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傷つけたい
傷つけたい・・・その5
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頑張ったね・・・と、言って欲しかった・・・。
「あたしって、身勝手な女でしょ?」
いえ・・・あの・・・そこは、身勝手な男・・・ではないでしょうか?
夏樹の言葉の使い方に少し可笑しくなってしまった直美が、思わず笑みを浮かべてしまった。
「あら?あたし、何か、可笑しな事を言ったかしら?」
「あっ・・・ごめんなさい・・・。だって、女って言うから・・・」
「あはは!あんた、変なとこに気がつくのね」
「いや~・・・まあ~なんていうか」
「雪子はね、あたしがどんなに真面目な話をしていてもね、そんな真面目な話の内容なんて眼中にないの」
「眼中にない・・・ですか?」
「んで、話が退屈になってくると、いきなり、飛んでくるのよ・・・。ビンタがバチンって」
「いきなり・・・ですか?でも、どうしてなんですか?」
「さあね・・・。そんなの、あたしにも分かんないわ・・・。それに比べると、京子は根が真面目なのよ」
「雪子さんは違うんですか?」
「雪子はね、根が真面目なんじゃなくて、う~ん、なんて表現したらいいかしら?そうね、もしかしたら、根が真剣なのかもしれないわね」
「根が真剣・・・?変わった表現ですね」
「う~ん・・・ようは、生きる事に真面目というのと、生きる事に真剣という違いかもしれないわね」
「私には、どっちも同じような気がしますけど・・・。どこが違うんですか?」
「んなの、あたしにも分かんないわよ」
夏樹はケラケラ笑いながら、ウサギが着ている可愛いワンピースの裾を直している。
「あの・・・京子とやり直そうとは考えなかったんですか?」
「やり直すって、もう一回、一緒に暮らすって事?」
「いえ、そうじゃなくて、京子と離婚する前に、もう一度、二人でやり直そうとは考えなかったのかなって?」
「京子は、何度もやり直そうと努力をしてたわ」
「夏樹さんは・・・?」
「もういい・・・。そんな言葉しか頭の中には浮かんでこなかったわ」
「どうしてですか・・・?」
「どうして・・・?」
「だって、せっかく、京子がもう一度やり直そうと思っていたのに。それに、京子がもう一度やり直そうとしていた気持ちを、夏樹さんも分かっていたわけでしょ?」
「あたしが、そんな京子を見ていた時に、何を考えていたと思う?」
「何をって言われても・・・。もしかして、誰か他にいたんですか?」
「あはは!な~に、あんたまで京子みたいな事を考えてるのよ」
「京子も、そう思っていたんですか?」
「思っていたみたいよ。あたしに、誰か他に女がいるんじゃないかってね」
「夏樹さん・・・いたんですか?」
「あんたは、どう思う・・・?」
「どう思うって言われても・・・それは・・・あの・・・」
「あはは!・・・他に女なんていなかったわよ」
「やっぱり・・・」
「やっぱりって、どうして、そう思ったの?」
「いえ・・・ただ、夏樹さんには、他の女の人がいて欲しくないって思ったので」
「ふふっ・・・嬉しい事を言ってくれるのね?」
「いえ・・そんな・・・」
「その時のあたしはね、もう一度、あたしとやり直そうとしている京子を見ながら、こう思ってたの・・・。何のために?って」
「何のためにって・・それは、やっぱり・・・」
「あたしは、京子の玩具じゃないのよ?」
「えっ・・・?」・・・玩具じゃない・・・。その言葉に、直美はドキッとした。
それは、その言葉の名前と、その言葉を話す夏樹の男としての軽蔑めいた声にである。
一瞬、硬直したような直美に、面白そうな視線で覗き込みながら夏樹がおどけて見せる。
「あたしって、嫌な女でしょ?」
いえ・・・あの・・・そこは・・・。
確かに、話の内容は、男としての夏樹の事を、夏樹本人が言っているのは分かるのだが。
いかんせん、直美の目の前にいる夏樹は、どう見ても女性にしか見えないのである。
なので、夏樹が「嫌な女でしょ?」と言うと、思わず突っ込みたくなってしまうのだが。
それを我慢しようとすると、どうしても、クスッと笑いがこぼれてしまう直美なのである。
「あんた、悲しみを拒絶しないんでしょ?」
「えっ・・・?」
「悲しみってね、悲しいって言える人と、悲しいって言えない人とがいるの・・・」
「・・・」
「でも・・・あんたは、その悲しみを抱きしめてしまうのね・・・」
「・・・」
「そんな、あんたの想いなんて誰も気にもかけてくれないのにね」
「・・・」
あまりに突然に訪れた夏樹の言葉に、直美は、全ての言葉を見失ってしまいそうになった。
「あたしって、身勝手な女でしょ?」
いえ・・・あの・・・そこは、身勝手な男・・・ではないでしょうか?
