45 / 386
再会
再会・・・その5
しおりを挟む
裕子は、スマホを耳にあてたまま何が起きたのか考えていた。
それは、夏樹から「会えなくなった」という一方的な言葉と言葉使いにではなく、
夏樹の声が、いつもの女性から裕子の知っている男としての夏樹の声に変わっていたからである。
何が起きたの・・・?どうして、いきなり、男のあなたに戻ったの?
「どうしたんだい・・・?」
聞き覚えぼある声に振り向くと、旦那が、不思議そうな顔で裕子を見ていた。
「えっ・・・?別に、何でもないわよ」
「何でもないって、だって、ほら!スマホ・・・」
「あっ・・・」
裕子は、耳にあてていたスマホを慌ててポケットにしまい込んだ。
「電話、誰からだったの?」
「いいでしょ!そんなのあんたに関係ないでしょ?」
いつもの調子で裕子に怒られた旦那は、これまた、いつもの調子でおどけながら、
駐車場にとめてある車の方へと歩いて行った。
まったく、もう~。どうして、うちの旦那って空気が読めないのかしら?
でも・・・まさかね・・・?
裕子は、ポケットからスマホを取り出して電話をかけてみた。
3回ほどコールする音がなると通話状態になった。
「もしもし、雪子・・・?」
「あっ・・・裕子・・・」
「ねぇ~雪子、今、どこにいるの?」
「今ね、こっち見てるの・・・」
「えっ・・・?何?ってか、誰が?」
「うん、ふーちゃんだよ・・・」
「えっ・・・?ふーちゃんって、ちょっと雪子?何を言ってるの?」
「あとで電話するね・・・。ばいばいね!」
「ばいばいねって、ちょっと、雪子?・・・雪子?」
はぁ~まったく、もう~。あの人があの人なら、雪子も雪子だわ。
どっちも大事な事を言わないで、一方的に電話を切っちゃうんだから。
でも・・・ふーちゃんって・・・?
確か、雪子は今日、旦那さんと一緒に旦那さんの実家に帰ったはずじゃなかったの?
でも、確かに今、雪子はふーちゃんって言ったわよね?
まさか、雪子・・・夏樹さんに会いに行ったってこと?
まさか、嘘でしょ?
いったい、どうして・・・?
いったい、どうしちゃったの、雪子?
あまりに予想外の雪子の行動に、裕子は、驚く感情さえ忘れていた。
誰と話していたのか分からないが、手にしたスマホをバッグの中にしまい込んでいる雪子を、
夏樹は半ばあきれたような顔をしながら見つめている。
そんな夏樹の視線に気がついたのか、雪子は少うつむき加減になったまま立ちすくんでいる。
ふ~ん・・・。困った奴だな、まったく。ってか、ペンギンか、お前は・・・?
その恰好にペンギンの帽子でも被ったら、ペンギンのコスプレに見えるんじゃないのか?
スーパーの玄関付近の真ん中で、立ち止まったまま動かない夏樹の横を、
年末最後の買い物を済ませた客たちが通り過ぎて行く。
そんな買い物客の中には、立ち止まったまま動かない夏樹と雪子の姿を、
不思議そうに見つめながら通り過ぎて行く人もいる。
忙しそうに通り過ぎて行く人たちで混雑している場所なのに、
なぜか、二人だけが別の世界にでもいるみたいに、そこだけ時間が止まっていた。
夏樹の視線を避けるように、うつむき加減だった雪子が意を決したみたいに、
左手でセミロングの髪に指を絡ませるように流すと顔を上げて歩き出した。
真っ直ぐに夏樹を見つめながら歩いてきた雪子だったのだが、
夏樹の前に来ると、また、うつむき加減になってしまう。そんな雪子に夏樹が声をかける。
「来たのか・・・?」
「うん・・・」
「そうか・・・」
「うん・・・」
「腕を組むか・・・?」
「うん・・・」
そう答えると、雪子は夏樹の左腕に右手を絡ませてきた。
夏樹は、うつむいたままの雪子の頭をなでながら玄関の方に視線を移すと、
玄関の広い硝子戸から見える外は、いつの間にか雪景色に変わっていた。
それは、夏樹から「会えなくなった」という一方的な言葉と言葉使いにではなく、
夏樹の声が、いつもの女性から裕子の知っている男としての夏樹の声に変わっていたからである。
何が起きたの・・・?どうして、いきなり、男のあなたに戻ったの?
