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後悔
後悔・・・その1
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「あたしってさ、お金とかって欲しくないのよね」
「えっ・・・?」
こういうところも変わってないのね?
突然、突飛な事っていうか、明後日を向いてるようなことを言うところは昔のまま。
「とはいっても、ちょっと意味が違うんだけど」
「どう違うの・・・?」
「生活するのに必要なお金だけあればいいって言う感じかしら」
「それは、みんな同じなんじゃないの?」
「そうかしら・・・?」
「そうかしら?って、言われても・・・」
「それに、お金って別に欲しがらなくても、それなりにちゃんと回ってくるものなのよ」
「それはちょっと違うと思うけど・・・」
「どうして・・・?」
この話し方・・・夏樹さん独特の言葉遊び。
今になって、改めてこうして目の前で話していても、あの頃と同じでとても話しやすいし、
そして、誰かが悪いという事は言わないくせに、自分の考えが正しいと決めつける話し方。
夏樹さんは、どこかに一緒に行きたいとか、二人で旅行をしたいとか、そういうことじゃなくて。
ただ一緒にいたい、同じ時間を一緒に過ごせるなら場所なんてどこでもいい・・・。
そんな風に思わせてくれる人・・・
今も変わらない夏樹さんから見て、今の私はどんな風に映っているのかな?
「だって、世の中にはお金がなくて不幸になったり死んじゃったりする人だっているのよ?」
「それは、その人が自分で選らんだことでしょ?」
「えっ?でも、自分で選ばなくても不幸になってしまう人だっていると思う」
「それは違うわ・・・」
「えっ・・・?」
「あんたの言いたいことは分かるわよ。でも、その考え方って誰から教わったの?」
「誰からって・・・」
「世の中に飛び交っている情報?それとも、あんたの知り合い?」
「ニュースとかかしら?」
「それじゃさ、この国の常識って世界の常識?」
「えっ・・・?どういう事?」
「違うわよね?その国々によって法律が違えば価値観も違うし罪状の重さも違う・・・でしょ?」
「言われてみれば、確かにそうかも・・・」
「それにドラマやマンガ、それから映画なんかでもそうだけど、なんでも人間中心に構成してるのよね」
「どういうことなの?」
「牛に愛情を注いで育てたとか、羊はモコモコしてて可愛いとか言っていながら食べちゃうのよね」
「えっ・・・?」
「生きたまま熱湯の中に入れられちゃう海の生き物たちもいるでしょ?」
「その方が新鮮で美味しいとかってことでしょ?」
「その考え方も、どこかで拾ってきた情報でしょ?」
「う~ん・・・言ってる意味が分からないわ」
「あたしは別にそれを否定するわけじゃないし、草だけ食べてても人は生きていけるとかって言いたいわけじゃないの」
「うん・・・」
「ただね、自分たちのエゴを正当化してるだけの偽善者の言い訳だと思うのよ」
「うん・・・」
「ようは、人間はこの世界の支配者だから、人間以外の生き物には何をやっても許されるって考え方が基本になってるだけなの」
「うん・・・」
「じゃあさ、そのあたしたち人間よりも高度で強い生き物たちが、この世界に現れたらどうなると思う?」
「う~ん・・・人間が支配されてしまうってこと?」
「そうね。でも、もっと簡単に言うと人間は牛や豚のように家畜として扱われてしまうってことでしょ?」
「でも、人間は霊長類で魂もあって、だから他の生き物とは違うんじゃないの?」
「それも偽善者の言い訳に過ぎないわ。ってか、ちょっと話が脱線しちゃったわね」
夏樹は、ニコニコしながらコーヒーを一口飲んで話を続けた。
「神様ってさ、人間にいくつかの平等を与えてくれていると思うの」
出た・・・夏樹さんの神様話だわ・・・。
「その中の一つが死の平等。これは、みんなも知ってるわよね」
「聞いたことはあるけど。それって、どういう意味なの?」
「簡単にいうと、誰しもが自分の命を終わらせることが出来るってことかしら?」
「えっ・・・?人の寿命とかってことじゃないの?」
「それもあるわね。世間でよく言う、どんな人にでも死からは逃れられないってやつね」
「他にもあるの?」
「いろんな死があるけど、命が永遠じゃないということに関しては誰しもが平等ってこと」
「人の死以外にもあるの?神様が与えてくれている平等って?」
「あるわ。自分の生き方を自分で決めることが出来るということも神様が与えてくれた平等ね」
「生き方を決める平等・・・?」
「だから、あたしは結婚したことも、離婚したことも後悔なんてしていないのよ」
「自分で決めたことだからってこと?」
「そうよ。でも、あたしは離婚しなければいけない時にその決断が出来なかったの。自分で決められなかったのよ」
「えっ・・・?」
「あたしは自分で決断しなければいけなかったのに、それが出来なかった。だから、みんなが不幸になったの」
夏樹さんは、明後日の方向の話をしていながら、突然、確信に近づく話を切り出してくる。
誰かが悪いじゃなくて、自分のせいでみんなが不幸になったのが正しいと決めつける人。
今も変わらない夏樹さんのそんな考え方・・・。でもね、それは違うのよ・・・。
そんな夏樹さんだから雪子も私も、時々、息が苦しくなってしまうの・・・。分かってるの?
