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戻らない想い
戻らない想い・・・その14
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「それもこれも、今となっては、懐かしい思い出なのかもしれないわね!」
「あの・・」
「ん・・・?な~に?」
「その、懐かしい思い出って、どっちの方の・・・ですか?」
直美は、夏樹が不意に口にした思い出という言葉が、なぜか引っかかってしまった。
本当なら、どちらも夏樹さんにとっては遠い昔の出来事なのだから。
当然、どちらも思い出ということになるのだろうが・・・はたして夏樹さんはどっちを。
京子・・・?それとも、雪子さん・・・?
夏樹さんにとって、どっちが思い出なのか?今の直美には、とても気になったのである。
「どっちが・・・?」
「ええ・・・」
「どうして・・・?」
「どうしてって言われても・・・。ちょっと、気になったっていうかなんていうか・・・」
「あんたって意外と勘が鋭いところがあるみたいね」
「えっ・・・?どうしてですか?」
「普通、どっちなんて考えるかしら?」
「あ・・・ごめんなさい。変なことを訊いちゃったみたいで」
「別に、いいわよ・・・。どっち・・・きっと、今、あんたが思った通りだと思うわよ」
「私が思った通り・・・ですか・・・。それじゃ・・雪子さんの方ですか?」
「当たりよ・・・。でも、あんた、変なことを気にするのね」
確かに、夏樹さんの言う通りかもしれない・・・。
どうして、どっちが思い出なんだろう?って、気になったんだろう?
「でもね、思い出っていえば、少し不思議だな~って思うことがあるのよ」
「不思議なことですか?」
「そうなのよ。普通、思い出っていえば、楽しかったことや辛かったこと、色んな出来事なんかを思い出したりとかしちゃうんじゃない?」
「ええ・・・普通は、そうだと思います」
「それが不思議なのよ。今、雪子の名前が出たからだけどね。京子の場合と、雪子の場合とを考えてみてもそうなのよ」
「何か、変なんですか?」
「そうなのよ。京子のことを思い出すと、いつも楽しかった思い出ばかり思い出すのに、雪子との昔を思い出す時って、なぜか悲しかったこととか、寂しかったこととかばっかり思い出すのよね・・・。不思議だと思わない?」
「言われてみれば、確かにそうですよね」
「でしょ・・・?とはいっても、雪子の方は別にどうでもいいけど」
どうでもいい・・・?どうでもいいって・・・いったい、どういう意味なの?
「そうだ、あんたさっき、雪子って、とっても物静かで優しい女だって言ってたわよね」
「ええ・・・」
「あたしがね、いまみたいにね、どうでもいいけど!な~んて言うと、いきなりビンタが飛んでくるわよ」
「えっ・・・?ビンタって・・・あの・・・」
「雪子がね、いきなり、あたしの頬をバチン!って!しかも、手加減なしに、思いっきり!」
「ビンタ・・・?」
「んでもって、あたしの驚いた顔を見ながら、きゃはは!って、ケラケラ笑い出すのよ」
そう言いながら、膝の上に乗せているぬいぐるみの手を楽しそうに振りながら笑う夏樹を見ていると、もしかして、夏樹さんの思い出の人は、雪子さんではなくて、京子の方ではないだろうか?
夏樹さんは、自分では気がついていないだけなのではないだろうか?
夏樹さんとの時間が途切れてしまっているのは、雪子さんではなくて、京子の方なのでは・・・。
直美には、なぜか、そんな風に思えてしまうのである。
「子供たちはね・・・あたしじゃないのよ。あたしとは違うのよ」
ぬいぐるみの手を振って笑っていた夏樹が、急に真顔で言葉を口にした。
「えっ・・・?」
「あたしは最後まで京子を見捨てなかった・・・。でも、あの子たちは、どうかしら?」
「子供たちが、京子を見捨てるかもしれないってことですか?」
「いいえ、あたしが心配しているのは、その選択肢じゃないの」
「他にも何かあるんですか?」
「あの子たちが、京子を見捨てるような薄情な性格なら、まだ救いもあるんだろうけどね」
「あの・・・言ってる意味がよく分からないんですけど」
「あの子たちはね、嘘をついたのよ」
「嘘・・・ですか?」
「そう・・・ある事に対して嘘をついたの」
「ある事っていうのは・・・?」
「自分たちの将来っていうか現在っていうか、それを決めたことに対しての嘘」
「どういうことなんですか?」
「長男の方は通信教育を受けたのは父親に無理やりそうさせられた。次男の方は高校を中退したのは父親が中退しろって言ったから・・・。そう言ったらしいわよ」
「あっ・・・、それは私も聞いたことがあります・・・。もしかして、違うんですか?」
「ちょっと、ごめんなさい。ウサギさんが、このクマさんを呼んでるみたいだから、ちょっと行ってくるわね」
「はい・・・?」
夏樹は、そう言うと立ち上って、膝の上に乗せていたクマのぬいぐるみを抱きかかえながら縁側の方へ歩いて行った。
「あの・・」
「ん・・・?な~に?」
「その、懐かしい思い出って、どっちの方の・・・ですか?」
直美は、夏樹が不意に口にした思い出という言葉が、なぜか引っかかってしまった。
本当なら、どちらも夏樹さんにとっては遠い昔の出来事なのだから。
当然、どちらも思い出ということになるのだろうが・・・はたして夏樹さんはどっちを。
京子・・・?それとも、雪子さん・・・?
