愛して欲しいと言えたなら

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心の時間

心の時間・・・その14

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少し俯き加減でテーブルを見つめる裕子を気遣ってか、雪子は窓から見える景色に視線を移した。
喫茶店のマスターが、少し深めのグラスに水を入れて持ってきてくれたので、
裕子は、テーブルにグラスが置かれたのを確認してからコーヒーを頼んだ。

「ちょっと、雪子?」

「な~に?」

「な~にって、今、私が考えてたことが分かったの?」

「どうして?」

「う~ん、なんとなく、そんな気がしたから」

雪子はミルクティーを飲みながら少し微笑んだ。

「やっぱり、その微笑みは分かったってことでしょ?違う?」

「ふふっ・・・分かるわけないと思うけど」

「またまた~」

「う~ん・・・たぶんだけど・・・」

「うんうん・・・」

「ふーちゃんにとってはもう過去のこと・・・なんだと思うんだ」

「過去のこと・・・?それって私たちのことなの?」

「うん。きっと、そうなんだと思う」

「私には、さっぱり、分かんないんだけど」

「きっと、ふーちゃんは、裕子や私に対して恋愛感情っていうのかな?そういう気持ちはないってことじゃないかなって思う」

「いや、だって、それは、私も雪子も今は結婚してるから、そうなんじゃないかしら?」

「そうかな・・・?」

出た!雪子の、自分だけは知ってるぞ!てきな発言。

「ちょっと雪子、自分だけは知ってるは、やめて。ちゃんと説明してよ」

こういう時の雪子って、猫みたいに悪戯っぽい目つきに変わるのよね。
そんでもって、いつも、とんでもないようなことを平気な顔をして言うのよ。

「ねぇ~裕子・・・」

「ん・・・?」

「もし、ふーちゃんに誘われたら、裕子はどうする?」

「えっ・・・?」

「自分は結婚してるからって、それで終わらせること出来る?」

「雪子、それは違うわよ!」

「ん?、何が、違うの・・・?」

「だって、あの人が好きなのは、私じゃなくて雪子なのよ」

「そうじゃなくて。もし、ふーちゃんに誘われたら、結婚してるからとかってことが障害になるかってことよ」

「やっぱり、なるわよ・・・。いくらなんでも、もう若くないんだし。それに家庭だってあるし。雪子はどうなのよ?」

「ならないかも・・・なんちって。ふふっ」

「ちょっと、雪子・・・?」

「嘘よ。でもね、心が動かないかって言えば、それは嘘になるような気がするの」

「うんうん。それは、なんとなく分かる」

「でしょ・・・?だから、もし、ふーちゃんにそんな気があるなら裕子にはメールしないと思うの」

「あ~っ、なんかそれって、ちょっと傷つくかも・・・」

「ふふっ・・・ふーちゃんは自分には、そんな気がないって言いたいんじゃないかな?」

「そっか・・・それで、また、私にメールを・・・」

「ふーちゃんって、二股とかって出来ない人だから」

裕子は、コーヒーを口にしながら何気ない会話を続けた。

「でも、そうかな~?」

「きっと、そうだと思うよ」

「私は違うと思ったけどな~」

「どうして・・・?」

「どうしてって、だから驚いたのよ。どうして、私にメールなんかって」

「ふーちゃん、何か言ってたの?」

「んん・・・もしかして気になる?」

「気にならないよ、別に」

「どうしてよ?もしかしたら、何か言ってたかもしれないのよ?」

「裕子は、昔から嘘が下手だもんね!」

「んもう~、どうして、分かっちゃうのかな~」

「分かるよ。それだけ長く付き合ってるんだから」

「そう?私なんか、未だに雪子の考えてることとか全然分かんないわよ」

「ふふっ・・・そんなことないよ」

「でもね~、もしかしたらって思ったのよね」

「もしかしたらって、ふーちゃんは何も言ってなかったよ」

「そうじゃないの。私はさ、あの人に2度もふられてるじゃない?だから分かるのよ」

「2度もって、普通、自分からそんなこと言わないよ」

「いいのよ!別にホントのことなんだから。とは言っても、少しは傷つくけど・・・」

「ねぇ~、やっぱり、積もるのかな?雪・・・」

雪子が、話を逸らした・・・?
やっぱりね・・・気になるのね。私が、夏樹さんに何を感じたのかって・・・。
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