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記憶の欠片
記憶の欠片・・・その15
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しかし・・・と、言うべきか・・・ホントに・・・と、言うべきか・・・。
今、私の目の前にいる、この女性もどきの男性が、10年前まで京子の旦那さんだったなんて、
とてもじゃないけど、今のこの状況からは想像出来ないんだわ。
京子の元旦那さんの見え隠れする太ももを、まさか、私が見る事になるなんて誰が想像したかしら?
「でもね~、あたしが、いまみたいに言うとね、速攻でビンタが飛んできたのよね」
「ビンタ・・・?もしかして、雪子さんですか?」
「そうよ。雪子は決まってこう言うのよ。何、訳の分かんない屁理屈こねてるのよ・・・で、バチン!」
「いきなり飛んでくるんですか?」
「そうよ・・・。んで、ビックリお目目のあたしを見ながらケラケラ笑うの・・・あんた信じられる?」
「信じられるって訊かれても・・・何とも・・・」
夏樹はテーブルの上に座っている・・・というか・・・。
テーブルの上で、グラスにさしてあるストローを手に持っているような仕草をしているクマのぬいぐるみを手にすると、自分の膝の上に乗せながら、クマのぬいぐるみの脇の下?に手を入れて器用に抱っこする夏樹が、そのクマのぬいぐるみに話かけるように静かに言葉を口にした。
「あたしね、死んだら、このクマのぬいぐるみの中に入るのよ」
「えっ・・・?」
「だから、今から、この子には言って聞かせているの。あたしが死んだら、あんたの中に入るんだからねって」
直美は、夏樹の言葉が、とても50歳を過ぎた男性の言葉とは思えなかった・・・。
もとい!女性もどき・・・で、ある。
そんな夏樹の何気ない言葉に、少し不安そうな表情をする直美に笑いながら話す夏樹。
「あんた、あたしの頭がおかしくなったんじゃないかしら?な~んて思ったんでしょ?」
「えっ・・・いえ・・・あの・・・」
「あはは!別にいいわよ・・・。あたしは、もともと頭の中が風船みたいなもんだからね」
「風船みたい・・・?あっ・・・それで、ふーちゃんなんですか?」
「あら?あんた、どうして、そのあだ名を知ってるの?」
「えっ・・・?あの・・・それは・・・」
「でも、もしかしたら、そうかもしれないわね・・・。あたしも、どうして、雪子が、あたしのことをふーちゃんって呼び始めたのか、分かんなかったのよね」
えっ・・・?あだ名の件はスルーしちゃうんですか?
「そうそう、あんたの知りたい事ね。あたしは、雪子とは何でもないわよ」
はい・・・?いきなり、本題の答を言っちゃうんですか?
「京子が騒いでたんでしょ?あたしが雪子と付き合ってるんじゃないか?とかってさ」
「いえ・・・別に、そんなわけでは・・・」
「いいわよ、別に隠さなくても・・・。今になって騒ぐくらいなら、どうして、あの時、あたしを捨てたのよってことよね?あんた、そう思わない?」
「えっ・・・?」
「何かって言えば、事ある事にギャーギャー騒いでさ。余計なお世話だっちゅ===の」
「いえ・・・あの・・・そういうわけでは・・・」
「挙句の果てには、あんたにまで、恨み節のお裾分けまでしちゃって。少しは、人の迷惑を考えなさいっていうのよね」
いやあ・・・あの・・・お裾分けまで言わなくても・・・まあ、当たってるけど。
「あたしは別に成人君主でも何でもないわよ・・・。良い人を気取るつもりもないし」
「はあ・・・」
「でもね・・・どうして届かないのかしら・・・あたしの言葉って・・・。あっ、あたしが言わないからだったわ」
「ふふっ・・・」・・・直美は、夏樹の最後の言葉が妙に可笑しかった。
「でもさ・・・どうして、人の心の想いって届かないのかしらね?」
「えっ・・・?」
「いつも、届いて欲しいと思う人には届かないのよね・・・。ほんの少しの欠片でもいいから届いてくれたならって、いつも、思うんだけどね」
「私もそう思います・・・。でも、難しいですよね・・・」
「京子はね・・・あの子は、この先も、ずっと、あたしの事を恨み続けながら生きていくの」
「えっ・・・?」
「京子は、あたしを恨む事でしか、自分が生きていく方法が見つけられないのよ・・・」
「可哀そうな子」・・・最後に寂しくつぶやいた夏樹の言葉が、直美を現実の世界へと引き戻してしまうのである。
今、私の目の前にいる、この女性もどきの男性が、10年前まで京子の旦那さんだったなんて、
とてもじゃないけど、今のこの状況からは想像出来ないんだわ。
京子の元旦那さんの見え隠れする太ももを、まさか、私が見る事になるなんて誰が想像したかしら?
「でもね~、あたしが、いまみたいに言うとね、速攻でビンタが飛んできたのよね」
「ビンタ・・・?もしかして、雪子さんですか?」
「そうよ。雪子は決まってこう言うのよ。何、訳の分かんない屁理屈こねてるのよ・・・で、バチン!」
「いきなり飛んでくるんですか?」
「そうよ・・・。んで、ビックリお目目のあたしを見ながらケラケラ笑うの・・・あんた信じられる?」
「信じられるって訊かれても・・・何とも・・・」
夏樹はテーブルの上に座っている・・・というか・・・。
テーブルの上で、グラスにさしてあるストローを手に持っているような仕草をしているクマのぬいぐるみを手にすると、自分の膝の上に乗せながら、クマのぬいぐるみの脇の下?に手を入れて器用に抱っこする夏樹が、そのクマのぬいぐるみに話かけるように静かに言葉を口にした。
「あたしね、死んだら、このクマのぬいぐるみの中に入るのよ」
「えっ・・・?」
「だから、今から、この子には言って聞かせているの。あたしが死んだら、あんたの中に入るんだからねって」
直美は、夏樹の言葉が、とても50歳を過ぎた男性の言葉とは思えなかった・・・。
もとい!女性もどき・・・で、ある。
そんな夏樹の何気ない言葉に、少し不安そうな表情をする直美に笑いながら話す夏樹。
「あんた、あたしの頭がおかしくなったんじゃないかしら?な~んて思ったんでしょ?」
「えっ・・・いえ・・・あの・・・」
「あはは!別にいいわよ・・・。あたしは、もともと頭の中が風船みたいなもんだからね」
「風船みたい・・・?あっ・・・それで、ふーちゃんなんですか?」
「あら?あんた、どうして、そのあだ名を知ってるの?」
「えっ・・・?あの・・・それは・・・」
「でも、もしかしたら、そうかもしれないわね・・・。あたしも、どうして、雪子が、あたしのことをふーちゃんって呼び始めたのか、分かんなかったのよね」
えっ・・・?あだ名の件はスルーしちゃうんですか?
「そうそう、あんたの知りたい事ね。あたしは、雪子とは何でもないわよ」
はい・・・?いきなり、本題の答を言っちゃうんですか?
「京子が騒いでたんでしょ?あたしが雪子と付き合ってるんじゃないか?とかってさ」
「いえ・・・別に、そんなわけでは・・・」
「いいわよ、別に隠さなくても・・・。今になって騒ぐくらいなら、どうして、あの時、あたしを捨てたのよってことよね?あんた、そう思わない?」
「えっ・・・?」
「何かって言えば、事ある事にギャーギャー騒いでさ。余計なお世話だっちゅ===の」
「いえ・・・あの・・・そういうわけでは・・・」
「挙句の果てには、あんたにまで、恨み節のお裾分けまでしちゃって。少しは、人の迷惑を考えなさいっていうのよね」
いやあ・・・あの・・・お裾分けまで言わなくても・・・まあ、当たってるけど。
「あたしは別に成人君主でも何でもないわよ・・・。良い人を気取るつもりもないし」
「はあ・・・」
「でもね・・・どうして届かないのかしら・・・あたしの言葉って・・・。あっ、あたしが言わないからだったわ」
「ふふっ・・・」・・・直美は、夏樹の最後の言葉が妙に可笑しかった。
「でもさ・・・どうして、人の心の想いって届かないのかしらね?」
「えっ・・・?」
「いつも、届いて欲しいと思う人には届かないのよね・・・。ほんの少しの欠片でもいいから届いてくれたならって、いつも、思うんだけどね」
「私もそう思います・・・。でも、難しいですよね・・・」
「京子はね・・・あの子は、この先も、ずっと、あたしの事を恨み続けながら生きていくの」
「えっ・・・?」
「京子は、あたしを恨む事でしか、自分が生きていく方法が見つけられないのよ・・・」
「可哀そうな子」・・・最後に寂しくつぶやいた夏樹の言葉が、直美を現実の世界へと引き戻してしまうのである。
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