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傷つけたい
傷つけたい・・・その10
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夏樹さんにとって、雪子は、今でも、とても大切な存在・・・。やっぱり、そうなっちゃうのね。
確かに今、マスターが言ったように、私も、そう思うんだけど・・・。
でも、正直言って、私には分からないのよね。
今まで、ずっと、雪子は、夏樹さんと付き合っていた頃を話そうとはしなかったし。
夏樹さんも、雪子と同じように話そうとはしなかったから。
大切な存在って言われても、正直、分からないのよ。
ただ、私に分かるのは、夏樹さんと別れた時に、私の前で涙を流した雪子の姿と。
34年ぶりに再会した、あの夜の無邪気な雪子の姿だけ・・・。あとは分からないわ。
それでも、夏樹さんにとって、雪子がとても大切で特別な存在なのだという事は、
二人が別れた34年前から、何となく、私にも分かっていたけど。
だから、一度は別れた夏樹さんと雪子だけど、
きっと、二人はもう一度付き合う事になるんだろうな?って、そんな風に思っていたし。
だから、夏樹さんが、違う女の人と結婚するって知った時は、思わず耳を疑ったくらいだったし。
ただ・・・それでも、昔から気になっていた事もあるわ。
確かに、夏樹さんの結婚した理由も気にはなっていたけど。
それよりも、それまで、誰にどんなに誘われても、
その誰とも、ただの知り合い以上の関係にはなろうとしなかった雪子が、
夏樹さんが結婚した事を知ったとたんに、今の旦那と付き合い始めたのよね。
夏樹さんと別れてからの雪子は、誰かと付き合うとかっていう事に対しては、
まるっきり興味なんて示さなかったのに、どうして急に今の旦那と付き合うようになったのか?
というより、どうして、急に付き合う事を決めたのか?
まあ、確かに、雪子の今の旦那は、前から、雪子に気があったらしくて、
何かにつけて雪子と話をしようとしたり、食事やドライブやと色々誘っていたみたいだったけど、それでも、雪子は、一度も、そんな誘いには乗った事なんてなかったはずなのに・・・どうして?
雪子が、今の旦那と付き合う事を決めたのは、
もしかして、夏樹さんの隣の席には、もう、自分の席はないのだとあきらめたから?
夏樹さんにしても・・・雪子にしても・・・。
「あの・・・マスター?」
「はい・・・」
「やっぱり、夏樹さんは、この先も、ずっと、雪子を受け入れる事はないのでしょうか?」
「夏樹様という方は、きっと、雪子様を不幸にはしたくないのだと思います」
「雪子が不幸に・・・?だから、夏樹さんは雪子を受け入れないとマスターは思うのですか?」
「はい・・・。私には、そんな風に思えます」
「でも、それは、どうしてなんですか?好き合っている二人が一緒になると、どうして不幸になるのですか?」
「さあ・・・私は、夏樹様という方を知りませんから、確かな事は答えられませんが・・・ただ・」
「ただ・・・確かではなくてもいいので、マスターの思った事を教えて下さい」
「もし、私が夏樹様だったとしたらと考えてみたのですが、やはり、私も、夏樹様という方と同じ選択をしてしまうと思うんです」
「それは、マスターも、夏樹さんと同じように雪子を受け入れないという事ですか?」
「ええ・・・そうです」
「それは、どうしてなんですか?」
「その答えも、やはり、夏樹様という方と私も同じ答えになると思います」
「それは・・・?」
「雪子様に、誰かを、傷つけて欲しくないんです」
「誰かを?というのは、雪子の旦那さんや子供たちの事ですか?」
「ええ・・・そういう事になりますね」
「でも、それって、雪子が不幸になる事になりませんか?」
「ええ・・・なりますね・・・」
「それじゃ、どうして・・・?」
「それは、今のままの雪子様なら、それは同時に今のままの傷つきになります。でも、もし雪子様が今の旦那さんと離婚すれば、それは、旦那さんだけではなく、雪子様の子供たちも傷つけてしまう事になります。雪子様が、今の旦那さんと、まだ結婚前で付き合っている恋人だったのならよかったのでしょうが」
「それは分かりますけど・・・でも・・・」
「恋人同士が別れるのと、夫婦のどちらかが家庭を捨てるのとでは、傷つく度合いがあまりにも違い過ぎます」
「でも・・・」
「それでも、今の状態のままなら、雪子様が離婚をして家庭を捨てなくても、もはや、今の雪子様は、夏樹様という方と別れる事にはならないのではないでしょうか?」
「それで、メル友・・・。だから、夏樹さんは今のままの雪子を拒まなかった・・・」
「はい・・・。夏樹様が、私の思っている通りの人でしたら、きっと、雪子様には、こう伝えたと思います」
