愛して欲しいと言えたなら

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再会

再会・・・その6

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「1人で来たのか・・・?」

「うん・・・」

「雪の中、少しだけ歩くか?」

「うん・・・」

「傘を持ってきてないから少し濡れるわよ?」

「あっ・・・」

「ん・・・?」

「今、ふーちゃん女言葉になった」

「ふふっ、女言葉の方が好きなの?」

「あっ・・・まただ!」

「あはは。でも、けっこう雪が降ってきたわね」

「ふーちゃん、良い匂いがするね」

夏樹は、昔と変わらず話がかみ合わない雪子の頭に手を置くとそっと引き寄せた。
そんな夏樹の仕草を嫌がる様子もなく、甘えるような仕草で身体を預ける雪子。

夏樹は、雪子の頭の上に乗せた手を滑らせながら、彼女の温もりを確かめるように肩に手を回した。
とはいえこの2人、知らない人が見たら仲の良い女友達にしか見えないと思われるのだが・・・。

「あそこのファミレスまで歩くわよ」

「傘があったらよかったね」

「あたしと相合傘してどうすんのよ?」

「ふーちゃんとしか相合傘したことないよ」

ファミレスまでの距離は直線でスーパーの出入り口から約300mくらいはあるだろうか?300m
駐車場の向こう側にはCDレンタルショップや洋服店など何件か店が立ち並んでいる。
その一番右側にそれほど大きくない今流行りのファミレスがある。
夏樹は、雪が降りしきる中を腕を組んで歩きながら雪子とのちょっとした珍事を思い出していた。

確か、12月の中頃だっただろうか?
夏樹は自動車の運転免許を取って、まだ初心者マークが取れなていない頃、
当時、まだ高校2年だった雪子を乗せて、少し街外れの国道バイパスを走っていた。
夜とはいえ、別に深夜というわけではなく、夜の7時を少し回ったあたりである。

その日も、今日と同じように大粒の雪が降っていた。
街の中へ繋がっている国道バイパスが最初に差し掛かる大きな交差点に差し掛かった時、
降りしきる雪で前がよく見えなかったためか、交差点手前の中央分離帯に運転していた車の右側のタイヤを乗り上げてしまったのである。

当時は、今のように反射板が付いているポールとかが立っているわけでなく、
20㎝くらいのコンクリートの石で囲ってそこに土をもっている上に、
何メートルかの感覚で植木が植えてある。そんな感じである。

自動車の右タイヤが、そのコンクリートの石にぶつかった時に、
タイヤが乗り上げたその反動で自動車が大きくバウンドするように弾んだのだが、
その瞬間、夏樹は何処を見ていたかというと、自動車と一緒に弾んでいた雪子の姿であった。

とはいえ、その時の衝撃に自動車が無傷なわけがないわけで、
こちらもご多忙に漏れず、乗り上げた右側のタイヤが見事にパンクしてしまったのである。
という事で、交差点のすぐ近くにあるディスカウントショップの駐車場に急きょ進路を変更。
そのまま、パンクしたタイヤのままのカメさん走りである。
パンクした自動車に走ってほしいと願っても、願う気持ちだけではなんともならない。
なので、とりあえず駐車場の片隅に自動車をとめて歩くことになるのだが・・・。

雪子が言った「相合傘」とは、この時の「相合傘」なのである。
夏樹が、雪子を家まで送るために二人で歩いた時に、
自動車に積んであった1本の傘に入って2人で歩いた時のことであり、
この珍事があった夜が、夏樹と雪子と初めて相合傘をした日であり、
そして、この日の珍事を境に、二人は急速に親密な関係になっていく忘れられない夜でもあった。

「ねぇ~、ふーちゃん?」

「ん・・・?」

「このまま、雪の中で凍死しちゃったらどうする?」

「あい・・・?」

「このまま、凍死しちゃいたいかも・・・?」

「何をおバカなことを言ってるのよ。この距離で凍死するわけないでしょ?」

「ふーちゃん!少しの間なんだから照れちゃダメでしょ?」

「そういう問題なの?」

「うん、そういう問題なの!」

う~ん。あたしとしては、そういう問題じゃないような気がするわ。
確かに、あたしたちって、知らない人から見れば仲の良い女同士に見えるかもしれないけど。
でもね、ちょっと見方を変えれば「そういう関係なの?」っても、見えるんじゃないかしら?

「凍死しちゃいたいかも・・・?」・・・か。
でも、まんざら嫌いじゃないかもね。その言葉って・・・。

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