「どうしたんだい・・・?」
聞き覚えぼある声に振り向くと、旦那が、不思議そうな顔で裕子を見ていた。
「えっ・・・?別に、何でもないわよ」
「何でもないって、だって、ほら!スマホ・・・」
「あっ・・・」
裕子は、耳にあてていたスマホを慌ててポケットにしまい込んだ。
「電話、誰からだったの?」
「いいでしょ!そんなのあんたに関係ないでしょ?」
いつもの調子で裕子に怒られた旦那は、これまた、いつもの調子でおどけながら、
駐車場にとめてある車の方へと歩いて行った。
まったく、もう~。どうして、うちの旦那って空気が読めないのかしら?
でも・・・まさかね・・・?
裕子は、ポケットからスマホを取り出して電話をかけてみた。
3回ほどコールする音がなると通話状態になった。
「もしもし、雪子・・・?」
「あっ・・・裕子・・・」
「ねぇ~雪子、今、どこにいるの?」
「今ね、こっち見てるの・・・」
「えっ・・・?何?ってか、誰が?」
「うん、ふーちゃんだよ・・・」
「えっ・・・?ふーちゃんって、ちょっと雪子?何を言ってるの?」
「あとで電話するね・・・。ばいばいね!」
「ばいばいねって、ちょっと、雪子?・・・雪子?」
はぁ~まったく、もう~。あの人があの人なら、雪子も雪子だわ。
どっちも大事な事を言わないで、一方的に電話を切っちゃうんだから。
でも・・・ふーちゃんって・・・?
確か、雪子は今日、旦那さんと一緒に旦那さんの実家に帰ったはずじゃなかったの?
でも、確かに今、雪子はふーちゃんって言ったわよね?
まさか、雪子・・・夏樹さんに会いに行ったってこと?
まさか、嘘でしょ?
いったい、どうして・・・?
いったい、どうしちゃったの、雪子?
あまりに予想外の雪子の行動に、裕子は、驚く感情さえ忘れていた。
誰と話していたのか分からないが、手にしたスマホをバッグの中にしまい込んでいる雪子を、
夏樹は半ばあきれたような顔をしながら見つめている。
そんな夏樹の視線に気がついたのか、雪子は少うつむき加減になったまま立ちすくんでいる。
ふ~ん・・・。困った奴だな、まったく。ってか、ペンギンか、お前は・・・?
その恰好にペンギンの帽子でも被ったら、ペンギンのコスプレに見えるんじゃないのか?
スーパーの玄関付近の真ん中で、立ち止まったまま動かない夏樹の横を、
年末最後の買い物を済ませた客たちが通り過ぎて行く。
そんな買い物客の中には、立ち止まったまま動かない夏樹と雪子の姿を、
不思議そうに見つめながら通り過ぎて行く人もいる。
忙しそうに通り過ぎて行く人たちで混雑している場所なのに、
なぜか、二人だけが別の世界にでもいるみたいに、そこだけ時間が止まっていた。
夏樹の視線を避けるように、うつむき加減だった雪子が意を決したみたいに、
左手でセミロングの髪に指を絡ませるように流すと顔を上げて歩き出した。
真っ直ぐに夏樹を見つめながら歩いてきた雪子だったのだが、
夏樹の前に来ると、また、うつむき加減になってしまう。そんな雪子に夏樹が声をかける。
「来たのか・・・?」
「うん・・・」
「そうか・・・」
「うん・・・」
「腕を組むか・・・?」
「うん・・・」
そう答えると、雪子は夏樹の左腕に右手を絡ませてきた。
夏樹は、うつむいたままの雪子の頭をなでながら玄関の方に視線を移すと、
玄関の広い硝子戸から見える外は、いつの間にか雪景色に変わっていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。
音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。
格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。
正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。
だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。
「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる