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心の時間
心の時間・・・その10
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窓からの向こうに広がる真夜中の景色は黒一色
さすがに、星空だけでは月の明かりには勝てないようである。
ヒーターとストーブで温めた部屋に、冷たい風を入れようと思い窓を少し開けてみた。
いつもメインはストーブなのだが、それでも真夜中になるとストーブだけでは難しいようで、
時々、ヒーターをつけて、部屋の温度を上げなければならない昔ながらの家である。
煙草の煙が消えかかるのを横目で見ながら、窓を閉めるとキーボードに手を添えた。
「裕子、起きてる?」
メールを送信してから、ほんの数分でメールが返ってきた。
「うん、起きてた・・・」
「寒くない・・・?」
「うん、寒くない・・・」
「そっか・・・」
あたしから届いたメールが、嬉しくて嬉しくて仕方ないってすぐに分かっちゃうような言葉で
メールを返してくるんだから、困った子ね。
それと同時に、夏樹のメールが何を意味するのか、裕子にも分かったみたいで、
「そっか・・・」のメールには返信をしてこなかった。
きっと、あたしからの次のメールを待っているのね。
こうなることは分かっていたくせに、雪子にあたしのメルアドを教えちゃうんだから。
バカよね~、裕子って、。昔から、ちっとも変ってないし。
でも、今回は、あたしから言わなきゃダメなんだろうね・・・。きっと・・・。
夏樹は、キーボードのアルファベットを指で弾くとメールの送信ボタンを押した。
「雪子を、許してやってね・・・」
「うん・・・」
すぐに、裕子からメールが届いた。
「これ、あたしの携帯の番号。そんで、こっちがあたしの住んでる住所よ」
「いいの?私に教えても・・・?雪子には教えたの?」
「あやつには、まだ、教えてないわよ。そんなことより、あんたに伝えなきゃいけない言葉があるけど聞く?」
「ううん。言わなくても、分かるから・・・」
「んま~。いつから、超能力者になったのよ」
「でも、どうして、私に電話番号とか住所とかって教えてくれるの?」
「ふふっ・・・女性になった元彼に会いたくなったら、いつでも来なさい」
「いいの?電話しても?それに、会いに行っても・・・いいの?」
「いいわよ・・・」
「雪子は・・・?」
「な~に?あやつのことを心配してるの?」
「そうじゃなくて、雪子には会わないの?」
「どうして・・・?」
「どうしてって・・・。だって・・・」
「あやつにも教えるけど。でもね、会うか会わないかは、あやつが決めることよ」
「なんとなく、雪子に少し冷たくない?」
「そうかしら?」
「そうよ。だって、本当なら私じゃなくて、最初に雪子に教えるべきよ」
「な~に?番号とか住所のこと?」
「うん。だって、雪子が1番、私が2番でしょ?」
「あんた、普通にとんでもないことを言うのね?」
「30年以上もずっと好きでいると、それなりに、抵抗力もついちゃったわよ」
「へ~・・・。あんた、そんなに旦那のことが好きなんだ」
「そんなわけないでしょ?」
「この歳になって1番も2番もないわよ・・・。でしょ?」
「いつも、すぐにそうやって話をはぐらかすのね?」
「何、言ってんのよ。別にはぐらかしてないわよ」
「それじゃ、私が30年以上もずっと好きな人を当ててみてよ」
「ちょっと!ちょっと!あんたには旦那がいるのよ?」
「そんなの関係ないわ・・・」
「関係ないわけがないでしょう?旦那の立場だってあるのよ?」
「そんなの知らないわ・・・」
他の人からみれば、普通に話しているメールのやり取りのように思うかもしれないが、
そんな普通の会話のやり取りの中で並べられていく裕子からの文字を見ていると、
また、夏樹とメールが出来たことが、嬉しくて仕方がない裕子の気持ちが伝わってくることに、
少し微笑む夏樹の視線は、どこかに忘れてきたあの日の二人の影絵を探していた。
「まったく、もう~。でもね、旦那との結婚を否定することだけはしてはダメよ!」
「どうして・・・?」
「あんた。やっぱり、今の旦那との結婚を心のどこかで否定して生きてきたのね」
さすがに、星空だけでは月の明かりには勝てないようである。
ヒーターとストーブで温めた部屋に、冷たい風を入れようと思い窓を少し開けてみた。
いつもメインはストーブなのだが、それでも真夜中になるとストーブだけでは難しいようで、
時々、ヒーターをつけて、部屋の温度を上げなければならない昔ながらの家である。
煙草の煙が消えかかるのを横目で見ながら、窓を閉めるとキーボードに手を添えた。
「裕子、起きてる?」
メールを送信してから、ほんの数分でメールが返ってきた。
「うん、起きてた・・・」
「寒くない・・・?」
「うん、寒くない・・・」
「そっか・・・」
あたしから届いたメールが、嬉しくて嬉しくて仕方ないってすぐに分かっちゃうような言葉で
メールを返してくるんだから、困った子ね。
それと同時に、夏樹のメールが何を意味するのか、裕子にも分かったみたいで、
「そっか・・・」のメールには返信をしてこなかった。
きっと、あたしからの次のメールを待っているのね。
こうなることは分かっていたくせに、雪子にあたしのメルアドを教えちゃうんだから。
バカよね~、裕子って、。昔から、ちっとも変ってないし。
でも、今回は、あたしから言わなきゃダメなんだろうね・・・。きっと・・・。
夏樹は、キーボードのアルファベットを指で弾くとメールの送信ボタンを押した。
「雪子を、許してやってね・・・」
「うん・・・」
すぐに、裕子からメールが届いた。
「これ、あたしの携帯の番号。そんで、こっちがあたしの住んでる住所よ」
「いいの?私に教えても・・・?雪子には教えたの?」
「あやつには、まだ、教えてないわよ。そんなことより、あんたに伝えなきゃいけない言葉があるけど聞く?」
「ううん。言わなくても、分かるから・・・」
「んま~。いつから、超能力者になったのよ」
「でも、どうして、私に電話番号とか住所とかって教えてくれるの?」
「ふふっ・・・女性になった元彼に会いたくなったら、いつでも来なさい」
「いいの?電話しても?それに、会いに行っても・・・いいの?」
「いいわよ・・・」
「雪子は・・・?」
「な~に?あやつのことを心配してるの?」
「そうじゃなくて、雪子には会わないの?」
「どうして・・・?」
「どうしてって・・・。だって・・・」
「あやつにも教えるけど。でもね、会うか会わないかは、あやつが決めることよ」
「なんとなく、雪子に少し冷たくない?」
「そうかしら?」
「そうよ。だって、本当なら私じゃなくて、最初に雪子に教えるべきよ」
「な~に?番号とか住所のこと?」
「うん。だって、雪子が1番、私が2番でしょ?」
「あんた、普通にとんでもないことを言うのね?」
「30年以上もずっと好きでいると、それなりに、抵抗力もついちゃったわよ」
「へ~・・・。あんた、そんなに旦那のことが好きなんだ」
「そんなわけないでしょ?」
「この歳になって1番も2番もないわよ・・・。でしょ?」
「いつも、すぐにそうやって話をはぐらかすのね?」
「何、言ってんのよ。別にはぐらかしてないわよ」
「それじゃ、私が30年以上もずっと好きな人を当ててみてよ」
「ちょっと!ちょっと!あんたには旦那がいるのよ?」
「そんなの関係ないわ・・・」
「関係ないわけがないでしょう?旦那の立場だってあるのよ?」
「そんなの知らないわ・・・」
他の人からみれば、普通に話しているメールのやり取りのように思うかもしれないが、
そんな普通の会話のやり取りの中で並べられていく裕子からの文字を見ていると、
また、夏樹とメールが出来たことが、嬉しくて仕方がない裕子の気持ちが伝わってくることに、
少し微笑む夏樹の視線は、どこかに忘れてきたあの日の二人の影絵を探していた。
「まったく、もう~。でもね、旦那との結婚を否定することだけはしてはダメよ!」
「どうして・・・?」
「あんた。やっぱり、今の旦那との結婚を心のどこかで否定して生きてきたのね」
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