マスターは、右の指に挟んでいたスプーンをコーヒーカップのお皿の上に戻すと言葉を続けた。
「これからは、いつでも、雪子様のそばにいるから心配しなくても大丈夫だよ・・・と・・・」
確かに今、マスターが言ったように、私も、そう思うんだけど・・・。
でも、正直言って、私には分からないのよね。
今まで、ずっと、雪子は、夏樹さんと付き合っていた頃を話そうとはしなかったし。
夏樹さんも、雪子と同じように話そうとはしなかったから。
大切な存在って言われても、正直、分からないのよ。
ただ、私に分かるのは、夏樹さんと別れた時に、私の前で涙を流した雪子の姿と。
34年ぶりに再会した、あの夜の無邪気な雪子の姿だけ・・・。あとは分からないわ。
それでも、夏樹さんにとって、雪子がとても大切で特別な存在なのだという事は、
二人が別れた34年前から、何となく、私にも分かっていたけど。
だから、一度は別れた夏樹さんと雪子だけど、
きっと、二人はもう一度付き合う事になるんだろうな?って、そんな風に思っていたし。
だから、夏樹さんが、違う女の人と結婚するって知った時は、思わず耳を疑ったくらいだったし。
ただ・・・それでも、昔から気になっていた事もあるわ。
確かに、夏樹さんの結婚した理由も気にはなっていたけど。
それよりも、それまで、誰にどんなに誘われても、
その誰とも、ただの知り合い以上の関係にはなろうとしなかった雪子が、
夏樹さんが結婚した事を知ったとたんに、今の旦那と付き合い始めたのよね。
夏樹さんと別れてからの雪子は、誰かと付き合うとかっていう事に対しては、
まるっきり興味なんて示さなかったのに、どうして急に今の旦那と付き合うようになったのか?
というより、どうして、急に付き合う事を決めたのか?
まあ、確かに、雪子の今の旦那は、前から、雪子に気があったらしくて、
何かにつけて雪子と話をしようとしたり、食事やドライブやと色々誘っていたみたいだったけど、それでも、雪子は、一度も、そんな誘いには乗った事なんてなかったはずなのに・・・どうして?
雪子が、今の旦那と付き合う事を決めたのは、
もしかして、夏樹さんの隣の席には、もう、自分の席はないのだとあきらめたから?
夏樹さんにしても・・・雪子にしても・・・。
「あの・・・マスター?」
「はい・・・」
「やっぱり、夏樹さんは、この先も、ずっと、雪子を受け入れる事はないのでしょうか?」
「夏樹様という方は、きっと、雪子様を不幸にはしたくないのだと思います」
「雪子が不幸に・・・?だから、夏樹さんは雪子を受け入れないとマスターは思うのですか?」
「はい・・・。私には、そんな風に思えます」
「でも、それは、どうしてなんですか?好き合っている二人が一緒になると、どうして不幸になるのですか?」
「さあ・・・私は、夏樹様という方を知りませんから、確かな事は答えられませんが・・・ただ・」
「ただ・・・確かではなくてもいいので、マスターの思った事を教えて下さい」
「もし、私が夏樹様だったとしたらと考えてみたのですが、やはり、私も、夏樹様という方と同じ選択をしてしまうと思うんです」
「それは、マスターも、夏樹さんと同じように雪子を受け入れないという事ですか?」
「ええ・・・そうです」
「それは、どうしてなんですか?」
「その答えも、やはり、夏樹様という方と私も同じ答えになると思います」
「それは・・・?」
「雪子様に、誰かを、傷つけて欲しくないんです」
「誰かを?というのは、雪子の旦那さんや子供たちの事ですか?」
「ええ・・・そういう事になりますね」
「でも、それって、雪子が不幸になる事になりませんか?」
「ええ・・・なりますね・・・」
「それじゃ、どうして・・・?」
「それは、今のままの雪子様なら、それは同時に今のままの傷つきになります。でも、もし雪子様が今の旦那さんと離婚すれば、それは、旦那さんだけではなく、雪子様の子供たちも傷つけてしまう事になります。雪子様が、今の旦那さんと、まだ結婚前で付き合っている恋人だったのならよかったのでしょうが」
「それは分かりますけど・・・でも・・・」
「恋人同士が別れるのと、夫婦のどちらかが家庭を捨てるのとでは、傷つく度合いがあまりにも違い過ぎます」
「でも・・・」
「それでも、今の状態のままなら、雪子様が離婚をして家庭を捨てなくても、もはや、今の雪子様は、夏樹様という方と別れる事にはならないのではないでしょうか?」
「それで、メル友・・・。だから、夏樹さんは今のままの雪子を拒まなかった・・・」
「はい・・・。夏樹様が、私の思っている通りの人でしたら、きっと、雪子様には、こう伝えたと思います」
マスターは、右の指に挟んでいたスプーンをコーヒーカップのお皿の上に戻すと言葉を続けた。
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