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再会
再会・・・その7
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スーパーの駐車場には思ったほどの台数の自動車は並んでいないようである。
玄関の入り口付近はそれなりにびっしりと並んでいるのだが、
少し離れたところはそれほどでもなく、それなりに駐車スペースが目立っていた。
ここのスーパーは、周りが宅地やアパートなどに囲まれている場所にあるので、
自動車で買い物に来る客よりも、徒歩で買い物に来る客の方が多い。
という事は、必然的に駐車場はいつも駐車するスペースがあるという事になる。
そのため、夏樹はよくここのスーパーを利用しているのである。
とはいっても、夏樹が、ここのスーパーを利用するのにはもう1つ理由があった。
そして、その、もう一つの理由である出来事が間もなく夏樹の前に現れるのだが・・・。
夏樹は、雪子の肩を抱くようにしながら駐車場の真ん中を抜けるように歩いて行く。
駐車している自動車のドアを開けて買った荷物を積み込む人たち。
その向こうにある自分の自動車まで歩いて行く人たち。
そして、今からスーパーの玄関へと向かって歩いてくる人たち。
そんな人混みの中を、女同士が絡み合うようにしながら歩いているのだから、
今から買い物をするためにスーパーの方へ向かう人たちには、それなりに目立つらしい。
普段ならすぐ横をすれ違ったとしても、それが夏樹だと気づかなかったかもしれないが、
今日は、女同士が肩を寄せて絡むようにしながら歩いていたからなのだろうか?
こちらに歩いてくる1人の女性の視線に気がついた夏樹は、
自分に向けられている、その冷たい視線の先を見つめながら、
雪子に肩に回した腕を解く事もなく、夏樹を見つめる視線を逸らす事もしないまま歩き続ける。
視線を合わせたまま通り過ぎようとする女性と、
その視線を見つめ返すように通り過ぎようとする夏樹。
まるで映画の1シーンのように、その瞬間だけがスローモーションのように時間が流れていく。
その女性とすれ違った夏樹は、少しだけ瞳を閉じてはみたが、そこに後悔は感じなかった。
女装をするようになった夏樹に気がつく知人はほとんどいない。
それほどに夏樹の変貌ぶりは完璧というか艶やかといっても過言ではないだろう。
ましてや普段から出かける時はマスクをしている夏樹である。
ただ、夏樹がマスクをしているのは別に自分を隠すためではない。
マスクで顔を隠すのにはいくつかの理由がある。
その1つは実際の年齢よりもものすご~く若く見られるのである。
夏樹は、若く見られる事がとても嬉しいみたいで密かに1人で喜んでいるらしい。
そして2つ目の理由は普段からマスクをしていないと、夜ベッドで寝る時に咳が出てしまい、
その咳が止まらなくなってしまうのである。
なぜ、昼間マスクをしていないと寝る時になって咳が出るのか、その理由は分からないが、
咳をする時に時々出る淡が、今でも黒い色をしているので、
夏樹としては、おそらくは若い頃に従事していた仕事の後遺症ではないかと思っている。
夏樹が普段からマスクをしているのは、この、寝る時に出る咳が1番の理由だったらしく、
他のいくつかある理由は、マスクをした後から付けただけのたわいもない理由のようである。
すれ違いが終わるまでの、ほんの数秒の世界の中、
夏樹の視線に、臆びの素振りも見せない視線を返すその女性は、
気丈な強い瞳のまま、振り返ることもせずに真っ直ぐに歩いて行く。
「ねぇ~雪子・・・?」
「な~に・・・?」
「あの写真だけで、どうして、あたしだと分かったの?」
「目かな?ふーちゃんの目つきって他の人と違うもん」
「ふ~ん・・・」
「ねぇ、ふーちゃん・・・?」
「ん・・・?」
「今の女の人は誰なの・・・?」
「聞きたい・・・?」
「うん・・・」
「10年前に離婚した妻よ」
年に何度か見かける程度だったのに、今日に限ってあたしとすれ違うなんてね。
しかも、元妻とすれ違う時に、あたしが肩を抱いていた女性が雪子だなんて。
いくら、あたしが信じていないからって、神様も随分と意地悪な遊びをするもんだわ。
玄関の入り口付近はそれなりにびっしりと並んでいるのだが、
少し離れたところはそれほどでもなく、それなりに駐車スペースが目立っていた。
ここのスーパーは、周りが宅地やアパートなどに囲まれている場所にあるので、
自動車で買い物に来る客よりも、徒歩で買い物に来る客の方が多い。
という事は、必然的に駐車場はいつも駐車するスペースがあるという事になる。
そのため、夏樹はよくここのスーパーを利用しているのである。
とはいっても、夏樹が、ここのスーパーを利用するのにはもう1つ理由があった。
そして、その、もう一つの理由である出来事が間もなく夏樹の前に現れるのだが・・・。
夏樹は、雪子の肩を抱くようにしながら駐車場の真ん中を抜けるように歩いて行く。
駐車している自動車のドアを開けて買った荷物を積み込む人たち。
その向こうにある自分の自動車まで歩いて行く人たち。
そして、今からスーパーの玄関へと向かって歩いてくる人たち。
そんな人混みの中を、女同士が絡み合うようにしながら歩いているのだから、
今から買い物をするためにスーパーの方へ向かう人たちには、それなりに目立つらしい。
普段ならすぐ横をすれ違ったとしても、それが夏樹だと気づかなかったかもしれないが、
今日は、女同士が肩を寄せて絡むようにしながら歩いていたからなのだろうか?
こちらに歩いてくる1人の女性の視線に気がついた夏樹は、
自分に向けられている、その冷たい視線の先を見つめながら、
雪子に肩に回した腕を解く事もなく、夏樹を見つめる視線を逸らす事もしないまま歩き続ける。
視線を合わせたまま通り過ぎようとする女性と、
その視線を見つめ返すように通り過ぎようとする夏樹。
まるで映画の1シーンのように、その瞬間だけがスローモーションのように時間が流れていく。
その女性とすれ違った夏樹は、少しだけ瞳を閉じてはみたが、そこに後悔は感じなかった。
女装をするようになった夏樹に気がつく知人はほとんどいない。
それほどに夏樹の変貌ぶりは完璧というか艶やかといっても過言ではないだろう。
ましてや普段から出かける時はマスクをしている夏樹である。
ただ、夏樹がマスクをしているのは別に自分を隠すためではない。
マスクで顔を隠すのにはいくつかの理由がある。
その1つは実際の年齢よりもものすご~く若く見られるのである。
夏樹は、若く見られる事がとても嬉しいみたいで密かに1人で喜んでいるらしい。
そして2つ目の理由は普段からマスクをしていないと、夜ベッドで寝る時に咳が出てしまい、
その咳が止まらなくなってしまうのである。
なぜ、昼間マスクをしていないと寝る時になって咳が出るのか、その理由は分からないが、
咳をする時に時々出る淡が、今でも黒い色をしているので、
夏樹としては、おそらくは若い頃に従事していた仕事の後遺症ではないかと思っている。
夏樹が普段からマスクをしているのは、この、寝る時に出る咳が1番の理由だったらしく、
他のいくつかある理由は、マスクをした後から付けただけのたわいもない理由のようである。
すれ違いが終わるまでの、ほんの数秒の世界の中、
夏樹の視線に、臆びの素振りも見せない視線を返すその女性は、
気丈な強い瞳のまま、振り返ることもせずに真っ直ぐに歩いて行く。
「ねぇ~雪子・・・?」
「な~に・・・?」
「あの写真だけで、どうして、あたしだと分かったの?」
「目かな?ふーちゃんの目つきって他の人と違うもん」
「ふ~ん・・・」
「ねぇ、ふーちゃん・・・?」
「ん・・・?」
「今の女の人は誰なの・・・?」
「聞きたい・・・?」
「うん・・・」
「10年前に離婚した妻よ」
年に何度か見かける程度だったのに、今日に限ってあたしとすれ違うなんてね。
しかも、元妻とすれ違う時に、あたしが肩を抱いていた女性が雪子だなんて。
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