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記憶の欠片
記憶の欠片・・・その19
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「愛して欲しいって言えたなら・・・」・・・雪子が、そんな言葉を・・・。
あの子ったら、夏樹さんと別れてから、もう30年以上過ぎてるっていうのに、
あの日から、何一つ、変わってなかったのね。そんな気はしてたけど・・・。
ってか・・・いったい、どうしたら、そういう表現が出来るのかしら?
「マスター、あの子は、この指輪の事を・・・?」
「詳しくは知りませんが、雪子様にとっては、1番大切な宝物なのだと申しておりました」
1番大切な宝物・・・。
でも、雪子が、この指輪を手にした時には、夏樹さんとは、もう終わっていたはずなのに・・・。
「この指輪ってね、夏樹さんが雪子にプレゼントした指輪なんですよ」
「やはり、そうでしたか・・・。何となく、そんな気がしておりました」
「でも・・・二人が、別れた後に・・・。なんです」
「きっと、雪子様は、自分の想いを、この指輪の中に閉じ込めていたのかもしれませんね」
磁石のように魅かれあいながらも、磁石のように弾かれてしまう二人・・・。
だから、夏樹さんも、雪子も、お互い二人とも傷つけあう愛から逃げて、平凡な愛を手に入れようとしたのだろうか?
そして、さっきマスターが言っていた「自分のためにだけ存在する愛」を、二人とも持っていたから。
二人とも自分たちの家族の中で、何かを偽りながらでも、生きる事が出来たというのだろうか?
もし、そうなのだとしたら、偽りの日々の中で、こんなにも長い間、自分の心を閉ざす事が出来たのは、二人とも「自分のためだけに存在する愛」の中に、もう一人の自分を隠してきたから?
それとも、もう一人の自分が、同時進行で、その中で生きていたという事なの?
でも、それじゃ、夏樹さんの家族も、そして、雪子の家族も、ずっと、二人に騙されていたという事になるんじゃない?
違うわね・・・。自分を偽っていたわけじゃなくて、もう一人の自分がいただけなのだから。
う~ん。なんか、ややこしいわね・・・。私の頭では理解するのが難しいかも。
雪子の旦那さんて、真面目でギャンブルなどは一切しない家族思いの優しい旦那さんなのにね。
「そういえば、さっき、マスターは、私だったら幸せになっているって言いましたけど」
「はい、確かにそう申し上げました」
「どうして、いたではなくて、いる・・・なんですか?」
「どうしてと、いいますのは?」
「ええ、実は、夏樹さんは10年くらい前に離婚しているんです。なのに、私の場合は過去形ではないですよね?」
「はい・・・」
「という事は、もし、私が夏樹さんと結婚していたら、まだ、離婚していないという事になるわけですよね?」
「はい・・・。確かに・・・」
「それじゃ、マスターは、どうして、私の場合は離婚していないと思ったんですか?」
「私がそう思ったのは、裕子様は愛されたいではなくて、愛したいの方を選ぶと思ったからです」
「愛されたいではなくて、愛したい・・・。私が・・・ですか?」
「ええ・・・違いましたかな?」
「そう言われても、自分では、よく分からないですけど・・・」
「裕子様は、誰かを愛している自分が好きな女性かと思いましたけど」
誰かを愛している自分が好き・・・?
う~ん・・・言われてみれば、確かに、そんな気がするようなしないような・・・。
でも、考えてみれば、そうだったかも?
確かに、私の場合って「どうして愛してはいけないの?」だったような気がする。
夏樹さんに愛されたいって思っていなかったのかもしれないし。
どっちかっていうと、夏樹さんを愛していられるのは私が愛されているから・・・だっかかも?
「あの・・・それって、見方を変えると、少しストーカーが入っているような気がするんですけど?」
「はは・・・でも、裕子様は、その方に何かを求めたりとかしますか?」
「う~ん・・・。たぶん、何も求めないと思いますけど」
「少し大げさかもしれませんが、それは、無償の愛に似ていますよね?」
「無償の愛だなんて・・・そんな・・・」
「求めていないのに、いつも、そこには愛がある。その方が、そんな日々を必要とするのだとしたら」
「マスターは、夏樹さんが、そういうタイプの男性だと思うのですか?」
「雪子様は、その夏樹様という方の性格を知っているし、裕子様の性格も知ってる。それを知っている雪子様は、裕子様が夏樹様という方と一緒になっていたなら、裕子様は幸せになっていたかもしれない。雪子様が、そう思うのは自然の流れかと思うのです。だからなのかもしれませんが、雪子様は、自分のとった行為が、裕子様から幸せを奪ってしまったのかもしれないと・・・。そんな風に思ってしまったのかもしれません」
「だから、雪子は、私に相談したくても話せなかった・・・。ホント、困った子ですね。雪子って」
あの子ったら、夏樹さんと別れてから、もう30年以上過ぎてるっていうのに、
あの日から、何一つ、変わってなかったのね。そんな気はしてたけど・・・。
ってか・・・いったい、どうしたら、そういう表現が出来るのかしら?