「えっ・・・?」
こういうところも変わってないのね?
突然、突飛な事っていうか、明後日を向いてるようなことを言うところは昔のまま。
「とはいっても、ちょっと意味が違うんだけど」
「どう違うの・・・?」
「生活するのに必要なお金だけあればいいって言う感じかしら」
「それは、みんな同じなんじゃないの?」
「そうかしら・・・?」
「そうかしら?って、言われても・・・」
「それに、お金って別に欲しがらなくても、それなりにちゃんと回ってくるものなのよ」
「それはちょっと違うと思うけど・・・」
「どうして・・・?」
この話し方・・・夏樹さん独特の言葉遊び。
今になって、改めてこうして目の前で話していても、あの頃と同じでとても話しやすいし、
そして、誰かが悪いという事は言わないくせに、自分の考えが正しいと決めつける話し方。
夏樹さんは、どこかに一緒に行きたいとか、二人で旅行をしたいとか、そういうことじゃなくて。
ただ一緒にいたい、同じ時間を一緒に過ごせるなら場所なんてどこでもいい・・・。
そんな風に思わせてくれる人・・・
今も変わらない夏樹さんから見て、今の私はどんな風に映っているのかな?
「だって、世の中にはお金がなくて不幸になったり死んじゃったりする人だっているのよ?」
「それは、その人が自分で選らんだことでしょ?」
「えっ?でも、自分で選ばなくても不幸になってしまう人だっていると思う」
「それは違うわ・・・」
「えっ・・・?」
「あんたの言いたいことは分かるわよ。でも、その考え方って誰から教わったの?」
「誰からって・・・」
「世の中に飛び交っている情報?それとも、あんたの知り合い?」
「ニュースとかかしら?」
「それじゃさ、この国の常識って世界の常識?」
「えっ・・・?どういう事?」
「違うわよね?その国々によって法律が違えば価値観も違うし罪状の重さも違う・・・でしょ?」
「言われてみれば、確かにそうかも・・・」
「それにドラマやマンガ、それから映画なんかでもそうだけど、なんでも人間中心に構成してるのよね」
「どういうことなの?」
「牛に愛情を注いで育てたとか、羊はモコモコしてて可愛いとか言っていながら食べちゃうのよね」
「えっ・・・?」
「生きたまま熱湯の中に入れられちゃう海の生き物たちもいるでしょ?」
「その方が新鮮で美味しいとかってことでしょ?」
「その考え方も、どこかで拾ってきた情報でしょ?」
「う~ん・・・言ってる意味が分からないわ」
「あたしは別にそれを否定するわけじゃないし、草だけ食べてても人は生きていけるとかって言いたいわけじゃないの」
「うん・・・」
「ただね、自分たちのエゴを正当化してるだけの偽善者の言い訳だと思うのよ」
「うん・・・」
「ようは、人間はこの世界の支配者だから、人間以外の生き物には何をやっても許されるって考え方が基本になってるだけなの」
「うん・・・」
「じゃあさ、そのあたしたち人間よりも高度で強い生き物たちが、この世界に現れたらどうなると思う?」
「う~ん・・・人間が支配されてしまうってこと?」
「そうね。でも、もっと簡単に言うと人間は牛や豚のように家畜として扱われてしまうってことでしょ?」
「でも、人間は霊長類で魂もあって、だから他の生き物とは違うんじゃないの?」
「それも偽善者の言い訳に過ぎないわ。ってか、ちょっと話が脱線しちゃったわね」
夏樹は、ニコニコしながらコーヒーを一口飲んで話を続けた。
「神様ってさ、人間にいくつかの平等を与えてくれていると思うの」
出た・・・夏樹さんの神様話だわ・・・。
「その中の一つが死の平等。これは、みんなも知ってるわよね」
「聞いたことはあるけど。それって、どういう意味なの?」
「簡単にいうと、誰しもが自分の命を終わらせることが出来るってことかしら?」
「えっ・・・?人の寿命とかってことじゃないの?」
「それもあるわね。世間でよく言う、どんな人にでも死からは逃れられないってやつね」
「他にもあるの?」
「いろんな死があるけど、命が永遠じゃないということに関しては誰しもが平等ってこと」
「人の死以外にもあるの?神様が与えてくれている平等って?」
「あるわ。自分の生き方を自分で決めることが出来るということも神様が与えてくれた平等ね」
「生き方を決める平等・・・?」
「だから、あたしは結婚したことも、離婚したことも後悔なんてしていないのよ」
「自分で決めたことだからってこと?」
「そうよ。でも、あたしは離婚しなければいけない時にその決断が出来なかったの。自分で決められなかったのよ」
「えっ・・・?」
「あたしは自分で決断しなければいけなかったのに、それが出来なかった。だから、みんなが不幸になったの」
夏樹さんは、明後日の方向の話をしていながら、突然、確信に近づく話を切り出してくる。
誰かが悪いじゃなくて、自分のせいでみんなが不幸になったのが正しいと決めつける人。
今も変わらない夏樹さんのそんな考え方・・・。でもね、それは違うのよ・・・。
そんな夏樹さんだから雪子も私も、時々、息が苦しくなってしまうの・・・。分かってるの?
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