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傷つけたい
傷つけたい・・・その2
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「あっ、ふーちゃんだ!」
スマホの通話ボタンを押すと、雪子の、いきなりハイテンションの声が聞こえてきた。
「あたし以外に、誰が、この電話に出るのよ?」
「ねぇ~、ふーちゃん」
「ん・・・な~に?」
「なんかね、今夜ね、ふーちゃんにモシモシカメさんが出来なくなっちゃいそうなのだ」
「どうしたの?お父さんの具合が悪いの?」
「あはっ!やっぱり、ふーちゃんだ!」
「で、どうしたのよ?」
「ふーちゃん、もしかして?ピンク?」
「あんたは、無事に病院まで、たどり着けたの?」
「うちのお父さんは2~3日で退院出来そうだよ!」
「そう、よかったわね」
「ふーちゃんも、お見舞いに来てみる?」
「いやよ・・・。何、言ってるのよ。や~ね~もう!」
「きゃはは!ふーちゃん、女になってるんだ!」
あ~ダメだわ・・・。今も、昔も、こやつの会話にはついていけそうにないわ。
「で、あんた、今、何処にいるの?」
「病院だよ・・・。あっ・・・また、かけるね!バイバイなのだ!」
そう言うと、雪子は一方的に電話を切ってしまった。
あい・・・?今のは、いったい、何だったの?
「と・・・。まあ~、こんな感じなのよ。雪子って」
雪子との会話の内容までは分からないまでも、
夏樹の言葉に、只々あっけにとられている直美だった。
「あら?どうしたの?」
「いえ・・・あの・・・なんていうか・・・」
「驚いたでしょ?」
「ええ・・・。会話の内容は分かりませんけど。でも、夏樹さんの言葉から、ある程度は想像出来ましたから」
「雪子って、昔からこうなのよ」
「私は、ずっと大人しい人だとばかり思ってたので、ちょっと驚きました」
「でもね、あんたの言う、大人しい人っていうのは、まんざら間違いじゃないのよ」
「えっ・・・?そうなんですか?」
「ええ、そうよ・・・。この子ってね、あたしの前でだけ無邪気な自分を見せるのよ」
「夏樹さんの前でだけ・・・ですか?」
「そうなの。だから、あんたが思ってた、大人しい人って印象は間違っていないのよ」
「でも、どうして、夏樹さんの前でだけなんですか?」
「さあね・・・。そんなの、あたしにも分かんないわよ」
「はあ・・・」
「でさ、あんたさ、京子に、こんな雪子の印象をどういう風に伝える?」
「どういう風にって・・・あっ・・・」
「分かるでしょ?雪子のこんな一面、無邪気に振る舞う雪子を伝える事なんて出来ないのよね」
「私も、そう思いました」
「で・・・それは、誰のため?」
それは誰のため・・・?少し変わった?夏樹の問いかけに直美は少し戸惑った。
「それは雪子の無邪気な一面を聞かされる京子のため?それとも、雪子の持つ無邪気な一面をそっとしておきたいと思うから?」
それは、雪子さんのため・・・。
直美は、夏樹の問いかけに戸惑ったのは、答えが見つからないからではなかった。
問いかけの答えが見つからないのではなく、その答えがすぐに分かったからだった。
そして、その答えが、何を意味しているのかが分かってしまったからである。
これが夏樹さんなんだ・・・。
夏樹と会話をしていると、直美は、時々、そう思ってしまう言葉がある。
そして、今の、夏樹の言葉もそうである・・・。
夏樹の言葉を素直に解釈をすれば、それは、雪子のため・・・。
でも、それは同時に、それを聞かされたら京子はどう思うだろう?
雪子の無邪気な一面を隠す事は、それは、そのまま京子への配慮にもなっていくのだから。
それでも、夏樹さんは雪子さんのためだと言う・・・。
きっと、夏樹さんにとって、雪子さんという一人の女性が、可愛くて可愛くて仕方がないのかもしれない。
でも・・・それじゃ、京子はどうなるの?
どうして、夏樹さんは京子と結婚したの?
夏樹さんにとって、京子の存在っていった何なの?
それじゃ、京子の夏樹さんに対しての想いはどうなるの?
これじゃ、まるで、京子一人だけが道化師みたいじゃない・・・。こんなのって・・・。
そう思い始めた直美のほんの少しの表情の変化を見透かしたように、夏樹が言葉を口にする。
「どう?少しは、あたしの事が嫌いになったかしら?」
スマホの通話ボタンを押すと、雪子の、いきなりハイテンションの声が聞こえてきた。
「あたし以外に、誰が、この電話に出るのよ?」
「ねぇ~、ふーちゃん」
「ん・・・な~に?」
「なんかね、今夜ね、ふーちゃんにモシモシカメさんが出来なくなっちゃいそうなのだ」
「どうしたの?お父さんの具合が悪いの?」
「あはっ!やっぱり、ふーちゃんだ!」
「で、どうしたのよ?」
「ふーちゃん、もしかして?ピンク?」
「あんたは、無事に病院まで、たどり着けたの?」
「うちのお父さんは2~3日で退院出来そうだよ!」
「そう、よかったわね」
「ふーちゃんも、お見舞いに来てみる?」
「いやよ・・・。何、言ってるのよ。や~ね~もう!」
「きゃはは!ふーちゃん、女になってるんだ!」
あ~ダメだわ・・・。今も、昔も、こやつの会話にはついていけそうにないわ。
「で、あんた、今、何処にいるの?」
「病院だよ・・・。あっ・・・また、かけるね!バイバイなのだ!」
そう言うと、雪子は一方的に電話を切ってしまった。
あい・・・?今のは、いったい、何だったの?
「と・・・。まあ~、こんな感じなのよ。雪子って」
雪子との会話の内容までは分からないまでも、
夏樹の言葉に、只々あっけにとられている直美だった。
「あら?どうしたの?」
「いえ・・・あの・・・なんていうか・・・」
「驚いたでしょ?」
「ええ・・・。会話の内容は分かりませんけど。でも、夏樹さんの言葉から、ある程度は想像出来ましたから」
「雪子って、昔からこうなのよ」
「私は、ずっと大人しい人だとばかり思ってたので、ちょっと驚きました」
「でもね、あんたの言う、大人しい人っていうのは、まんざら間違いじゃないのよ」
「えっ・・・?そうなんですか?」
「ええ、そうよ・・・。この子ってね、あたしの前でだけ無邪気な自分を見せるのよ」
「夏樹さんの前でだけ・・・ですか?」
「そうなの。だから、あんたが思ってた、大人しい人って印象は間違っていないのよ」
「でも、どうして、夏樹さんの前でだけなんですか?」
「さあね・・・。そんなの、あたしにも分かんないわよ」
「はあ・・・」
「でさ、あんたさ、京子に、こんな雪子の印象をどういう風に伝える?」
「どういう風にって・・・あっ・・・」
「分かるでしょ?雪子のこんな一面、無邪気に振る舞う雪子を伝える事なんて出来ないのよね」
「私も、そう思いました」
「で・・・それは、誰のため?」
それは誰のため・・・?少し変わった?夏樹の問いかけに直美は少し戸惑った。
「それは雪子の無邪気な一面を聞かされる京子のため?それとも、雪子の持つ無邪気な一面をそっとしておきたいと思うから?」
それは、雪子さんのため・・・。
直美は、夏樹の問いかけに戸惑ったのは、答えが見つからないからではなかった。
問いかけの答えが見つからないのではなく、その答えがすぐに分かったからだった。
そして、その答えが、何を意味しているのかが分かってしまったからである。
これが夏樹さんなんだ・・・。
夏樹と会話をしていると、直美は、時々、そう思ってしまう言葉がある。
そして、今の、夏樹の言葉もそうである・・・。
夏樹の言葉を素直に解釈をすれば、それは、雪子のため・・・。
でも、それは同時に、それを聞かされたら京子はどう思うだろう?
雪子の無邪気な一面を隠す事は、それは、そのまま京子への配慮にもなっていくのだから。
それでも、夏樹さんは雪子さんのためだと言う・・・。
きっと、夏樹さんにとって、雪子さんという一人の女性が、可愛くて可愛くて仕方がないのかもしれない。
でも・・・それじゃ、京子はどうなるの?
どうして、夏樹さんは京子と結婚したの?
夏樹さんにとって、京子の存在っていった何なの?
それじゃ、京子の夏樹さんに対しての想いはどうなるの?
これじゃ、まるで、京子一人だけが道化師みたいじゃない・・・。こんなのって・・・。
そう思い始めた直美のほんの少しの表情の変化を見透かしたように、夏樹が言葉を口にする。
「どう?少しは、あたしの事が嫌いになったかしら?」
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