「マスター、あの子は、この指輪の事を・・・?」
「詳しくは知りませんが、雪子様にとっては、1番大切な宝物なのだと申しておりました」
1番大切な宝物・・・。
でも、雪子が、この指輪を手にした時には、夏樹さんとは、もう終わっていたはずなのに・・・。
「この指輪ってね、夏樹さんが雪子にプレゼントした指輪なんですよ」
「やはり、そうでしたか・・・。何となく、そんな気がしておりました」
「でも・・・二人が、別れた後に・・・。なんです」
「きっと、雪子様は、自分の想いを、この指輪の中に閉じ込めていたのかもしれませんね」
磁石のように魅かれあいながらも、磁石のように弾かれてしまう二人・・・。
だから、夏樹さんも、雪子も、お互い二人とも傷つけあう愛から逃げて、平凡な愛を手に入れようとしたのだろうか?
そして、さっきマスターが言っていた「自分のためにだけ存在する愛」を、二人とも持っていたから。
二人とも自分たちの家族の中で、何かを偽りながらでも、生きる事が出来たというのだろうか?
もし、そうなのだとしたら、偽りの日々の中で、こんなにも長い間、自分の心を閉ざす事が出来たのは、二人とも「自分のためだけに存在する愛」の中に、もう一人の自分を隠してきたから?
それとも、もう一人の自分が、同時進行で、その中で生きていたという事なの?
でも、それじゃ、夏樹さんの家族も、そして、雪子の家族も、ずっと、二人に騙されていたという事になるんじゃない?
違うわね・・・。自分を偽っていたわけじゃなくて、もう一人の自分がいただけなのだから。
う~ん。なんか、ややこしいわね・・・。私の頭では理解するのが難しいかも。
雪子の旦那さんて、真面目でギャンブルなどは一切しない家族思いの優しい旦那さんなのにね。
「そういえば、さっき、マスターは、私だったら幸せになっているって言いましたけど」
「はい、確かにそう申し上げました」
「どうして、いたではなくて、いる・・・なんですか?」
「どうしてと、いいますのは?」
「ええ、実は、夏樹さんは10年くらい前に離婚しているんです。なのに、私の場合は過去形ではないですよね?」
「はい・・・」
「という事は、もし、私が夏樹さんと結婚していたら、まだ、離婚していないという事になるわけですよね?」
「はい・・・。確かに・・・」
「それじゃ、マスターは、どうして、私の場合は離婚していないと思ったんですか?」
「私がそう思ったのは、裕子様は愛されたいではなくて、愛したいの方を選ぶと思ったからです」
「愛されたいではなくて、愛したい・・・。私が・・・ですか?」
「ええ・・・違いましたかな?」
「そう言われても、自分では、よく分からないですけど・・・」
「裕子様は、誰かを愛している自分が好きな女性かと思いましたけど」
誰かを愛している自分が好き・・・?
う~ん・・・言われてみれば、確かに、そんな気がするようなしないような・・・。
でも、考えてみれば、そうだったかも?
確かに、私の場合って「どうして愛してはいけないの?」だったような気がする。
夏樹さんに愛されたいって思っていなかったのかもしれないし。
どっちかっていうと、夏樹さんを愛していられるのは私が愛されているから・・・だっかかも?
「あの・・・それって、見方を変えると、少しストーカーが入っているような気がするんですけど?」
「はは・・・でも、裕子様は、その方に何かを求めたりとかしますか?」
「う~ん・・・。たぶん、何も求めないと思いますけど」
「少し大げさかもしれませんが、それは、無償の愛に似ていますよね?」
「無償の愛だなんて・・・そんな・・・」
「求めていないのに、いつも、そこには愛がある。その方が、そんな日々を必要とするのだとしたら」
「マスターは、夏樹さんが、そういうタイプの男性だと思うのですか?」
「雪子様は、その夏樹様という方の性格を知っているし、裕子様の性格も知ってる。それを知っている雪子様は、裕子様が夏樹様という方と一緒になっていたなら、裕子様は幸せになっていたかもしれない。雪子様が、そう思うのは自然の流れかと思うのです。だからなのかもしれませんが、雪子様は、自分のとった行為が、裕子様から幸せを奪ってしまったのかもしれないと・・・。そんな風に思ってしまったのかもしれません」
「だから、雪子は、私に相談したくても話せなかった・・・。ホント、困った子ですね。雪子って」
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