116 / 386
記憶の欠片
記憶の欠片・・・その16
しおりを挟む
直美は、夏樹と話をしているうちに、一つ訊いてみたいと思う事があった。
それは雪子の事である。夏樹から聞かされる雪子は、直美が思っていた感じとは、
どこかが少し違うような気がするのである。
今まで直美が思っていた雪子は、物静かで頭が良くて誰にでも優しい女性であり、
どちらかというと文学少女というイメージだと思っていた。
ところが、夏樹から聞かされる雪子は、そんなイメージとは全然違っている。
どちらかというと、面白くて、可愛くて、自分勝手で、かと思えば、時々、暴力的で、
そんでもって、少し小悪魔が入っているような、そんな感じなのである。
「あの・・・一つ訊いてもいいでしょうか?」
「ん・・・?雪子の性格でも訊きたいの?」
んんん・・・なんで分かっちゃうかな?
「どうして、私が、訊こうとした事が分かったんですか?」
「なに・・・?それを訊きたいの?」
あ~んもう~・・・。あんたの頭の中はホントに風船なんかい?
「いえ・・・そうじゃないんですけど・・・。でも、どうして、今、私が訊こうとした事が分かったのかなって?」
「ああ・・・それ?そんなのただの偶然に決まってるでしょ?」
いえ・・・あの・・・とてもじゃないけど、偶然とは思えないんですけど・・・。
「で・・・?雪子が、どうかしたの?」
「どうかしたとかではなくて、何となく、私が思っていた雪子さんとは、少し違うような気がしたもので」
「きっと、違わないわよ。あんたが思っていた雪子のイメージは間違ってないと思うわよ」
思うわよって、言われても・・・。
「あの・・・」
「な~に・・・?」
「率直に言って、雪子さんと京子とは、どこが、どう違うんですか?」
「あんた今さ、どうして、雪子の名前を最初に言ったの?」
「えっ・・・?別に、意味はないと思うんですけど・・・」
「意味はない・・・無意識に言ったのね?・・・それじゃ、少しは、京子の気持ちが分かったんじゃないかしら?」
「えっ・・・?あの・・・それは、どういう意味なんですか?」
「無意識の中で順位をつける時は、自分の居場所を探せる時。でも、順位を意識しちゃうと、そこにはもう自分の居場所がないと自分で自覚した時なの・・・。あっ・・・また、ビンタが飛んでくるわ」
「ふふ・・・私はビンタなんてしませんよ・・・。でも、自分の居場所って?」
「無意識なら焼きもちで済むけど、それを意識してしまうと、焼きもちじゃなくて憎悪に変わるのよ・・・。分かる?」
「焼きもちから憎悪・・・ですか?」
「あ~ダメ・・・。どこからか雪子のビンタが飛んでくるような気がしてしまうわ」
どこからかビンタが飛んでくる・・・。そして、ケラケラ笑う・・・それが、雪子さん・・・。
う~ん・・・どう考えても、私のイメージしている雪子さんとは全然違うような気がするんですけど。
「やっぱり、私のイメージの雪子さんとは、少し違うような気がします」
「あはは・・・。まあ、ゆっくり考えてみるといいわ」
「はあ・・・あの・・・」
「ん・・・?」
「それで・・・あの・・・近いうちに、雪子さんと会う予定とかあるんですか?」
「近いうちに・・・?あんた、さっきから変な事を訊くわね?」
「えっ・・・?いえ・・・あの・・・別に、深い意味とかがあるわけでは・・・」
「まあ、いいわ・・・。雪子と会う予定ね~。どうかしら?その答えは、正直、あたしにも分からないわ」
夏樹さんが、雪子さんと近いうちに会う可能性を否定しなかった。
もし今、雪子さんが、ここの街に来ている事を知らなければ、
夏樹さんの事だから、会う予定なんてないわよ・・・と、即答で答えると思う。
でも、夏樹さんは、言葉を濁すような答え方をした・・・。
という事は、あの時の雪子さんの電話の相手は、やっぱり夏樹さんだったんだわ。
「でもね、あたしは雪子とは付き合っていないし、この先も付き合うつもりはないわよ」
「どうして、そう言い切れるんですか?」
「あんた、やけにそこに絡んでくるわね?」
「えっ・・・いえ・・・」
「まあ、いいわ。それはね、あたしと深く関わった人は、みんな不幸になってしまうからなの・・・。だから、この先も、雪子とは深く関わりたくないのよ」
「えっ・・・?」
「それは、京子も同じ。もうこれ以上、誰も不幸にしたくないから、出来れば、もう関わりたくないのよね」
夏樹さんと関わると不幸になる・・・?
