愛して欲しいと言えたなら

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再会

再会・・・その19

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夏樹が裕子をからかっていると、店のウエイトレスが注文を取りに来たので
夏樹は、コーヒーを頼みながら「この子にもコーヒーお願いね」と
裕子を見つめては含み笑いを浮かべながら注文をした。

「ホント!そういうとこって昔から変わんないのね?」

「変わってた方がよかったかしら?」

「そうじゃないけど・・・」

「ふ~ん・・・じゃ~どうなの?」

「ほら!また、そんな風に・・・」

コーヒーがくるまで裕子をからかって遊んでる夏樹なのだが・・・。
これは、夏樹が得意な手法というか、話術というか。
おかげで、裕子は二人きりでの夏樹との再会の緊張も解けたようである。

「でも、雪子、とっても残念がってたのよ」

「あたしに会えなくなっちゃったから?」

「だって、まさか雪子の旦那がこっち来るなんて思ってもみなかったし」

「な~んか、ウザい感じの旦那みたいね」

「うっそ・・・どうして?」

「何・・・?どうしたの?」

「だって、雪子とおんなじことを言うんだもん」

「ん・・・そうなの?」

「うん。でも、ビックリしちゃったわよ」

「あやつって多重人格なとこがあるからね」

「やっぱり・・・」

「知らなかったの?」

「うん、知らなかった」

「やっぱり、あやつは、あんたの前でも猫をかぶってたんだ!」

「この前、あなたが帰った後にね、雪子に旦那がこっちに来るみたいよって言ったのよ」

「大晦日の夜?」

「うん。そしたら雪子がボソッと(ウザいね!うちの旦那って)、みたいなことを言ったのよ」

「あははっ!」

「笑いごとじゃないわよ。あたし、マジでドキッとしちゃったのよ!」

「まだ、いいじゃない。あたしなんか、いきなりビンタよ!ビンタ!」

「ビンタって・・・ホントだったの?」

「そうよ。何の前触れもなく、いきなり飛んでくるからね。バチンってさ」

「でも、それで怒らないの?」

「怒んなわよ、別に。だって、あやつって猫じゃない?」

「猫・・・?」

「そう。自己中心的で自分勝手で悪戯好きだしね」

「うそ・・・?」

「うそって、あんたといる時は違うの?」

「全然、違うわよ・・・」

「それじゃ、あたしといる時だけってことかしら?」

「たぶん・・・だと思うけど・・・」

「何を考えてんだ、あやつは・・・」

そうは言ってても、どこか喜んでいる素振りをしながらコーヒーを飲んでいる夏樹を見ていると
裕子は、雪子が流した涙が、悲しさではなく悔しさなのだと改めて思うのである。
夏樹さんも、雪子も、お互いに結婚する相手を間違えたのかもしれない。時々、思うけど。

「そういえば、夏樹さんって離婚したのよね・・・?」

「ん・・・?夏樹さんだなんて、さんづけで呼ばれたら照れちゃうじゃないの」

「そんなことを言ったって・・・。それじゃ、なんて呼んだらいいの?」

「夏樹でいいわよ・・・」

「いきなり、そんなことを言われても・・・」

「あんた、この先も一生あたしの下僕をやるつもりなの?」

「えっ・・・?」

「あんたって、昔から、あたしには従順なのよね?」

「そんなことないと思うけど・・・」

「じゃ~呼んでみて・・・夏樹って呼び捨てで・・・ふふっ」

「いつかね・・・。私にだって心の準備っていうのがあるのよ」

「もう~裕子って、本当に可愛いんだから・・・」

「すぐにそうやってからかうんだから・・・。そうじゃなくて、夏樹さんって結婚した事を後悔していないの?」

「後悔・・・?」

「うん、前にメールで言ったでしょ?」

「そのことね。そうね~・・・あいつと結婚したことは後悔はしてないわね」

「それじゃ、離婚したことは後悔してるってことなの?」

「それも、違うわね・・・」

「それじゃ、何?結婚したことも離婚したことも後悔していないってことなの?」

「そうよ・・・どこかおかしいかしら?」

「おかしいわよ!どっちも後悔していないなんて変じゃない?それじゃ離婚しなくてもよかったってことでしょ?」

「それも、違うわね・・・」

「どういうことなの?私、全然分かんないわよ」

「あたしが後悔しているのは、離婚したことじゃなくて、離婚する時期を間違えたってこと」

裕子は、夏樹の離婚のことに踏み入っていいのか正直分からなかった。
それでも、雪子のことを考えると、夏樹が、どうして離婚したのかを確かめたいと思ってしまうのである。

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