夏樹さんにとって、どっちが思い出なのか?今の直美には、とても気になったのである。
「どっちが・・・?」
「ええ・・・」
「どうして・・・?」
「どうしてって言われても・・・。ちょっと、気になったっていうかなんていうか・・・」
「あんたって意外と勘が鋭いところがあるみたいね」
「えっ・・・?どうしてですか?」
「普通、どっちなんて考えるかしら?」
「あ・・・ごめんなさい。変なことを訊いちゃったみたいで」
「別に、いいわよ・・・。どっち・・・きっと、今、あんたが思った通りだと思うわよ」
「私が思った通り・・・ですか・・・。それじゃ・・雪子さんの方ですか?」
「当たりよ・・・。でも、あんた、変なことを気にするのね」
確かに、夏樹さんの言う通りかもしれない・・・。
どうして、どっちが思い出なんだろう?って、気になったんだろう?
「でもね、思い出っていえば、少し不思議だな~って思うことがあるのよ」
「不思議なことですか?」
「そうなのよ。普通、思い出っていえば、楽しかったことや辛かったこと、色んな出来事なんかを思い出したりとかしちゃうんじゃない?」
「ええ・・・普通は、そうだと思います」
「それが不思議なのよ。今、雪子の名前が出たからだけどね。京子の場合と、雪子の場合とを考えてみてもそうなのよ」
「何か、変なんですか?」
「そうなのよ。京子のことを思い出すと、いつも楽しかった思い出ばかり思い出すのに、雪子との昔を思い出す時って、なぜか悲しかったこととか、寂しかったこととかばっかり思い出すのよね・・・。不思議だと思わない?」
「言われてみれば、確かにそうですよね」
「でしょ・・・?とはいっても、雪子の方は別にどうでもいいけど」
どうでもいい・・・?どうでもいいって・・・いったい、どういう意味なの?
「そうだ、あんたさっき、雪子って、とっても物静かで優しい女だって言ってたわよね」
「ええ・・・」
「あたしがね、いまみたいにね、どうでもいいけど!な~んて言うと、いきなりビンタが飛んでくるわよ」
「えっ・・・?ビンタって・・・あの・・・」
「雪子がね、いきなり、あたしの頬をバチン!って!しかも、手加減なしに、思いっきり!」
「ビンタ・・・?」
「んでもって、あたしの驚いた顔を見ながら、きゃはは!って、ケラケラ笑い出すのよ」
そう言いながら、膝の上に乗せているぬいぐるみの手を楽しそうに振りながら笑う夏樹を見ていると、もしかして、夏樹さんの思い出の人は、雪子さんではなくて、京子の方ではないだろうか?
夏樹さんは、自分では気がついていないだけなのではないだろうか?
夏樹さんとの時間が途切れてしまっているのは、雪子さんではなくて、京子の方なのでは・・・。
直美には、なぜか、そんな風に思えてしまうのである。
「子供たちはね・・・あたしじゃないのよ。あたしとは違うのよ」
ぬいぐるみの手を振って笑っていた夏樹が、急に真顔で言葉を口にした。
「えっ・・・?」
「あたしは最後まで京子を見捨てなかった・・・。でも、あの子たちは、どうかしら?」
「子供たちが、京子を見捨てるかもしれないってことですか?」
「いいえ、あたしが心配しているのは、その選択肢じゃないの」
「他にも何かあるんですか?」
「あの子たちが、京子を見捨てるような薄情な性格なら、まだ救いもあるんだろうけどね」
「あの・・・言ってる意味がよく分からないんですけど」
「あの子たちはね、嘘をついたのよ」
「嘘・・・ですか?」
「そう・・・ある事に対して嘘をついたの」
「ある事っていうのは・・・?」
「自分たちの将来っていうか現在っていうか、それを決めたことに対しての嘘」
「どういうことなんですか?」
「長男の方は通信教育を受けたのは父親に無理やりそうさせられた。次男の方は高校を中退したのは父親が中退しろって言ったから・・・。そう言ったらしいわよ」
「あっ・・・、それは私も聞いたことがあります・・・。もしかして、違うんですか?」
「ちょっと、ごめんなさい。ウサギさんが、このクマさんを呼んでるみたいだから、ちょっと行ってくるわね」
「はい・・・?」
夏樹は、そう言うと立ち上って、膝の上に乗せていたクマのぬいぐるみを抱きかかえながら縁側の方へ歩いて行った。
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