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記憶の欠片
記憶の欠片・・・その2
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夏樹さんが、京子を恨んだ・・・?
それって、いったい、どういう事なんだろう?
いえ・・・どういう事なんだろうじゃなくて、どういう意味になるの?
「どうして京子を恨んだんですか?もしかして、その女性とも?ということですか?」
「なに、バカな事を言ってるのよ。言ったでしょ?あたしって、これでも律儀な性格してるって」
いえ・・・あの・・・その律儀って、いったい、どういう意味ですか?
・・・とは、訊けないけど。
「それじゃ、どうして京子のことを?」
「あたしさ、その時に気がつくべきだったのよね」
「気がつくべきって・・・?」
「京子の考え方っていうか、性格っていうかさ」
「考え方・・・?性格・・・?」
「そう・・・。だってさ、あんた考えてもみなさい。あたしと彼女は別に何でもない関係だったのよ」
「でも・・・」
「でも、な~に?男と女だって言いたいわけ?」
「ええ・・・まあ・・・」
「彼女ね・・・雪子とも仲が良かったのよ・・・」
「えっ・・・?」
「あら?初耳だったかしら?でもね・・・あんたの言いたい男と女だっていうのって、まんざら外れでもないかもしれないのよね」
「え・・・?どういう事ですか?」
「あの雪子でさえ、彼女には焼きもちを焼いたのよ・・・。ってか、あの雪子がよ?あんた信じられる?」
「いえ・・・あの・・・」
「彼女ね、彼氏とうまくいってなかったのよ・・・。何年くらいかしら?たぶん1年以上だったかしらね?」
「彼氏と・・・?」
「だから、さっきから言ってるじゃないのよ、あたしって律儀な女だって・・・。あっ、あの頃はまだ男やってたけど」
「ふふっ・・・ですよね」
「その彼氏ってね、隣の県の大きな街の会社に就職しのよ。それで、連距離恋愛になっちゃったんだけど。何年かして、彼女が彼氏のところに行って同性みたいな生活をし始めたんだけどね。ある日、その彼氏から連絡があってね。彼女の事で相談があるってね。んで、その彼氏からの電話がね・・・あっ、その彼氏とあたしは高校の同級生で仲が良かったのよ。それでなんだけどね、相談されたのって、その彼氏の話では、彼女が毎日ふさぎ込んでばかりいて、少し鬱になりかけてるみたいだって。それで、たぶんこっちの環境が合わないかもしれないから実家に帰そうと思うんだけど・・・。と、ここまではよかったんだけどさ・・・」
「何か・・・?」
「その彼氏がね、それで、あたしに彼女の事を頼むって言うわけよ・・・。もち、あたしも彼女とも友達だったからなんだけど、彼氏がね、他の人は信用出来ないって。それで、あたしにっていうわけよ」
「もしかして、その彼女と親しくなっていったのって?」
「そうなの・・・。その彼氏があたしと彼女の関係を疑うくらいにね」
「でも、それでも恋愛には発展しなかったんですよね?」
「そうなのよ・・・。でもね、彼女と別れたあの夜の彼女のひと言で、彼女の気持ちが分かったの・・・」
「彼女の気持ちって・・・?」
「彼女ね、あたしと同じ事を考えてたの・・・。まあ、あたしは雪子と別れてから何年も経っていたからって事もあるんだけど。でも、まさか、お互いが同じ想いでいたなんてね・・・」
「それって、もしかして・・・?」
「あたし、知ってたのよ。彼女が彼氏と別れようと思ってた事。彼女が時々そんな事を言ってから。でもね、それは彼氏と離れて暮らしているし、お互いが仕事でなかなか会えないからなんだと、あたしは思ってたんだけどね」
「それで、彼女も夏樹さんと同じ事を考えてたっていうのは?」
「彼女はね、あたしが雪子と、もう一度・・・って、思っていたみたいなの」
「えっ・・・?だって、その頃って、雪子さんとは、もう、何年も前に別れてたんじゃ?」
「さっき言ったでしょ?彼女は雪子とも仲が良かったって・・・。だから、あたしの知らない雪子の想いか何かを知ってたんじゃないかしら?」
「えっ・・・?」
「時々ね、彼女と会ってる時にそんな風に思う時があったのよね・・・。でも、あたしは雪子とはもう終わった事って思ってたからさ」
「でも、それって、なんか気になりますよね・・・」
「あら?あんたも、そんな時のあたしの気持ちって分かってくれる?」
「ええ・・・よく分かります・・・」
「彼女はあたしの事を、そして、あたしは彼女の事を。お互いがお互いの事を考えて、自分の気持ちにどこかで遠慮してたのね。きっと・・・。あたしは彼女が、そして、彼女はあたしが幸せになって欲しいって、お互いがお互いで思ってたみたいだったのよ」
「なんか、うそみたいな話ですね・・・」
「でしょ・・・?」
「ふふっ・・・。でも、どうして、彼女のそんな気持ちが分かったんですか?」
「あたしがね、彼女と別れる数分前にこう言ったの・・・。本当は、お前と一緒に暮らしたかったって・・・」
「彼女と・・・ですか?」
「そう。嘘も偽りもない、あたしの気持ちを最後に言葉にしたの・・・」
「それで、彼女は・・・?」
「彼女は、こう言ったわ・・・。それは言わないで・・・って・・・。その瞬間だったわ・・・。初めて彼女の心に触れる事が出来たのは・・・」
それって、いったい、どういう事なんだろう?
いえ・・・どういう事なんだろうじゃなくて、どういう意味になるの?
「どうして京子を恨んだんですか?もしかして、その女性とも?ということですか?」
「なに、バカな事を言ってるのよ。言ったでしょ?あたしって、これでも律儀な性格してるって」
いえ・・・あの・・・その律儀って、いったい、どういう意味ですか?
・・・とは、訊けないけど。
「それじゃ、どうして京子のことを?」
「あたしさ、その時に気がつくべきだったのよね」
「気がつくべきって・・・?」
「京子の考え方っていうか、性格っていうかさ」
「考え方・・・?性格・・・?」
「そう・・・。だってさ、あんた考えてもみなさい。あたしと彼女は別に何でもない関係だったのよ」
「でも・・・」
「でも、な~に?男と女だって言いたいわけ?」
「ええ・・・まあ・・・」
「彼女ね・・・雪子とも仲が良かったのよ・・・」
「えっ・・・?」
「あら?初耳だったかしら?でもね・・・あんたの言いたい男と女だっていうのって、まんざら外れでもないかもしれないのよね」
「え・・・?どういう事ですか?」
「あの雪子でさえ、彼女には焼きもちを焼いたのよ・・・。ってか、あの雪子がよ?あんた信じられる?」
「いえ・・・あの・・・」
「彼女ね、彼氏とうまくいってなかったのよ・・・。何年くらいかしら?たぶん1年以上だったかしらね?」
「彼氏と・・・?」
「だから、さっきから言ってるじゃないのよ、あたしって律儀な女だって・・・。あっ、あの頃はまだ男やってたけど」
「ふふっ・・・ですよね」
「その彼氏ってね、隣の県の大きな街の会社に就職しのよ。それで、連距離恋愛になっちゃったんだけど。何年かして、彼女が彼氏のところに行って同性みたいな生活をし始めたんだけどね。ある日、その彼氏から連絡があってね。彼女の事で相談があるってね。んで、その彼氏からの電話がね・・・あっ、その彼氏とあたしは高校の同級生で仲が良かったのよ。それでなんだけどね、相談されたのって、その彼氏の話では、彼女が毎日ふさぎ込んでばかりいて、少し鬱になりかけてるみたいだって。それで、たぶんこっちの環境が合わないかもしれないから実家に帰そうと思うんだけど・・・。と、ここまではよかったんだけどさ・・・」
「何か・・・?」
「その彼氏がね、それで、あたしに彼女の事を頼むって言うわけよ・・・。もち、あたしも彼女とも友達だったからなんだけど、彼氏がね、他の人は信用出来ないって。それで、あたしにっていうわけよ」
「もしかして、その彼女と親しくなっていったのって?」
「そうなの・・・。その彼氏があたしと彼女の関係を疑うくらいにね」
「でも、それでも恋愛には発展しなかったんですよね?」
「そうなのよ・・・。でもね、彼女と別れたあの夜の彼女のひと言で、彼女の気持ちが分かったの・・・」
「彼女の気持ちって・・・?」
「彼女ね、あたしと同じ事を考えてたの・・・。まあ、あたしは雪子と別れてから何年も経っていたからって事もあるんだけど。でも、まさか、お互いが同じ想いでいたなんてね・・・」
「それって、もしかして・・・?」
「あたし、知ってたのよ。彼女が彼氏と別れようと思ってた事。彼女が時々そんな事を言ってから。でもね、それは彼氏と離れて暮らしているし、お互いが仕事でなかなか会えないからなんだと、あたしは思ってたんだけどね」
「それで、彼女も夏樹さんと同じ事を考えてたっていうのは?」
「彼女はね、あたしが雪子と、もう一度・・・って、思っていたみたいなの」
「えっ・・・?だって、その頃って、雪子さんとは、もう、何年も前に別れてたんじゃ?」
「さっき言ったでしょ?彼女は雪子とも仲が良かったって・・・。だから、あたしの知らない雪子の想いか何かを知ってたんじゃないかしら?」
「えっ・・・?」
「時々ね、彼女と会ってる時にそんな風に思う時があったのよね・・・。でも、あたしは雪子とはもう終わった事って思ってたからさ」
「でも、それって、なんか気になりますよね・・・」
「あら?あんたも、そんな時のあたしの気持ちって分かってくれる?」
「ええ・・・よく分かります・・・」
「彼女はあたしの事を、そして、あたしは彼女の事を。お互いがお互いの事を考えて、自分の気持ちにどこかで遠慮してたのね。きっと・・・。あたしは彼女が、そして、彼女はあたしが幸せになって欲しいって、お互いがお互いで思ってたみたいだったのよ」
「なんか、うそみたいな話ですね・・・」
「でしょ・・・?」
「ふふっ・・・。でも、どうして、彼女のそんな気持ちが分かったんですか?」
「あたしがね、彼女と別れる数分前にこう言ったの・・・。本当は、お前と一緒に暮らしたかったって・・・」
「彼女と・・・ですか?」
「そう。嘘も偽りもない、あたしの気持ちを最後に言葉にしたの・・・」
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