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戻らない想い
戻らない想い・・・その4
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「そういえば、こうして、あんたと話をするのって初めてよね?」
「ええ・・・」
「ってか、あんたと会ったのも、今日が初めてなんじゃない?」
「ええ、でも、私は以前にも何度か見かけたことはあったんですよ」
「あたしが、まだ、男をやってた頃?」
「ふふっ・・・でも、ずっと昔ですから・・・」
「ふ~ん・・・」
「でも、こうしてお話をしてると、どうして離婚したんだろうって思ってしまいます」
「離婚って、あんたの?」
「いえ・・・京子の方です」
「ああ・・・あたしたちの離婚?」
「ええ・・・」
「どうして・・・?」
「だって、想像していた夏樹さんと全然違うんですもの」
「まあね・・・今じゃ、あたしも女やってるからね」
「いえ、そっちの方じゃなくて・・・」
「あはは!分かってるわよ・・・。でもね・・・いまだに嫌いになれないのよね」
「嫌いにって・・・京子のことをですか?」
「そうよ・・・なんか不思議よね」
「私は、夏樹さんと京子が離婚したことの方が不思議でしたし、今でも不思議ですよ」
「な~に・・・?あんなに仲が良かったのにって思ってたからって?」
「ええ・・・今の夏樹さんを見てるとよけいにそう思ってしまいます」
「今のあたし・・・?」
「ええ・・・」
「何言ってるのよ、今のあたしを見たら誰でも納得すると思うわよ」
「いえ、そっちの方じゃなくて、夏樹さんの人柄の方ですけど」
「あはは!でも、あたしもちょいちょい猫をかぶるから分かんないわよ」
「それに、私なんか一度結婚に失敗していたから、いつも京子がうらやましかったんですよ」
「あら?スルーしたわね?でもね~、仲が良いってことは、言い換えると、いつもどっちかが我慢してるってことでもあるのよ」
どっちかが我慢・・・?直美は少し考えてから言葉を口にした。
「どっちかがって・・・それは夏樹さんってことですか?」
「まあ・・・そんなとこかしらね」
「それじゃ、夏樹さんがずっと京子に合わせてたってことなんですか?」
「ストレートに言ってしまえば、そういうことになるのかしらね」
「ほんとに?京子、そんなことは一言も言ってなかったから、ホントにいつも仲がいいんだな~って思ってました」
「本当に仲が良ければ、いつもケンカばかりしてるわよ・・・。とはいっても、ケンカの内容にもよるけどね」
「でも、どうして・・・?」
「どうして・・・?あんた、京子と仲が良いんじゃなかったの?」
「ええ・・・仲が良いって言えば、確かにそうなんですけど・・・でも・・・」
「でも・・・なに?」
「でも・・・京子は、一度も夏樹さんのことを悪く言ったことなんてなかったから・・・」
「ふ~ん・・・それが、突然、あたしの悪口を言うようになったって?」
「ええ・・・それも離婚してから、突然、夏樹さんの悪口が始まったんです」
「しかし、まあ~こうも違うものなのかしらね・・・?」
「違うって・・・何がですか?」
「ううん・・・こっちの話だから気にしないでちょうだい・・・。でもね、あんなにあたしの悪口ばっかり言ってると、そのうち、子供たちにまで見捨てられちゃうってことに、どうして気がつかないのかしら?」
「確かに、ちょっと言い過ぎの感じはありますけど。でも、どうして、それが子供たちに見捨てられることになるんですか?」
「悪口って言うのはね、最初のうちは自分が経験した事実に対しての悪口なんだけど、それがいつの間にか、段々と、その事実が形を変えてくるもんなのよ」
「事実が形を変えてくる・・・ですか?」
「ええ、そうよ。だから、気がつかないうちに、その事実という生き物が化け物になってしまうの」
「化け物にですか?でも、どうして、そうなってしまうんですか?」
「あのさ、悪口ってさ、誰のために言うと思う?」
「誰のためにって・・・そんな風に考えたことないので・・・」
「分からない・・・?悪口ってね、悪口を言ってる人のためにある言葉の道具なのよ」
「言葉の道具・・・ですか?」
「そうよ。ん~ん、そうね、簡単に例えると、包丁って例えて考えてみると分かりやすいかしら?」
「包丁・・・?」
「そうよ。包丁ってさ、使う人の使い方によってその姿を変えるでしょ?」
「それって、料理に使うのと、誰かを傷つけるために使うってことですか?」
「そうよ。悪口も同じ、自分のために悪口を言って自分を慰めているうちはいいけど、そのうち言葉のナイフを傷つけたい相手に向かって投げつけ始めちゃうの。京子の場合はあたしね」
「なんとなく分かるような・・・」
「でもね、あんまり、いつまでも言葉のナイフを投げつけ続けてるとさ、その悪口を言い続けている人の周りにいる人たちは、どういう風に考え始めると思う?」
「どうって・・・」
「その言葉のナイフを、いつか、自分たちにまで投げつけてくるんじゃないだろうか?・・・そんな風に考えるんじゃないかしら?」
「ええ・・・」
「ってか、あんたと会ったのも、今日が初めてなんじゃない?」
「ええ、でも、私は以前にも何度か見かけたことはあったんですよ」
「あたしが、まだ、男をやってた頃?」
「ふふっ・・・でも、ずっと昔ですから・・・」
「ふ~ん・・・」
「でも、こうしてお話をしてると、どうして離婚したんだろうって思ってしまいます」
「離婚って、あんたの?」
「いえ・・・京子の方です」
「ああ・・・あたしたちの離婚?」
「ええ・・・」
「どうして・・・?」
「だって、想像していた夏樹さんと全然違うんですもの」
「まあね・・・今じゃ、あたしも女やってるからね」
「いえ、そっちの方じゃなくて・・・」
「あはは!分かってるわよ・・・。でもね・・・いまだに嫌いになれないのよね」
「嫌いにって・・・京子のことをですか?」
「そうよ・・・なんか不思議よね」
「私は、夏樹さんと京子が離婚したことの方が不思議でしたし、今でも不思議ですよ」
「な~に・・・?あんなに仲が良かったのにって思ってたからって?」
「ええ・・・今の夏樹さんを見てるとよけいにそう思ってしまいます」
「今のあたし・・・?」
「ええ・・・」
「何言ってるのよ、今のあたしを見たら誰でも納得すると思うわよ」
「いえ、そっちの方じゃなくて、夏樹さんの人柄の方ですけど」
「あはは!でも、あたしもちょいちょい猫をかぶるから分かんないわよ」
「それに、私なんか一度結婚に失敗していたから、いつも京子がうらやましかったんですよ」
「あら?スルーしたわね?でもね~、仲が良いってことは、言い換えると、いつもどっちかが我慢してるってことでもあるのよ」
どっちかが我慢・・・?直美は少し考えてから言葉を口にした。
「どっちかがって・・・それは夏樹さんってことですか?」
「まあ・・・そんなとこかしらね」
「それじゃ、夏樹さんがずっと京子に合わせてたってことなんですか?」
「ストレートに言ってしまえば、そういうことになるのかしらね」
「ほんとに?京子、そんなことは一言も言ってなかったから、ホントにいつも仲がいいんだな~って思ってました」
「本当に仲が良ければ、いつもケンカばかりしてるわよ・・・。とはいっても、ケンカの内容にもよるけどね」
「でも、どうして・・・?」
「どうして・・・?あんた、京子と仲が良いんじゃなかったの?」
「ええ・・・仲が良いって言えば、確かにそうなんですけど・・・でも・・・」
「でも・・・なに?」
「でも・・・京子は、一度も夏樹さんのことを悪く言ったことなんてなかったから・・・」
「ふ~ん・・・それが、突然、あたしの悪口を言うようになったって?」
「ええ・・・それも離婚してから、突然、夏樹さんの悪口が始まったんです」
「しかし、まあ~こうも違うものなのかしらね・・・?」
「違うって・・・何がですか?」
「ううん・・・こっちの話だから気にしないでちょうだい・・・。でもね、あんなにあたしの悪口ばっかり言ってると、そのうち、子供たちにまで見捨てられちゃうってことに、どうして気がつかないのかしら?」
「確かに、ちょっと言い過ぎの感じはありますけど。でも、どうして、それが子供たちに見捨てられることになるんですか?」
「悪口って言うのはね、最初のうちは自分が経験した事実に対しての悪口なんだけど、それがいつの間にか、段々と、その事実が形を変えてくるもんなのよ」
「事実が形を変えてくる・・・ですか?」
「ええ、そうよ。だから、気がつかないうちに、その事実という生き物が化け物になってしまうの」
「化け物にですか?でも、どうして、そうなってしまうんですか?」
「あのさ、悪口ってさ、誰のために言うと思う?」
「誰のためにって・・・そんな風に考えたことないので・・・」
「分からない・・・?悪口ってね、悪口を言ってる人のためにある言葉の道具なのよ」
「言葉の道具・・・ですか?」
「そうよ。ん~ん、そうね、簡単に例えると、包丁って例えて考えてみると分かりやすいかしら?」
「包丁・・・?」
「そうよ。包丁ってさ、使う人の使い方によってその姿を変えるでしょ?」
「それって、料理に使うのと、誰かを傷つけるために使うってことですか?」
「そうよ。悪口も同じ、自分のために悪口を言って自分を慰めているうちはいいけど、そのうち言葉のナイフを傷つけたい相手に向かって投げつけ始めちゃうの。京子の場合はあたしね」
「なんとなく分かるような・・・」
「でもね、あんまり、いつまでも言葉のナイフを投げつけ続けてるとさ、その悪口を言い続けている人の周りにいる人たちは、どういう風に考え始めると思う?」
「どうって・・・」
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