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再会
再会・・・その3
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一年が過ぎるのって早いものね~。12月も、もう大晦日なんだからさ~。
そういえば、裕子が何か言ってたわね?
お正月に会えるとか何とかって・・・。なに考えてるのかしらね?
別に、これといって何が食べたいとか何が欲しいとかってあるわけでもないのだが、
とりあえずは、お正月になるのだから、何か少しは食べ物の備蓄でも?と思いながら
夏樹は、いつものスーパーに来ていた。
今年も、今日で終わりだというのに雪が降る気配がない。
クリスマスには、それなりに雪は降ったのだが、
気がついてみれば、道の片隅に申し訳なさそうに残り雪がひっそりと残っている。
スーパーの外の景色とは反対に、店内は、ここぞとばかりに人、人、人が積もってる。
しかも、その積もりは、好き勝手に動き回っているのである。
とはいえ、もちろん勝手に動き回っているのは買い物に来た人たちなのだから、
自由に動き回るのは当たり前の事なのだが、夏樹には、それが妙におかしく思えた。
しかし、ま~。裕子が、本当に電話をよこすとは思ってなかったわ。
「もしもし・・・?」
「あい・・・?」
「あの・・・えっと・・・」
「あい・・・?」
「いや・・・だから・・・あの・・・」
「あい・・・?」
「ちょっと・・・分かってやってるでしょ?」
「あはは・・・バレた・・・?」
「ん、もう~・・・」
「相変わらず優しい声なのね。どうして、今まで声を聞かせてくれなかったの?」
「えっ・・・?いや・・・あの・・・」
「あんたの声を聞けなくなってから何年が過ぎたの?」
「えっ・・・あの・・・だから・・・」
「あんた、さっきから、えっ?とか、あの、とか、ばっかりだけど何か悪い物でも食べたの?」
「ってか、違うでしょ?普通は、お久しぶりとか、こんにちは!とかから始まるんじゃないの?」
裕子は、昔と変わらない話し方をしてくる夏樹が、今もいてくれたことが嬉しかった。
前置きなしに、いきなり人の心の中に入り込んでくる夏樹の言葉に自然に引き込まれていく。
夏樹と別れてから30年以上も経っているのに、まるで、昨日も話をしていたみたいに、
ほんの数分交わしただけの会話なのに、さっきまでの緊張は、もう、裕子の中から消えていた。
「どうしてよ・・・?」
「どうしてって・・・。だって、あれから、もう30年くらい過ぎてるのよ?」
「だから・・・?」
「ん、もう~。まぁ~いいわ!それより、お正月にそっちに帰るんだけど会えるかしら?」
「誰と会うの・・・?」
「誰とって・・・だから・・・」
「ふふっ・・・言いなさいよ、あたしの名前・・・」
「ん、もう~。相変わらず意地悪な人ね」
「あんた、お正月にこっちに帰ってくるの?」
「うん。ってか、お正月には毎年帰ってるわよ」
「あんたさ、あたしに会うのはいいけど旦那は一緒じゃないの?」
「うちの旦那は送り迎えするだけだから、私を送ったらすぐに帰っちゃうわよ」
「懐かしきアッシーくんをさせてるの?」
「いいのよ。別に、好きで一緒になったわけじゃないし」
「ちょっと、そんなことを言うもんじゃないわよ。旦那が、かわいそうじゃないの?」
「いいのよ。でも、帰るのは私だけだけど、それでもいい?」
「あい・・・?あんたの他に誰かいるの?」
「そうじゃないけど、本当は私じゃなくて雪子って思ったんだけど、今年も、旦那さんの実家にお正月のご挨拶に行くみたいだから」
「あやつ?あやつは、こっちに帰って来たとしても、あたしには会わないわよ」
「どうして?そんなことないと思うわよ」
「それが分かるのよ」
「なんか、雪子と同じようなことを言うのね?」
「ん・・・?」
「雪子も、同じようなことを言ってたから」
「ほらね!あたしの言った通りでしょ?」
「それは、そうなんだけど・・・」
「でも、どうして、あなたも雪子の同じようなことを言うの?」
「前にも言ったでしょ?そういう別れ方だったって」
「確かに、雪子も同じようなことを言ってたけど。でもね、雪子ね、あなたのことを話す時ね、とっても嬉しそうに話すのよ?」
「それは、あたしと同じことを思ってるからじゃないの?」
「同じこと・・・?」
「そうよ。もう、過去の事なのよ。あやつの中では。そして、あたしの中でもね」
「でも、そんなに簡単に割り切れるものなの?」
「きっと・・・あやつにとって簡単な事じゃなかったから・・・。じゃないかしら?」
裕子は、自分が経験出来なかった世界が、夏樹と雪子の二人の心の中の世界にあることに、少しだけ寂しく感じていた。
そういえば、裕子が何か言ってたわね?
お正月に会えるとか何とかって・・・。なに考えてるのかしらね?
別に、これといって何が食べたいとか何が欲しいとかってあるわけでもないのだが、
とりあえずは、お正月になるのだから、何か少しは食べ物の備蓄でも?と思いながら
夏樹は、いつものスーパーに来ていた。
今年も、今日で終わりだというのに雪が降る気配がない。
クリスマスには、それなりに雪は降ったのだが、
気がついてみれば、道の片隅に申し訳なさそうに残り雪がひっそりと残っている。
スーパーの外の景色とは反対に、店内は、ここぞとばかりに人、人、人が積もってる。
しかも、その積もりは、好き勝手に動き回っているのである。
とはいえ、もちろん勝手に動き回っているのは買い物に来た人たちなのだから、
自由に動き回るのは当たり前の事なのだが、夏樹には、それが妙におかしく思えた。
しかし、ま~。裕子が、本当に電話をよこすとは思ってなかったわ。
「もしもし・・・?」
「あい・・・?」
「あの・・・えっと・・・」
「あい・・・?」
「いや・・・だから・・・あの・・・」
「あい・・・?」
「ちょっと・・・分かってやってるでしょ?」
「あはは・・・バレた・・・?」
「ん、もう~・・・」
「相変わらず優しい声なのね。どうして、今まで声を聞かせてくれなかったの?」
「えっ・・・?いや・・・あの・・・」
「あんたの声を聞けなくなってから何年が過ぎたの?」
「えっ・・・あの・・・だから・・・」
「あんた、さっきから、えっ?とか、あの、とか、ばっかりだけど何か悪い物でも食べたの?」
「ってか、違うでしょ?普通は、お久しぶりとか、こんにちは!とかから始まるんじゃないの?」
裕子は、昔と変わらない話し方をしてくる夏樹が、今もいてくれたことが嬉しかった。
前置きなしに、いきなり人の心の中に入り込んでくる夏樹の言葉に自然に引き込まれていく。
夏樹と別れてから30年以上も経っているのに、まるで、昨日も話をしていたみたいに、
ほんの数分交わしただけの会話なのに、さっきまでの緊張は、もう、裕子の中から消えていた。
「どうしてよ・・・?」
「どうしてって・・・。だって、あれから、もう30年くらい過ぎてるのよ?」
「だから・・・?」
「ん、もう~。まぁ~いいわ!それより、お正月にそっちに帰るんだけど会えるかしら?」
「誰と会うの・・・?」
「誰とって・・・だから・・・」
「ふふっ・・・言いなさいよ、あたしの名前・・・」
「ん、もう~。相変わらず意地悪な人ね」
「あんた、お正月にこっちに帰ってくるの?」
「うん。ってか、お正月には毎年帰ってるわよ」
「あんたさ、あたしに会うのはいいけど旦那は一緒じゃないの?」
「うちの旦那は送り迎えするだけだから、私を送ったらすぐに帰っちゃうわよ」
「懐かしきアッシーくんをさせてるの?」
「いいのよ。別に、好きで一緒になったわけじゃないし」
「ちょっと、そんなことを言うもんじゃないわよ。旦那が、かわいそうじゃないの?」
「いいのよ。でも、帰るのは私だけだけど、それでもいい?」
「あい・・・?あんたの他に誰かいるの?」
「そうじゃないけど、本当は私じゃなくて雪子って思ったんだけど、今年も、旦那さんの実家にお正月のご挨拶に行くみたいだから」
「あやつ?あやつは、こっちに帰って来たとしても、あたしには会わないわよ」
「どうして?そんなことないと思うわよ」
「それが分かるのよ」
「なんか、雪子と同じようなことを言うのね?」
「ん・・・?」
「雪子も、同じようなことを言ってたから」
「ほらね!あたしの言った通りでしょ?」
「それは、そうなんだけど・・・」
「でも、どうして、あなたも雪子の同じようなことを言うの?」
「前にも言ったでしょ?そういう別れ方だったって」
「確かに、雪子も同じようなことを言ってたけど。でもね、雪子ね、あなたのことを話す時ね、とっても嬉しそうに話すのよ?」
「それは、あたしと同じことを思ってるからじゃないの?」
「同じこと・・・?」
「そうよ。もう、過去の事なのよ。あやつの中では。そして、あたしの中でもね」
「でも、そんなに簡単に割り切れるものなの?」
「きっと・・・あやつにとって簡単な事じゃなかったから・・・。じゃないかしら?」
裕子は、自分が経験出来なかった世界が、夏樹と雪子の二人の心の中の世界にあることに、少しだけ寂しく感じていた。
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