114 / 386
記憶の欠片
記憶の欠片・・・その14
しおりを挟む
でも、夏樹さんが言うと、知らない人だったら、きっと、信じちゃうんじゃないかしら?
う~ん・・・その前に・・・夏樹さん歳はいくつになったんでしたっけ?
なにせ、今日は、膝丈のスカート・・・しかも、フレアだし。
黒に白でくり抜いたような大きなバラの模様の裾から見える生足・・・。
とても、50代の男性の脚とは思えないわ。
それに、フレアなんだから、少しでも風が吹いたりしたら、生足どころか生太ももまで見えちゃうんじゃないの?
空の色が抜けたような薄いセーターに編み上げの長いカーディガン・・・
とても、こんな田舎に分類される街では皆無なファッション・・・って。
いったい、どこで売ってるのかしら?
「あんた、あたしの脚でも見に来たの?」
「えっ・・・?」
そよ風に、時々、ふわりと遊ぶ隙間から見える太ももに、なぜか目を奪われていた直美は、少し恥ずかしくなった。
「で・・・どうしたの?」
夏樹さんって、いつも、こんな感じに話すのかしら?
何の前置きもないっていうか、いきなり入ってくる言葉が、
もう、何十分も前から話をしている中で交わす会話みたいに。
まるで、スライスした列の真ん中から会話を再会してる感じが不思議。
「ええ・・・実は、ちょっと訊きたい事っていうか、確かめておきたいっていうか・・・あの・・・」
「な~に・・・?雪子のこと?」
えええ===っ?なんで分かるの・・・?
「で・・・雪子の、何を知りたいの?」
いや~その~・・・ってか、いきなりですか?
その前に・・・雪子って、呼び捨てしてるし・・・。
しかも、何となく、馴れ馴れしい感じでの呼び捨て感あるし。
「でも・・・あの・・・どうして分かったんですか?」
「京子が、あたしと雪子の仲を疑ってるんでしょ?」
「疑っているっていえば、そのような感じで。じゃないと言えば、違うような・・・」
「あはは!あんた、面白い日本語を使うのね?」
「はは・・・はう・・・」
「人ってさ、お金で仲が悪くなったり、誰かを恨んだり、後悔したりするけど、基本は違うのよね?」
出た・・・夏樹さんの、なんだか分からないのに自信に満ちてる、妙な言い回し言葉。
「基本が違うっていうのは?」
「男と女では、根本的な原因が違うのよ」
「どういう事なんですか?」
「うんとね、男は愛を守ろうとするけど、女は愛を奪おうとするのよ」
「はあ・・・」
「基本的な考え方が違うっていうのかしらね。そこから出てくる恨みつらみってやつね」
「う~ん・・・よく分からないんですけど・・・」
「何、言ってるのよ?だから、あんたがここに来たんでしょ?」
あっ・・・そう言われてみれば、確かに・・・。
確かに、京子は、お金で苦労して苦しんで、そして、夏樹さんと別れたはずなのに。
いつの間にか、夏樹さんと雪子さんの関係を疑ったり、その事で恨み事を言い出したりしたし。
それに、確かに夏樹さんの言う通り、その事で、今、ここに、私が来てるわけなのよね?
「かたきの前は素通り出来ても、借金の前は素通り出来ないって言うけど、それじゃ死を覚悟した人にとってはどうかしら?」
「かたきの前って、なんか聞いた事があります」
「あるでしょ?昔の人は、よく言ってた事があるからね」
「でも、それが死を覚悟すると、どうなるんですか?」
「お金ってさ、生きていくための道具や方法の一つでしかないのよね?」
「ええ・・・確かに、そう思います」
「でも、この恨み末代までって、言葉もあるでしょ?」
「はい・・・それも聞いた事があります」
「死んでも死にきれないっていう思いって、何処から来るのかしらね?」
「誰かに裏切られたり、騙されたりって事ですか?」
「そこにあるのは、人の心って事にならない?」
「ええ・・・」
「借金は道具の一つに過ぎないけど、人の心って、道具の一つじゃないわよね?」
「確かに・・・」
「人が生きていくのに、必要不可欠なコアでしょ?」
「そう思います・・・」
「人が夢を持つのも、人を好きになるのも、心があるからよね。それに、日常のちょっとした気持ちの上下も人の心のなせる業だしね。京子にとって、借金やお金での揉め事は、嫌な思い出の一つとして時間とともに色あせていくけど。それじゃ、京子が生きてきた証である愛の存在はどうかしら?」
「それは・・・」
「だから、あんたが、今日、ここに来たんでしょ?違うかしら?」
う~ん・・・。
夏樹さんの話って、やっぱり、意味不明な自信でもって構成されているみたいだけど。
でも、私の不確かな思いの中で生まれた、京子に対しての疑問に真っ直ぐに見つめ返してくれている。
とはいえ、不意に浮き上がるように風がまとわりつく度にフレアスカートの裾から、
時折、見え隠れする夏樹さんの太ももが、なぜか気になってしまう私って、どこか変なのかしら?
う~ん・・・その前に・・・夏樹さん歳はいくつになったんでしたっけ?
なにせ、今日は、膝丈のスカート・・・しかも、フレアだし。
黒に白でくり抜いたような大きなバラの模様の裾から見える生足・・・。
とても、50代の男性の脚とは思えないわ。
それに、フレアなんだから、少しでも風が吹いたりしたら、生足どころか生太ももまで見えちゃうんじゃないの?
空の色が抜けたような薄いセーターに編み上げの長いカーディガン・・・
とても、こんな田舎に分類される街では皆無なファッション・・・って。
いったい、どこで売ってるのかしら?
「あんた、あたしの脚でも見に来たの?」
「えっ・・・?」
そよ風に、時々、ふわりと遊ぶ隙間から見える太ももに、なぜか目を奪われていた直美は、少し恥ずかしくなった。
「で・・・どうしたの?」
夏樹さんって、いつも、こんな感じに話すのかしら?
何の前置きもないっていうか、いきなり入ってくる言葉が、
もう、何十分も前から話をしている中で交わす会話みたいに。
まるで、スライスした列の真ん中から会話を再会してる感じが不思議。
「ええ・・・実は、ちょっと訊きたい事っていうか、確かめておきたいっていうか・・・あの・・・」
「な~に・・・?雪子のこと?」
えええ===っ?なんで分かるの・・・?
「で・・・雪子の、何を知りたいの?」
いや~その~・・・ってか、いきなりですか?
その前に・・・雪子って、呼び捨てしてるし・・・。
しかも、何となく、馴れ馴れしい感じでの呼び捨て感あるし。
「でも・・・あの・・・どうして分かったんですか?」
「京子が、あたしと雪子の仲を疑ってるんでしょ?」
「疑っているっていえば、そのような感じで。じゃないと言えば、違うような・・・」
「あはは!あんた、面白い日本語を使うのね?」
「はは・・・はう・・・」
「人ってさ、お金で仲が悪くなったり、誰かを恨んだり、後悔したりするけど、基本は違うのよね?」
出た・・・夏樹さんの、なんだか分からないのに自信に満ちてる、妙な言い回し言葉。
「基本が違うっていうのは?」
「男と女では、根本的な原因が違うのよ」
「どういう事なんですか?」
「うんとね、男は愛を守ろうとするけど、女は愛を奪おうとするのよ」
「はあ・・・」
「基本的な考え方が違うっていうのかしらね。そこから出てくる恨みつらみってやつね」
「う~ん・・・よく分からないんですけど・・・」
「何、言ってるのよ?だから、あんたがここに来たんでしょ?」
あっ・・・そう言われてみれば、確かに・・・。
確かに、京子は、お金で苦労して苦しんで、そして、夏樹さんと別れたはずなのに。
いつの間にか、夏樹さんと雪子さんの関係を疑ったり、その事で恨み事を言い出したりしたし。
それに、確かに夏樹さんの言う通り、その事で、今、ここに、私が来てるわけなのよね?
「かたきの前は素通り出来ても、借金の前は素通り出来ないって言うけど、それじゃ死を覚悟した人にとってはどうかしら?」
「かたきの前って、なんか聞いた事があります」
「あるでしょ?昔の人は、よく言ってた事があるからね」
「でも、それが死を覚悟すると、どうなるんですか?」
「お金ってさ、生きていくための道具や方法の一つでしかないのよね?」
「ええ・・・確かに、そう思います」
「でも、この恨み末代までって、言葉もあるでしょ?」
「はい・・・それも聞いた事があります」
「死んでも死にきれないっていう思いって、何処から来るのかしらね?」
「誰かに裏切られたり、騙されたりって事ですか?」
「そこにあるのは、人の心って事にならない?」
「ええ・・・」
「借金は道具の一つに過ぎないけど、人の心って、道具の一つじゃないわよね?」
「確かに・・・」
「人が生きていくのに、必要不可欠なコアでしょ?」
「そう思います・・・」
「人が夢を持つのも、人を好きになるのも、心があるからよね。それに、日常のちょっとした気持ちの上下も人の心のなせる業だしね。京子にとって、借金やお金での揉め事は、嫌な思い出の一つとして時間とともに色あせていくけど。それじゃ、京子が生きてきた証である愛の存在はどうかしら?」
「それは・・・」
「だから、あんたが、今日、ここに来たんでしょ?違うかしら?」
う~ん・・・。
夏樹さんの話って、やっぱり、意味不明な自信でもって構成されているみたいだけど。
でも、私の不確かな思いの中で生まれた、京子に対しての疑問に真っ直ぐに見つめ返してくれている。
とはいえ、不意に浮き上がるように風がまとわりつく度にフレアスカートの裾から、
時折、見え隠れする夏樹さんの太ももが、なぜか気になってしまう私って、どこか変なのかしら?
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる