愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
78 / 386
後悔

後悔・・・その18

しおりを挟む
「でも、それじゃ、雪子はどうなの?」

「私・・・?」

「雪子も、夏樹さんと同じように、ただのメル友としか思ってないの?」

「裕子ちゃま・・・?」

「なに・・・?」

「いいですか、裕子ちゃま・・・?これでも、今の私は人の妻なんだよ!」

う~ん・・・。雪子の口から出た言葉とは思えないわ・・・。

「そういうことじゃなくて、雪子が夏樹さんのことをどう思っているかってことよ?」

「いいですか!裕子ちゃま・・・?」

「なに・・・?」

「私が、ふーちゃんをどう思っているか?ということが、問題ではないのでありますよ?」

「どうして・・・?」

「問題は、今の私が人の妻なのだ!ということなのであります!」

「う~ん・・・。もう少し分かるように言ってみてよ」

「今のふーちゃんは独身でも、今の私の場合は不倫ということになるのであります!」

「でも、それって、もし今の雪子が独身だったら夏樹さんともう一度付き合いたいってことになるんじゃないの?」

「もう~裕子ったら・・・。事はそう単純じゃないのであります!」

「どうしてよ・・・?だって、雪子が独身だったら、夏樹さんと付き合っても不倫にならないんじゃないの?」

「いいですか?それを、今の私が妄想するということは、と~っても、厳しい問題なのであります!」

「厳しい問題・・・?どの辺が・・・?」

「全部だよ!・・・」

「全部だよ・・・」と言った雪子の声に、裕子はドキッとした・・・。
時折、雪子がまるで人格が変わったかのようにつぶやく「ウザいんだよ」の時と同じように、
急に低音でつぶやく雪子の顔を見た時、一瞬だが、裕子は背筋に寒気が走るのを感じた。

その視線の先にある雪子の瞳が、寂しさや悲しみではなく・・・何かに・・・。
いや、何かにではなく、誰かに向けられた憎しみを感じさせるような鋭い目つきだったからである。

「ちょっと、雪子・・・?」

「な~に・・・?」

「お願いだから、急に低い声でつぶやかないで・・・」

「ん・・・?私、低い声でなんてつぶやいてないよ?」

あっ、そっか・・・。そうだったわ。
そういえば、雪子は自分では気がついていないんだったわね。
でも、急に低い声でつぶやかれるから、聞かされる側としてはマジでドキッとするわ!

「でも、雪子・・・?全部って、何が全部なの?」

「全部は全部・・・。何もかも、全部ってことだよ」

「それって、夏樹さんの別れた奥さんのこととかってこと?」

「うん。それもあるし、それに、ふーちゃんには子供もいるでしょ?」

「確か、2人いるって聞いたけど・・・」

「それ以外にも、ふーちゃんには、ふーちゃんが生きてきた環境とかもあるし」

「雪子が生きてきた環境とかも・・・?」

「うん。ふーちゃんにしても、私にしても、今まで生きて作ってきた過去や、それに、今があるわけだし」

「そんなことを言ってたら、誰も、再婚なんて出来ないんじゃないの?」

「ふーちゃんが、他の人のように割り切れる性格だったらそうかもしれないけど」

「違うの・・・?」

「違うよ・・・。だって、ふーちゃんが別れた奥さんは、ふーちゃんが選んだ人なんだよ」

あれ・・・?・・・そういえば、夏樹さんも、そんな風なことを言ってたわね?
確か・・・「大体にして、あたしがそんな適当な女と結婚とかすると思う?」とかって・・・。

「でも、それじゃ、もしかして、夏樹さんは今でも離婚した奥さんのことが忘れられないってことなの?」

「う~ん・・・ちょっと、違うかも・・・」

「ちょっと違うかもって?・・・どこが、どう違うの?」

「きっと、ふーちゃんはこう思っていると思うんだ・・・。もう、誰も不幸にしたくないって」

「誰もって・・・もしかして、雪子や、雪子の家族ってこと?」

「うん・・・。だから、ふーちゃんは、私とは、ただのメル友でいようとしてるんだと思うんだ」

「でも、雪子は・・・?雪子自身はどうなの?」

「う~ん・・・」

「う~んって・・・?」

「きっと、ふーちゃんは、私に、今日まで生きてきた時間を後悔させるようなことをしたくないんじゃないかな?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

処理中です...