81 / 386
戻らない想い
戻らない想い・・・その1
しおりを挟む
いつものように、ぬいぐるみたちに話しかけながらお部屋を掃除していると、
白っぽい軽自動車が、国道から夏樹の家の方に入ってくるのが見えた。
「あら・・・?見たことない車だけど誰かしらね?あんた知らない?」
あんた知らない?と訊かれても・・・
クマのぬいぐるみの立場としては、何とも答えようがないのではないだろうか?
「でも、もう6月だから衣替えの季節なのよね~。あんたたちは衣替えとかしないの?」
だから・・・しないの?と訊かれても、答えようがないのがぬいぐるみの立場ではないだろうか?
とはいえ、もしかしたら夏樹にはぬいぐるみの声が聞こえているのかもしれない。
もし、知らない人が見たら、普通にぬいぐるみたちと会話をしているように見えてしまうのだろう。
そんな錯覚をおこしたとしても不思議でないほどに、普通の会話が成り立っているのである。
「あら・・・?やっぱり、ここの家に来たみたいね?」
庭の広場・・・いや、この場合は駐車場が正解なのだろうが、どう見ても庭である。
その庭の広場に入ってきた軽自動車は、夏樹が止めている4WDのすぐ隣に止めた。
運転席側のドアが開いて一人の女性が降りてきた。
どうやら一人で来たらしいその女性は、年のころは40代後半くらいだろうか?
若作りをしているようには見えないのだが、着ている洋服は今年流行りらしく、白に何かの模様が入った長めのスカートに、白と青のボーダー柄のチュニックが初夏を感じさせている。
長めの髪を後ろで束ねているその女性が、縁側にいる夏樹に気がついたらしく軽く会釈をした。
んん・・・?見たことがない人みたいだけど誰かしら?
大体、あたしのところに来る人って決まってるし、知らない人が来ることなんて珍しいわね。
その女性は、縁側でタオル片手にお掃除をしている夏樹の方へ近づいてくると、また軽く会釈をした。
「こんにちは・・・」
「あら・・・こんにちは!」
「あの~・・・こちらが夏樹さんという方のお住まいでしょうか?」
「ええ・・・」
「それで・・・今日は夏樹さんは御在宅でしょうか?」
「ええ、いるわよ・・・」
「あの・・・夏樹さんを呼んで頂きたいんですけど・・・」
「それで、あなたはどちらさん・・・?」
「あっ、はい。直美といいます・・・」
「その直美さんは、何か、ご用かしら?」
「あっ、はい・・・。ちょっと夏樹さんにお話がありまして・・・」
「お話し・・・?何かの勧誘かしら?」
「いえ・・・そういうんじゃないんですけど・・・」
「ふ~ん・・・。それじゃ、どんなお話しなのかしら?」
「あの、もしかして、夏樹さんの・・・」
「ん・・・?あたし・・・?」
「はい、お知り合いか何かですか?」
「そう言うあんたはお知り合いなの・・・?」
「いえ・・・そういうわけではないんですけど・・・」
「あんた変わってるわね?お知り合いでもないのにここに来たの?」
「ええ・・・まあ・・・それで・・・あの・・・夏樹さんは、今、どちらに?」
「とりあえずそこに座っててくれる?何か、飲み物を持ってくるから」
「あっ、はい・・・」
縁側のすぐ前の方に、木のテーブルと椅子が2個ずつ向かい合わせに置いてある。
直美が、その片方の椅子に座っていると、
さっきの女性がコーヒーカップをのせた木目模様のトレーを持って縁側から出てきた。
その女性は、椅子に座っている直美の前にコーヒーカップを置くと、
反対側の方へもコーヒーカップを置いてからその女性も椅子に腰掛けた。
「あの・・・」
「あら・・・?コーヒーはお嫌いだったかしら?」
「いえ、あの・・・そうではなくて・・・」
「お砂糖とミルクは適当に入れてね」
「あっ、はい・・・それで・・・あの・・・」
「ん・・・?どうしたの・・・?」
「ですから、あの・・・さっきお尋ねしました夏樹さんは・・・?」
「あい・・・?んなの、あんたの目の前にいるじゃないのよ!」
「えっ・・・?」
夏樹の言葉に思わず驚いた直美は、目の前の椅子に腰掛けた女性の顔を覗き込むように見返していた。
白っぽい軽自動車が、国道から夏樹の家の方に入ってくるのが見えた。
「あら・・・?見たことない車だけど誰かしらね?あんた知らない?」
あんた知らない?と訊かれても・・・
クマのぬいぐるみの立場としては、何とも答えようがないのではないだろうか?
「でも、もう6月だから衣替えの季節なのよね~。あんたたちは衣替えとかしないの?」
だから・・・しないの?と訊かれても、答えようがないのがぬいぐるみの立場ではないだろうか?
とはいえ、もしかしたら夏樹にはぬいぐるみの声が聞こえているのかもしれない。
もし、知らない人が見たら、普通にぬいぐるみたちと会話をしているように見えてしまうのだろう。
そんな錯覚をおこしたとしても不思議でないほどに、普通の会話が成り立っているのである。
「あら・・・?やっぱり、ここの家に来たみたいね?」
庭の広場・・・いや、この場合は駐車場が正解なのだろうが、どう見ても庭である。
その庭の広場に入ってきた軽自動車は、夏樹が止めている4WDのすぐ隣に止めた。
運転席側のドアが開いて一人の女性が降りてきた。
どうやら一人で来たらしいその女性は、年のころは40代後半くらいだろうか?
若作りをしているようには見えないのだが、着ている洋服は今年流行りらしく、白に何かの模様が入った長めのスカートに、白と青のボーダー柄のチュニックが初夏を感じさせている。
長めの髪を後ろで束ねているその女性が、縁側にいる夏樹に気がついたらしく軽く会釈をした。
んん・・・?見たことがない人みたいだけど誰かしら?
大体、あたしのところに来る人って決まってるし、知らない人が来ることなんて珍しいわね。
その女性は、縁側でタオル片手にお掃除をしている夏樹の方へ近づいてくると、また軽く会釈をした。
「こんにちは・・・」
「あら・・・こんにちは!」
「あの~・・・こちらが夏樹さんという方のお住まいでしょうか?」
「ええ・・・」
「それで・・・今日は夏樹さんは御在宅でしょうか?」
「ええ、いるわよ・・・」
「あの・・・夏樹さんを呼んで頂きたいんですけど・・・」
「それで、あなたはどちらさん・・・?」
「あっ、はい。直美といいます・・・」
「その直美さんは、何か、ご用かしら?」
「あっ、はい・・・。ちょっと夏樹さんにお話がありまして・・・」
「お話し・・・?何かの勧誘かしら?」
「いえ・・・そういうんじゃないんですけど・・・」
「ふ~ん・・・。それじゃ、どんなお話しなのかしら?」
「あの、もしかして、夏樹さんの・・・」
「ん・・・?あたし・・・?」
「はい、お知り合いか何かですか?」
「そう言うあんたはお知り合いなの・・・?」
「いえ・・・そういうわけではないんですけど・・・」
「あんた変わってるわね?お知り合いでもないのにここに来たの?」
「ええ・・・まあ・・・それで・・・あの・・・夏樹さんは、今、どちらに?」
「とりあえずそこに座っててくれる?何か、飲み物を持ってくるから」
「あっ、はい・・・」
縁側のすぐ前の方に、木のテーブルと椅子が2個ずつ向かい合わせに置いてある。
直美が、その片方の椅子に座っていると、
さっきの女性がコーヒーカップをのせた木目模様のトレーを持って縁側から出てきた。
その女性は、椅子に座っている直美の前にコーヒーカップを置くと、
反対側の方へもコーヒーカップを置いてからその女性も椅子に腰掛けた。
「あの・・・」
「あら・・・?コーヒーはお嫌いだったかしら?」
「いえ、あの・・・そうではなくて・・・」
「お砂糖とミルクは適当に入れてね」
「あっ、はい・・・それで・・・あの・・・」
「ん・・・?どうしたの・・・?」
「ですから、あの・・・さっきお尋ねしました夏樹さんは・・・?」
「あい・・・?んなの、あんたの目の前にいるじゃないのよ!」
「えっ・・・?」
夏樹の言葉に思わず驚いた直美は、目の前の椅子に腰掛けた女性の顔を覗き込むように見返していた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる