愛して欲しいと言えたなら

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後悔

後悔・・・その11

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そういう言い方って、どういう言い方よ?
あたしは別に普通に話してるつもりなんだけど、どうやら受け取る側に問題があるみたいね?

「あんたさ、この先も、ずっと、あたしを恨みながら生きていくつもりなの?」

「別に、そんなことなんて考えていないわよ」

「それじゃ、いつまで、あたしを恨み続けるつもりなの?」

「どうして、私には、そんな風に冷たい言い方をするの?」

私には・・・。やっぱりね。
年末のあの時のことが、よっぽどショックだったみたい。
ま~、確かに、それはそうよね。
なにせ、京子とすれ違った時に、あたしと腕を組んでいたのが、あの雪子だったんだから。
そりゃ~京子にしてみればショックもショック、大ショックだったってことはわかってはいたけど。

でも、まさか、雪子とのすれ違いが、京子をこんな風に動かすことになるとはね。
ちょっと驚いたってか、予想外っていうか、少し不思議な感じ。
旦那の方から離婚した妻に声をかけることはあっても、元妻の方からってのはあまり聞いた事ないし。

う~ん・・・京子のショックは想像以上だったってことかしら?
とは言っても、あたしにとっての雪子の存在っていうのは、京子も同じように思ってたわけだから、仕方がないって言えば仕方がないんだろうけど・・・。

「あんた、何か勘違いしてるんじゃない?」

「勘違いって、何よ?」

「ま~、別にいいけど・・・」

そう言って、夏樹がまた車のドアに手をかけようとすると

「ちょっと・・・」

「今のあんたとは、まだ、話さない方がいいんじゃないかしら?」

「どういう意味よ・・・?」

「いや・・・その前に、どうして、あんたは女言葉のあたしを普通に受け入れてるのよ?」

「えっ・・・?」

「えっ・・・?じゃないでしょ?普通は軽蔑のまなざしの一つも向けてくれるもんじゃないの?」

「軽蔑されたいの・・・?」

京子は少しうつむきながら小声でつぶやくと、上目使いで夏樹を見ながらまたクスッと笑った。
う~ん・・・どうも、話がかみ合ってないわね?

「そういえばさ、あんた、子供たちとは仲良くやってたんじゃなかったの?」

「別に、あなたには関係ないでしょ?」

「あら?ずいぶんと冷たい言い方をするのね?」

「何よ・・・?子供たちを捨てて勝手に出て行ったのはあなたの方でしょ?」

「ふふっ・・・なるほどね・・・。そういうことなのね」

「そういうことって、何よ・・・?」

「違うでしょ・・・?」

「えっ・・・?」

「そこじゃなくて、その前に、ふふっ・・・て、女笑いしたあたしに疑問の一つも持つ方が先でしょ?」

「だって、そう言われても、違和感ないわよ?」

「うそ・・・?」

「うそじゃないわよ。あなたって、どこから見ても女の人にしか見えないわよ」

「ま~ね。あたしって元々が二枚目だったからね」

「バカみたい、1人で勝手に言ってなさいよ・・・」

「ふふっ・・・でも、10年ぶりにあたしと話をしてどうかしら?少しは肩の荷が下りたんじゃない?」

「なに、それ・・・?」

「あらら・・・。それとも、余計に憎しみが沸いてきちゃった?」

「当たり前でしょ?よりにもよってあの人と歩いていたなんて、しかも仲良く腕なんか組んじゃってさ、あんなの見せられてカチンとこないわけがないでしょ?」

「やっぱり、そこにくるのね?」

「どういうことよ・・・?」

「あんたってさ、昔から、あたしに対しての焼きもちってすごかったもんね?」

「そんなわけないでしょ?それとも、何?あれってわざとだったの?」

「そうよ。そんなの当たり前でしょ?あんたは何だと思ってたのよ?」

「ずいぶんひどいことをするのね?」

「そうよ。だから、もう、あたしのことなんか忘れちゃいなさい?そうしないと、あんたは、いつまでたっても前に進めないわよ」

「そんなこと、あなたに言われる筋合いはないわよ」

「あるわよ・・・。あたし以外の人にはないけど、あたしにだけはあるわよ」

「は~?何を言ってるの?」

「この際だから、はっきり言ってあげるけど、あんたがあたしのことが嫌いでも、あたしはあんたのことが嫌いにはなれないってことよ、分かった?」

「えっ・・・?」

「少しは頭を冷やして考えなさい・・・。そうしないと本当に子供達にまで見捨てられちゃうわよ」

そう言って夏樹は車のドアを開けて乗り込むと、そのまま走り去ってしまった。
京子は、あまりに意外な、そして、自分の本心をいう時の強い口調で話す夏樹の言葉に、
何も言えないまま、走り去っていく夏樹の車のテールランプを憎悪にも似た鋭い目つきで、じっと、睨みつけていた。
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