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記憶の欠片
記憶の欠片・・・その12
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雪子の、時間が止まった時間・・・?
う~ん・・・それは時間ではなくて、時刻・・・。まあ、どっちも同じだけど・・・。
う~ん、最近の私って、なんか、変な事が気になるようになってしまうみたいだわ。
変な事っていうより、ちょっとした事って事なんだけど・・・。
まあ、これも、どっちも同じなんだけど・・・。
裕子の他にいた二人のお客が店を出ていくと、マスターが、玄関のプレートをひっくり返して戻ってきた。
「あれ?マスター。今日は、もう、お店は終わりなんですか?」
「いえ・・・ちょっと・・・」
マスターは、そう言いながらカウンターの中へと入っていく。
裕子は、どうしたのかな?と、思いながら、雪子が言う午後5時の意味を考えていると、
ほどなくして、マスターがコーヒーカップを持って裕子の座ってる席に歩いてきた。
「少し、お時間の方いいですかな?」
「あっ・・・はい・・・」
マスターは、笑みを浮かべながら、裕子と向かい合わせの席に座った。
「そういえば、あなた様は、雪子様とはとても仲の良いお友達ですよね?」
「まあ。仲が良いっていえば、そうなのかしら?」
「ええ・・・。いつも、雪子様がそう言っておられましたから」
「雪子が・・・?」
「確か、お名前は裕子様・・・でしたよね?」
「あ、はい。でも、様をつけて呼ばれると少し恥ずかしいですけど。マスターは雪子とは親しいんですか?」
「いえ、それほど親しいというほどでもないのですけど・・・」
「でも、そこの壁掛け時計とか・・・」
いつものように、優しい笑みを浮かべているマスターが、コーヒーを一口飲むと静かに言葉を口にした。
「そろそろ、お話しをする時が来たのかもしれないと思いましてね」
「お話・・・私にですか?」
「はい・・・。雪子様は、なかなか人には心を開かない人ですが、裕子様にだけは、心を開こうとしているように感じられましたものですから・・・」
「はあ・・・」
「雪子様は、私と同じなのですよ・・・」
「えっ・・・?」
「時間が止まったままの壁掛け時計です」
マスターは、そう言いながら寂しそうに壁掛け時計に視線を移した。
「雪子様の時間が止まったのは・・・。いえ、雪子様自身が、自分で、心の時間を止めたのかもしれませんが・・・」
「雪子が、マスターに何か相談していたんですか?」
「相談というほどの事ではないですけど・・・」
「でも、どうして、私じゃなくてマスターに・・・?」
「本当は、裕子様に相談したかったのだと思います」
「ホントは、私に・・・?」
「相談というよりも、何気ないひとり言を裕子様に聞いて欲しかった・・・。そんな感じかもしれません」
「ひとり言・・・ですか?」
「はい・・・。何かの答えが欲しいわけでもない・・・。でも・・・と、いった感じの、そんな心の言葉かと思います」
「でも、どうして、私には何も言ってくれなかったのかしら?」
「きっと、雪子様は、言えなかったのかもしれません・・・」
「言えなかった・・・私に・・・ですか?」
「裕子様は、ふーちゃんという名前を知っていますよね?」
「あっ・・・それじゃ、もしかして、雪子の時間が止まったっていうのは・・・?」
「はい・・・そうだと思います・・・。だから、裕子様に聞いて欲しくても話せなかったのだと思います」
「私に話せないって・・・。確かに、私も、そのふーちゃん、いえ、夏樹さんとお付き合いをしていた事は確かですけど。でも、それは雪子が夏樹さんと付き合う前の事だし、その事で、私に相談出来ないって少し分からないんですけど」
少し慌てたように話す裕子が落ち着くのを待ってから、マスターがまた言葉を続けた。
「略奪愛・・・。きっと、雪子様は、そんな風に思っていたのかもしれません」
「いえ・・・そんな大げさな事でもないんですよ・・・」
「雪子様にとっては、それだけ、裕子様が大切な存在なのだと思います」
裕子は、なんて答えたらいいのか分からなくて、言葉の代わりにコーヒーを口にしてみた。
「傷つけあう愛から逃げて、平凡な愛を手に入れたのに。そこには、雪子様の居場所がなかった。のかもしれません」
いつもと少し違う雰囲気のマスターの言葉に戸惑いながらも、
雪子にとっての自分が雪子にとってとても大切な存在だと聞かされた裕子は、
なぜか、一人で照れている自分が恥ずかしくて、コーヒーを飲んでごまかしてみるのであった。
う~ん・・・それは時間ではなくて、時刻・・・。まあ、どっちも同じだけど・・・。
う~ん、最近の私って、なんか、変な事が気になるようになってしまうみたいだわ。
変な事っていうより、ちょっとした事って事なんだけど・・・。
まあ、これも、どっちも同じなんだけど・・・。
裕子の他にいた二人のお客が店を出ていくと、マスターが、玄関のプレートをひっくり返して戻ってきた。
「あれ?マスター。今日は、もう、お店は終わりなんですか?」
「いえ・・・ちょっと・・・」
マスターは、そう言いながらカウンターの中へと入っていく。
裕子は、どうしたのかな?と、思いながら、雪子が言う午後5時の意味を考えていると、
ほどなくして、マスターがコーヒーカップを持って裕子の座ってる席に歩いてきた。
「少し、お時間の方いいですかな?」
「あっ・・・はい・・・」
マスターは、笑みを浮かべながら、裕子と向かい合わせの席に座った。
「そういえば、あなた様は、雪子様とはとても仲の良いお友達ですよね?」
「まあ。仲が良いっていえば、そうなのかしら?」
「ええ・・・。いつも、雪子様がそう言っておられましたから」
「雪子が・・・?」
「確か、お名前は裕子様・・・でしたよね?」
「あ、はい。でも、様をつけて呼ばれると少し恥ずかしいですけど。マスターは雪子とは親しいんですか?」
「いえ、それほど親しいというほどでもないのですけど・・・」
「でも、そこの壁掛け時計とか・・・」
いつものように、優しい笑みを浮かべているマスターが、コーヒーを一口飲むと静かに言葉を口にした。
「そろそろ、お話しをする時が来たのかもしれないと思いましてね」
「お話・・・私にですか?」
「はい・・・。雪子様は、なかなか人には心を開かない人ですが、裕子様にだけは、心を開こうとしているように感じられましたものですから・・・」
「はあ・・・」
「雪子様は、私と同じなのですよ・・・」
「えっ・・・?」
「時間が止まったままの壁掛け時計です」
マスターは、そう言いながら寂しそうに壁掛け時計に視線を移した。
「雪子様の時間が止まったのは・・・。いえ、雪子様自身が、自分で、心の時間を止めたのかもしれませんが・・・」
「雪子が、マスターに何か相談していたんですか?」
「相談というほどの事ではないですけど・・・」
「でも、どうして、私じゃなくてマスターに・・・?」
「本当は、裕子様に相談したかったのだと思います」
「ホントは、私に・・・?」
「相談というよりも、何気ないひとり言を裕子様に聞いて欲しかった・・・。そんな感じかもしれません」
「ひとり言・・・ですか?」
「はい・・・。何かの答えが欲しいわけでもない・・・。でも・・・と、いった感じの、そんな心の言葉かと思います」
「でも、どうして、私には何も言ってくれなかったのかしら?」
「きっと、雪子様は、言えなかったのかもしれません・・・」
「言えなかった・・・私に・・・ですか?」
「裕子様は、ふーちゃんという名前を知っていますよね?」
「あっ・・・それじゃ、もしかして、雪子の時間が止まったっていうのは・・・?」
「はい・・・そうだと思います・・・。だから、裕子様に聞いて欲しくても話せなかったのだと思います」
「私に話せないって・・・。確かに、私も、そのふーちゃん、いえ、夏樹さんとお付き合いをしていた事は確かですけど。でも、それは雪子が夏樹さんと付き合う前の事だし、その事で、私に相談出来ないって少し分からないんですけど」
少し慌てたように話す裕子が落ち着くのを待ってから、マスターがまた言葉を続けた。
「略奪愛・・・。きっと、雪子様は、そんな風に思っていたのかもしれません」
「いえ・・・そんな大げさな事でもないんですよ・・・」
「雪子様にとっては、それだけ、裕子様が大切な存在なのだと思います」
裕子は、なんて答えたらいいのか分からなくて、言葉の代わりにコーヒーを口にしてみた。
「傷つけあう愛から逃げて、平凡な愛を手に入れたのに。そこには、雪子様の居場所がなかった。のかもしれません」
いつもと少し違う雰囲気のマスターの言葉に戸惑いながらも、
雪子にとっての自分が雪子にとってとても大切な存在だと聞かされた裕子は、
なぜか、一人で照れている自分が恥ずかしくて、コーヒーを飲んでごまかしてみるのであった。
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