思いがけない夏樹の言葉のはずなのに、直美は、不思議と驚きも違和感も感じなかった。
ただ・・・これが夏樹という人間なのだと、素直に受け入れる事が出来ない自分に違和感を感じていた。
それは雪子の事である。夏樹から聞かされる雪子は、直美が思っていた感じとは、
どこかが少し違うような気がするのである。
今まで直美が思っていた雪子は、物静かで頭が良くて誰にでも優しい女性であり、
どちらかというと文学少女というイメージだと思っていた。
ところが、夏樹から聞かされる雪子は、そんなイメージとは全然違っている。
どちらかというと、面白くて、可愛くて、自分勝手で、かと思えば、時々、暴力的で、
そんでもって、少し小悪魔が入っているような、そんな感じなのである。
「あの・・・一つ訊いてもいいでしょうか?」
「ん・・・?雪子の性格でも訊きたいの?」
んんん・・・なんで分かっちゃうかな?
「どうして、私が、訊こうとした事が分かったんですか?」
「なに・・・?それを訊きたいの?」
あ~んもう~・・・。あんたの頭の中はホントに風船なんかい?
「いえ・・・そうじゃないんですけど・・・。でも、どうして、今、私が訊こうとした事が分かったのかなって?」
「ああ・・・それ?そんなのただの偶然に決まってるでしょ?」
いえ・・・あの・・・とてもじゃないけど、偶然とは思えないんですけど・・・。
「で・・・?雪子が、どうかしたの?」
「どうかしたとかではなくて、何となく、私が思っていた雪子さんとは、少し違うような気がしたもので」
「きっと、違わないわよ。あんたが思っていた雪子のイメージは間違ってないと思うわよ」
思うわよって、言われても・・・。
「あの・・・」
「な~に・・・?」
「率直に言って、雪子さんと京子とは、どこが、どう違うんですか?」
「あんた今さ、どうして、雪子の名前を最初に言ったの?」
「えっ・・・?別に、意味はないと思うんですけど・・・」
「意味はない・・・無意識に言ったのね?・・・それじゃ、少しは、京子の気持ちが分かったんじゃないかしら?」
「えっ・・・?あの・・・それは、どういう意味なんですか?」
「無意識の中で順位をつける時は、自分の居場所を探せる時。でも、順位を意識しちゃうと、そこにはもう自分の居場所がないと自分で自覚した時なの・・・。あっ・・・また、ビンタが飛んでくるわ」
「ふふ・・・私はビンタなんてしませんよ・・・。でも、自分の居場所って?」
「無意識なら焼きもちで済むけど、それを意識してしまうと、焼きもちじゃなくて憎悪に変わるのよ・・・。分かる?」
「焼きもちから憎悪・・・ですか?」
「あ~ダメ・・・。どこからか雪子のビンタが飛んでくるような気がしてしまうわ」
どこからかビンタが飛んでくる・・・。そして、ケラケラ笑う・・・それが、雪子さん・・・。
う~ん・・・どう考えても、私のイメージしている雪子さんとは全然違うような気がするんですけど。
「やっぱり、私のイメージの雪子さんとは、少し違うような気がします」
「あはは・・・。まあ、ゆっくり考えてみるといいわ」
「はあ・・・あの・・・」
「ん・・・?」
「それで・・・あの・・・近いうちに、雪子さんと会う予定とかあるんですか?」
「近いうちに・・・?あんた、さっきから変な事を訊くわね?」
「えっ・・・?いえ・・・あの・・・別に、深い意味とかがあるわけでは・・・」
「まあ、いいわ・・・。雪子と会う予定ね~。どうかしら?その答えは、正直、あたしにも分からないわ」
夏樹さんが、雪子さんと近いうちに会う可能性を否定しなかった。
もし今、雪子さんが、ここの街に来ている事を知らなければ、
夏樹さんの事だから、会う予定なんてないわよ・・・と、即答で答えると思う。
でも、夏樹さんは、言葉を濁すような答え方をした・・・。
という事は、あの時の雪子さんの電話の相手は、やっぱり夏樹さんだったんだわ。
「でもね、あたしは雪子とは付き合っていないし、この先も付き合うつもりはないわよ」
「どうして、そう言い切れるんですか?」
「あんた、やけにそこに絡んでくるわね?」
「えっ・・・いえ・・・」
「まあ、いいわ。それはね、あたしと深く関わった人は、みんな不幸になってしまうからなの・・・。だから、この先も、雪子とは深く関わりたくないのよ」
「えっ・・・?」
「それは、京子も同じ。もうこれ以上、誰も不幸にしたくないから、出来れば、もう関わりたくないのよね」
夏樹さんと関わると不幸になる・・・?
思いがけない夏樹の言葉のはずなのに、直美は、不思議と驚きも違和感も感じなかった。
ただ・・・これが夏樹という人間なのだと、素直に受け入れる事が出来ない自分に違和感を感じていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる