愛して欲しいと言えたなら

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心の時間

心の時間・・・その16

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「そうなの。雪子にも話したことがあるでしょ?喫茶店での、あの人との最初の出会いの500円玉」

「うん。でも、偶然ってこともあるんじゃない?」

「あの人と同じようなことを言うのね?」

「ふふっ・・・」

「それでね、なんで分かったのって訊いたら、机の上に500円玉があったから言ってみただけって言うのよ」

「裕子は、その前に、なんて言って500円玉にたどり着いたの?」

「私が言ったのは、ちょっと普通ではありえない出逢いだったのって言ったのよ」

「それで、机の上にあった500円玉になったんだ!」

「そうみたい。そのあと、私が自分の住んでいた街の名前を言ってみたの」

「確かめたのね・・・?」

「だって、500円玉よ!500円玉。普通さ、いくら机の上にあったからって言われても、ちょっとって思うじゃない?」

「そりゃそうだ!」

「そうなのよ。だから、500円玉が本当に偶然かどうかって、やっぱり気になるじゃない?」

「でも、裕子、よく自分の住んでた街の名前を教えたね?」

「ま~、とりあえずメールの相手がオカマだから、ある意味安全かな?って、思ったのよ」

「ふふっ・・・それは言えるかも」

「そしたら、地名を答えたのよ。神尾町とか竹野原町とか、ダメ押しが南愛町だったのよ」

「確かに3つとも当てるのは難しいかも」

「でしょ?でもね、そこまでなら、もしかしてのもしかしてとして、万が一の偶然もあるかもしれないし。もしかして、メールの途中にネットで地図とかすぐに検索とかして調べたんじゃないかな?とも思ったのよ」

「なるほど!それはありかも?」

「よね・・・?」

「それじゃ、ふーちゃんだって分かったのって、何だったの?」

「それがね、あの人が、どんなことがあっても、偶然なんてことは絶対の絶対にありえないし、絶対に分かるはずがない、あることを答えたらからなの」

「絶対に分かるはずがない、あること?」

「そうなの。絶対に誰も知らないはずだし、世界中で、私、以外には絶対に誰も答えられない、あること」

「裕子以外には誰も答えられない、あることって?」

「そう。絶対に、私、以外の誰にも答えられない、あることなの。雪子は、何だと思う?」

「う~ん・・・。裕子の誕生日とか?」

「そんなの、あの人が覚えているわけないわよ」

「そんなことないよ。ちゃんと覚えていると思うよ」

「あの人って、昔から、自分にとって1番大切なものしか覚えていない人だから」

「うそ・・・?」

「うそって?何よ・・・?」

「何でもない、何でもない・・・。ふふっ、そうなんだ・・・」

「大丈夫。心配しなくても、あの人は、絶対に、雪子の誕生日は覚えてるから」

「ううう・・・。正解、だったりして・・・」

「ちょっと、何?もしかして、誕生日おめでとうとかって言われたの?」

「ふーちゃんって、そんなの言う人じゃないよ」

「そういえば、雪子の誕生日って、昨日よね?」

「うん・・・」

「ごめん、ごめん。ちょっと、色々考え込んでしまって忘れちゃってたみたい」

「忘れたままでいてもいいよ。だって、これ以上、歳を取りたくないもん!」

「でも、やっぱり覚えてたのね。雪子の誕生日を」

「違うよ。1回聞いたら誰でも忘れないよ。だって、私の誕生日ってクリスマスイブなんだもん」

「う~ん・・・。言われてみれば、確かにそうかも・・・。でもさ~、あの人とのメールって、昨日が初めてだったんでしょ?」

「うん、そうだよ。昨夜が初めてってのは嘘じゃないよ」

「ううう・・・。その正直な告白、ある意味とっても傷つく私だわ」

「どうして、裕子が傷つくの?」

「だ~ってさ、1発目のメールのやり取りで、雪子の誕生日を話したってことでしょ?しかも、30年以上も経ってるっていうのに・・・」

「だから、おめでとうとかって言われてないってば!」

「いいわよ!いいわよ!別に隠さなくても・・・。ああ・・・私、ショック強めかも」

「だから、違うってば。いくつになったの?って、訊かれただけだよ」

「その前に何か付いてたんじゃないの?でしょ?」

「う~ん・・・。今夜はクリスマスイブね!って、付いてたかも」

「あ~ん、もう~!やっぱりね~!」

「でもね、ふーちゃんから届いた最初のメールがそれだったんだよ。久しぶりとか、こんにちは!とかじゃかなくて、いきなりだったから、ふーちゃんらしいな~って思っちゃった」

「最初のメールがそれって・・・。あ~、もう。なんかモグラさんが私においでおいでしてるわ」

「ちょっと、裕子。それより、さっきの話はどうなったの?」
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