夏樹の言葉の使い方に少し可笑しくなってしまった直美が、思わず笑みを浮かべてしまった。
「あら?あたし、何か、可笑しな事を言ったかしら?」
「あっ・・・ごめんなさい・・・。だって、女って言うから・・・」
「あはは!あんた、変なとこに気がつくのね」
「いや~・・・まあ~なんていうか」
「雪子はね、あたしがどんなに真面目な話をしていてもね、そんな真面目な話の内容なんて眼中にないの」
「眼中にない・・・ですか?」
「んで、話が退屈になってくると、いきなり、飛んでくるのよ・・・。ビンタがバチンって」
「いきなり・・・ですか?でも、どうしてなんですか?」
「さあね・・・。そんなの、あたしにも分かんないわ・・・。それに比べると、京子は根が真面目なのよ」
「雪子さんは違うんですか?」
「雪子はね、根が真面目なんじゃなくて、う~ん、なんて表現したらいいかしら?そうね、もしかしたら、根が真剣なのかもしれないわね」
「根が真剣・・・?変わった表現ですね」
「う~ん・・・ようは、生きる事に真面目というのと、生きる事に真剣という違いかもしれないわね」
「私には、どっちも同じような気がしますけど・・・。どこが違うんですか?」
「んなの、あたしにも分かんないわよ」
夏樹はケラケラ笑いながら、ウサギが着ている可愛いワンピースの裾を直している。
「あの・・・京子とやり直そうとは考えなかったんですか?」
「やり直すって、もう一回、一緒に暮らすって事?」
「いえ、そうじゃなくて、京子と離婚する前に、もう一度、二人でやり直そうとは考えなかったのかなって?」
「京子は、何度もやり直そうと努力をしてたわ」
「夏樹さんは・・・?」
「もういい・・・。そんな言葉しか頭の中には浮かんでこなかったわ」
「どうしてですか・・・?」
「どうして・・・?」
「だって、せっかく、京子がもう一度やり直そうと思っていたのに。それに、京子がもう一度やり直そうとしていた気持ちを、夏樹さんも分かっていたわけでしょ?」
「あたしが、そんな京子を見ていた時に、何を考えていたと思う?」
「何をって言われても・・・。もしかして、誰か他にいたんですか?」
「あはは!な~に、あんたまで京子みたいな事を考えてるのよ」
「京子も、そう思っていたんですか?」
「思っていたみたいよ。あたしに、誰か他に女がいるんじゃないかってね」
「夏樹さん・・・いたんですか?」
「あんたは、どう思う・・・?」
「どう思うって言われても・・・それは・・・あの・・・」
「あはは!・・・他に女なんていなかったわよ」
「やっぱり・・・」
「やっぱりって、どうして、そう思ったの?」
「いえ・・・ただ、夏樹さんには、他の女の人がいて欲しくないって思ったので」
「ふふっ・・・嬉しい事を言ってくれるのね?」
「いえ・・そんな・・・」
「その時のあたしはね、もう一度、あたしとやり直そうとしている京子を見ながら、こう思ってたの・・・。何のために?って」
「何のためにって・・それは、やっぱり・・・」
「あたしは、京子の玩具じゃないのよ?」
「えっ・・・?」・・・玩具じゃない・・・。その言葉に、直美はドキッとした。
それは、その言葉の名前と、その言葉を話す夏樹の男としての軽蔑めいた声にである。
一瞬、硬直したような直美に、面白そうな視線で覗き込みながら夏樹がおどけて見せる。
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いえ・・・あの・・・そこは・・・。
確かに、話の内容は、男としての夏樹の事を、夏樹本人が言っているのは分かるのだが。
いかんせん、直美の目の前にいる夏樹は、どう見ても女性にしか見えないのである。
なので、夏樹が「嫌な女でしょ?」と言うと、思わず突っ込みたくなってしまうのだが。
それを我慢しようとすると、どうしても、クスッと笑いがこぼれてしまう直美なのである。
「あんた、悲しみを拒絶しないんでしょ?」
「えっ・・・?」
「悲しみってね、悲しいって言える人と、悲しいって言えない人とがいるの・・・」
「・・・」
「でも・・・あんたは、その悲しみを抱きしめてしまうのね・・・」
「・・・」
「そんな、あんたの想いなんて誰も気にもかけてくれないのにね」
「・・・」
あまりに突然に訪れた夏樹の言葉に、直美は、全ての言葉を見失ってしまいそうになった。
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