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心の時間
心の時間・・・その11
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結婚を否定してはいけないと言われても、裕子には、それを肯定する理由が見つからなかった。
「それは仕方がないわよ。そもそも、きっかけが、そういう結婚だったし」
「たとへ、どんなきっかけでも、どんな事情でもよ!絶対に結婚を否定してはダメなのよ」
「あなたはどうなの?結婚を否定したから離婚したんじゃないの?」
「それは違うわね・・・」
「違うって、どういうことなの?結婚した相手が間違ったとかって思ってたからじゃなかったの?」
「確かに、そういうことはあるわね。結婚した時は、まさか、こんな人だったとは思わなかったとかってね」
「でしょ?だから、離婚とかってする人がいるんでしょ?」
「そうかもしれないわね。結婚した時は、何もかもが上手くいってても、時間が経つにつれてお互いの欠点が見えてきたり、魔がさすような浮気なり勤めていた会社を辞めることになって、そのために生活が苦しくなったり、そのことで、ケンカしなくてもいいようなケンカをしたり。ま~、色々あるもの事実ね」
「でしょ?みんな、多かれ少なかれ、結婚した相手が原因で離婚するんじゃないの?」
「そうでもないわよ。自分が悪くて離婚する人もいるのよ」
「中には、そういう人もいるかもしれないけど。どっちにしたって同じようなことなんじゃないの?」
「他の人はどうか知らないけど、あたしは違うわよ」
「どう、違うの・・・?」
「あたしはね、結婚したことや結婚の相手に選んだ妻を、一度だって否定したことはなかったのよ」
「それじゃ、何を否定したから離婚したの?」
「あはは!あたしが離婚したのは、あたしが妻から三下り半を突きつけられたからよ」
「それじゃ、なに?奥さんは一つも悪くなくて、全部、あなた一人が悪いって事なの?」
「そうよ・・・」
「そんなわけないでしょ?私、知ってるのよ。あなたが離婚した理由、知ってるのよ」
「そんなことは、どうでもいいのよ!」
「どうでもよくないわ!」
「でもね、そのことで妻を恨んだり、結婚したことを否定したことなかったわよ」
「どうして・・・?」
「どうしてかしらね?それに、妻と結婚したことも一緒に暮らしていたことも後悔してないのよ」
「それじゃ、それほど好きだったってことなの?」
「そうかもしれないわね・・・。まあ、好きという意味にも色々あるとは思うのよ」
「どういうこと?」
「んなことは、あんたが一番分かってるんじゃないの?」
「えっ・・・?どうして、私が知ってるのよ?」
「だから、あたしとメル友やってることも、あたしのアドレスのことも、あやつに教えたんじゃないの?違う?」
「それは、別にそういうわけってことでもないけど。ちょっと、説明するの難しいけど・・・」
「裕子は、あたしと別れてからも、ずっと、あたしのことが好きだったんでしょ?」
「初めから知ってたくせに、わざと知らないふりしたりしてさ。ってか、それを知ってて訊く。普通?」
「もとい、あたしのことだけが好きだったのよね。あんたは」
「だから、何度も訊かないでよ!なんか、恥ずかしくなるでしょ」
「相手のことを思っての好きと、自分の感情に素直なままの好きとは違うのよ」
「どういう意味なの?」
「簡単に言えば、あんたが、あやつに対してしてしまう行為かしら?」
「私が、雪子に・・・?」
「このまま、何も知らせないままだと雪子がかわいそう。って、思わなかった?」
「うん。だって、それは、雪子の気持とか分かるから・・・」
「でも、それは、あんたがあやつのことが好きだからじゃないのかしら?」
「でも、それと恋人とか夫婦とかは違うんじゃないの?」
「いいえ、同じことよ。あたしの場合も似たような感じだったのかもしれないしね」
「う~ん。ますます、分かんなくなったみたい」
「ふふっ・・・猫が好き、可愛いから、犬が好き、可愛いから・・・。それだけかしら?」
「う~ん、自分が癒されるからとかってこともあるんじゃないかしら?」
「違うわね。そんなのは後からつけた都合の良い理屈でしかないわ」
「う~ん・・・分かるように言ってよ」
「そうね、猫も犬も、もし自分がいなければ・・・。って、ことなんじゃないかしら?」
「飼い主がいなければ不幸になってしまうかもしれないって思うこと?」
「まぁ~、そんな感じかしらね。自分がいなければって考えると心配になってしまうって、思ってしまうんじゃないかしら?」
「でも、それって、人なら愛とか恋とかってことなんじゃないの?」
「だから、さっき言ったでしょ?相手のことを思っての好きと、自分の感情に素直なままの好きとは違うって」
「でも、それって、私の場合はどうなるの?」
「どうって?」
「私が、あなたのことが好きって意味はどっちになるの?」
「それは仕方がないわよ。そもそも、きっかけが、そういう結婚だったし」
「たとへ、どんなきっかけでも、どんな事情でもよ!絶対に結婚を否定してはダメなのよ」
「あなたはどうなの?結婚を否定したから離婚したんじゃないの?」
「それは違うわね・・・」
「違うって、どういうことなの?結婚した相手が間違ったとかって思ってたからじゃなかったの?」
「確かに、そういうことはあるわね。結婚した時は、まさか、こんな人だったとは思わなかったとかってね」
「でしょ?だから、離婚とかってする人がいるんでしょ?」
「そうかもしれないわね。結婚した時は、何もかもが上手くいってても、時間が経つにつれてお互いの欠点が見えてきたり、魔がさすような浮気なり勤めていた会社を辞めることになって、そのために生活が苦しくなったり、そのことで、ケンカしなくてもいいようなケンカをしたり。ま~、色々あるもの事実ね」
「でしょ?みんな、多かれ少なかれ、結婚した相手が原因で離婚するんじゃないの?」
「そうでもないわよ。自分が悪くて離婚する人もいるのよ」
「中には、そういう人もいるかもしれないけど。どっちにしたって同じようなことなんじゃないの?」
「他の人はどうか知らないけど、あたしは違うわよ」
「どう、違うの・・・?」
「あたしはね、結婚したことや結婚の相手に選んだ妻を、一度だって否定したことはなかったのよ」
「それじゃ、何を否定したから離婚したの?」
「あはは!あたしが離婚したのは、あたしが妻から三下り半を突きつけられたからよ」
「それじゃ、なに?奥さんは一つも悪くなくて、全部、あなた一人が悪いって事なの?」
「そうよ・・・」
「そんなわけないでしょ?私、知ってるのよ。あなたが離婚した理由、知ってるのよ」
「そんなことは、どうでもいいのよ!」
「どうでもよくないわ!」
「でもね、そのことで妻を恨んだり、結婚したことを否定したことなかったわよ」
「どうして・・・?」
「どうしてかしらね?それに、妻と結婚したことも一緒に暮らしていたことも後悔してないのよ」
「それじゃ、それほど好きだったってことなの?」
「そうかもしれないわね・・・。まあ、好きという意味にも色々あるとは思うのよ」
「どういうこと?」
「んなことは、あんたが一番分かってるんじゃないの?」
「えっ・・・?どうして、私が知ってるのよ?」
「だから、あたしとメル友やってることも、あたしのアドレスのことも、あやつに教えたんじゃないの?違う?」
「それは、別にそういうわけってことでもないけど。ちょっと、説明するの難しいけど・・・」
「裕子は、あたしと別れてからも、ずっと、あたしのことが好きだったんでしょ?」
「初めから知ってたくせに、わざと知らないふりしたりしてさ。ってか、それを知ってて訊く。普通?」
「もとい、あたしのことだけが好きだったのよね。あんたは」
「だから、何度も訊かないでよ!なんか、恥ずかしくなるでしょ」
「相手のことを思っての好きと、自分の感情に素直なままの好きとは違うのよ」
「どういう意味なの?」
「簡単に言えば、あんたが、あやつに対してしてしまう行為かしら?」
「私が、雪子に・・・?」
「このまま、何も知らせないままだと雪子がかわいそう。って、思わなかった?」
「うん。だって、それは、雪子の気持とか分かるから・・・」
「でも、それは、あんたがあやつのことが好きだからじゃないのかしら?」
「でも、それと恋人とか夫婦とかは違うんじゃないの?」
「いいえ、同じことよ。あたしの場合も似たような感じだったのかもしれないしね」
「う~ん。ますます、分かんなくなったみたい」
「ふふっ・・・猫が好き、可愛いから、犬が好き、可愛いから・・・。それだけかしら?」
「う~ん、自分が癒されるからとかってこともあるんじゃないかしら?」
「違うわね。そんなのは後からつけた都合の良い理屈でしかないわ」
「う~ん・・・分かるように言ってよ」
「そうね、猫も犬も、もし自分がいなければ・・・。って、ことなんじゃないかしら?」
「飼い主がいなければ不幸になってしまうかもしれないって思うこと?」
「まぁ~、そんな感じかしらね。自分がいなければって考えると心配になってしまうって、思ってしまうんじゃないかしら?」
「でも、それって、人なら愛とか恋とかってことなんじゃないの?」
「だから、さっき言ったでしょ?相手のことを思っての好きと、自分の感情に素直なままの好きとは違うって」
「でも、それって、私の場合はどうなるの?」
「どうって?」
「私が、あなたのことが好きって意味はどっちになるの?」
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