マスター?」
「はい。なんでしょうか?」
「前に、雪子が、夏樹さんは自分が一番可愛いんだよ!って、言ってた事があったんですけど」
「その事でしたら、私も、雪子様の言う通りだと思います」
「えっ・・・?だって、いま・・・」
「そう言えば、少し、矛盾しているかもしれませんね」
「ええ・・・。少しというより、正反対のような気がします」
「確かに、そうかもしれませんね・・・。裕子様は、夏樹様という方が、もし、自分の好きな人にプレゼントをするとしたら何を選ぶと思いますか?」
「夏樹さんが何を選ぶ・・・ですか?」
「ええ・・・。夏樹様という方は、一番に何を考えるタイプの方だと思います?」
「夏樹さんの事だから、プレゼントをする相手が望む品かな?・・・う~ん、違うわね」
「ええ・・・私も、それは違うと思います。おそらく、夏樹様という方は、プレゼントで相手の気を惹くような事を考える人ではないと思います」
「私も、そう思います・・・。でも、それじゃ、いったい・・・」
「私の考えですが、夏樹様という方は、プレゼントをする相手が望む品や喜んでもらえるような品ではないと思います。きっと、贈られた相手の方が困らない品・・・。では、ないでしょうか?」
「困らない品・・・ですか?」
「雪子様が以前こんな事を言っていました。夏樹様という方が雪子様にこの指輪をプレゼントした時に、雪子様は頂いていいのか分からなくて、ある知り合いの女性に聞いたそうです」
「知り合いの女性・・・?」
「はい・・・。その女性は、夏樹様という方と、とても親しい方だと言っていました」
「誰かしら・・・?」
「裕子様は、ご存知ないのですか?」
「ええ・・・。雪子って、夏樹さんに関係のある事は何にも教えてくれないんですよ」
「そうですか・・・。確か、夏樹様とお付き合いをしている頃に、何度か、その女性と会っていたみたいで、何度か会っているうちに、雪子様も、その女性の方と親しくなったらしく、色々と相談などもしていたようです」
「そうなんですか・・・。雪子ったら、私には、何も言ってくれないから」
「きっと、雪子様にとって、夏樹様という方と過ごす時間は、子供が親から離れて友達との時間を過ごすような感じだったのかもしれませんね」
「親から離れて・・・」
「親に与えられた自由ではなくて、自分が見つけた、自分だけの時間であり、自分だけの新しい世界なのだと思います」
「それなら、何となく、私にも分かります」
「雪子様は、自分が良い子でいる事で周りの大人に心配をかけたくない。そんな風に自分に言い聞かせて生きている中で夏樹様と知り合って、やっと、本当の自分のままの、ありのままの自分でいられる世界を見つけたのかもしれません」
「でも・・・それじゃ、どうして、雪子は夏樹さんと別れたんでしょうか?」
「若さゆえ・・・。それもありますが、おそらく、その頃の雪子様は、自分の思いも、自分の感情も、自分の願いさえも、ほんの少ししか理解が出来なかったから、だから、自分の想いを夏樹様に伝えたくても、伝えることさえ出来なかった・・・。まるで、自分の夢を叶えたくて出場したはずのオーディションで、結局、何も出来なかった・・・。そんな感じかと思います」
「それで、雪子はあんなに・・・」
「雪子様が、何か・・・?」
「ええ・・・。夏樹さんと別れた事を私に伝えに来た時に、初めて、私の前で泣いたんですけど。その時の泣き方が尋常じゃなかったんです・・・。両方の目から大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちていく、あんな泣き方なんて・・・。私は、人があんな風に泣くところを見たのって、あの時の雪子が最初で最後でした」
「雪子様は、きっと、悔しかったんでしょうね・・・。こんなはずではなかった。まだ、何にも伝えてもいないのに・・・。でも、きっと、それは、夏樹様も同じだったのでないでしょうか?」
「夏樹さんも・・・?」
「夏樹様が雪子様にこの指輪を選んだのは、この先、雪子様が何かに困った時にすぐにお金に換えられるようにと・・・。雪子様は、その知り合いの女性から、そう聞かされたそうです」
「ふふっ・・・変わった理由ですね。でも、そんな風に考えるのって確かに夏樹さんらしいです」
夏樹さんなら、雪子の事を一番に考えても不思議じゃないかもしれない。
でも、ちょっと待ってよ?それじゃ、雪子のあの言葉はどういう意味になるのかしら?
確か、雪子は、夏樹さんは自分が一番可愛い人なんだとかって言ってたんじゃなかったかしら?
「あの・・・マスター?」
「はい。なんでしょうか?」
「前に、雪子が、夏樹さんは自分が一番可愛いんだよ!って、言ってた事があったんですけど」
「その事でしたら、私も、雪子様の言う通りだと思います」
「えっ・・・?だって、いま・・・」
「そう言えば、少し、矛盾しているかもしれませんね」
「ええ・・・。少しというより、正反対のような気がします」
「確かに、そうかもしれませんね・・・。裕子様は、夏樹様という方が、もし、自分の好きな人にプレゼントをするとしたら何を選ぶと思いますか?」
「夏樹さんが何を選ぶ・・・ですか?」
「ええ・・・。夏樹様という方は、一番に何を考えるタイプの方だと思います?」
「夏樹さんの事だから、プレゼントをする相手が望む品かな?・・・う~ん、違うわね」
「ええ・・・私も、それは違うと思います。おそらく、夏樹様という方は、プレゼントで相手の気を惹くような事を考える人ではないと思います」
「私も、そう思います・・・。でも、それじゃ、いったい・・・」
「私の考えですが、夏樹様という方は、プレゼントをする相手が望む品や喜んでもらえるような品ではないと思います。きっと、贈られた相手の方が困らない品・・・。では、ないでしょうか?」
「困らない品・・・ですか?」
「雪子様が以前こんな事を言っていました。夏樹様という方が雪子様にこの指輪をプレゼントした時に、雪子様は頂いていいのか分からなくて、ある知り合いの女性に聞いたそうです」
「知り合いの女性・・・?」
「はい・・・。その女性は、夏樹様という方と、とても親しい方だと言っていました」
「誰かしら・・・?」
「裕子様は、ご存知ないのですか?」
「ええ・・・。雪子って、夏樹さんに関係のある事は何にも教えてくれないんですよ」
「そうですか・・・。確か、夏樹様とお付き合いをしている頃に、何度か、その女性と会っていたみたいで、何度か会っているうちに、雪子様も、その女性の方と親しくなったらしく、色々と相談などもしていたようです」
「そうなんですか・・・。雪子ったら、私には、何も言ってくれないから」
「きっと、雪子様にとって、夏樹様という方と過ごす時間は、子供が親から離れて友達との時間を過ごすような感じだったのかもしれませんね」
「親から離れて・・・」
「親に与えられた自由ではなくて、自分が見つけた、自分だけの時間であり、自分だけの新しい世界なのだと思います」
「それなら、何となく、私にも分かります」
「雪子様は、自分が良い子でいる事で周りの大人に心配をかけたくない。そんな風に自分に言い聞かせて生きている中で夏樹様と知り合って、やっと、本当の自分のままの、ありのままの自分でいられる世界を見つけたのかもしれません」
「でも・・・それじゃ、どうして、雪子は夏樹さんと別れたんでしょうか?」
「若さゆえ・・・。それもありますが、おそらく、その頃の雪子様は、自分の思いも、自分の感情も、自分の願いさえも、ほんの少ししか理解が出来なかったから、だから、自分の想いを夏樹様に伝えたくても、伝えることさえ出来なかった・・・。まるで、自分の夢を叶えたくて出場したはずのオーディションで、結局、何も出来なかった・・・。そんな感じかと思います」
「それで、雪子はあんなに・・・」
「雪子様が、何か・・・?」
「ええ・・・。夏樹さんと別れた事を私に伝えに来た時に、初めて、私の前で泣いたんですけど。その時の泣き方が尋常じゃなかったんです・・・。両方の目から大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちていく、あんな泣き方なんて・・・。私は、人があんな風に泣くところを見たのって、あの時の雪子が最初で最後でした」
「雪子様は、きっと、悔しかったんでしょうね・・・。こんなはずではなかった。まだ、何にも伝えてもいないのに・・・。でも、きっと、それは、夏樹様も同じだったのでないでしょうか?」
「夏樹さんも・・・?」
「夏樹様が雪子様にこの指輪を選んだのは、この先、雪子様が何かに困った時にすぐにお金に換えられるようにと・・・。雪子様は、その知り合いの女性から、そう聞かされたそうです」
「ふふっ・・・変わった理由ですね。でも、そんな風に考えるのって確かに夏樹さんらしいです」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。
音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。
格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。
正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。
だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。
「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる