愛して欲しいと言えたなら

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メル友

メル友・・・その17

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とはいえ、ここでメールを返さないと一人で落ち込むんだろうから。
裕子ってさ、普段は強がってるところがあるんだけど、
そのくせ、あたしの前でだけは不思議と従順なのよ。

たぶん、今も、それは変わってないんじゃないかしら?
じゃなきゃ、メールなんてよこすわけないんだし。
それにさ、わざわざ雪子のことまで持ち出してくるなんてさ。

昔から、変わんないわね。
あたしが望むことを探しながら、自分の愛を確かめようするところは、今も変わってないみたい。

「あんね、あたしのことが好きなのに、なんで雪子の名前を持ち出すの?」

「どうしてって言われても、もしかして、連絡とか取りたいんじゃないかなって?」

「誰が・・・?」

「誰がって、話してみたいとかって思わないの?」

「思わないわよ・・・。それとも、思ってるって言って欲しいのかしら?」

「あ~だめ!どう考えても同一人物とは思えないわ!」

「ちょっと、いきなり会話に道草させないでよ」

「ほら?その言い方。どう考えても、女の人とメールしてるとしか思えないのよ」

「だから、女だって言ってるじゃないのよ?」

「違うでしょうが?女の格好をしている男でしょ?」

「いいじゃないのよ、んなことなんてどうだってさ」

「いいじゃないのよって言われても・・・」

「それにさ、万が一、誰かに、あたしとのメールを見られても心配ないでしょ?」

「ま~、確かに、それはそうだけど・・・」

「それにね、あたしがどうとかっていう前に、雪子自身が、あたしと話をしたいなんて思わないと思うわよ」

「どうして?どうして、そう思うの?」

「どうしてって、そういう付き合いだったからよ」

「そんなの分かんないと思うわよ」

「それじゃさ、雪子に何気なく訊いてみたらいいんじゃない?」

「いいの?訊いてみても?」

「別にいいわよ。でも、あたしのことよりも裕子はどうなの?」

「私・・・?」

「そうよ、雪子に何も言わなければ、あたしは裕子だけのメル友なのよ?」

「でも、それでいいの?」

「何を心配してるの?雪子とのことは、もうすでに遠い昔に終わったことなのよ」

「ホントに?もう雪子のことは何とも思ってないの?」

「そんなことよりさ、どうして、裕子は、いつまでもあたしの名前を言わないの?」

「言わないのって・・・それじゃ、あなたのことを名前で呼んでもいいの?」

「ダ~メ!、それよりも、あたしとしてはシチューさんを食べたいんだけど」

「んもう~やっぱり。でも、シチューって言われても、私が作ったって、そっちまで持っていけないわよ」

「ん?作ってくれるの?」

「別に、作るくらいならいいわよ」

「きゃはは!相変わらず優しいのね。シチューはあたしの目の前にあるのよ」

「え===っ?もしかして、作ったの?」

「あら?そんなに意外かしら?」

「うん、意外かも?でも、本当に一人暮らししてるのね?」

「だから、前から言ってるじゃないのよ?」

「だって、離婚したって、すぐに別の女がいるって思うじゃない?」

「んなバカな?もう女には興味なんてないわよ」

「やっぱり、女じゃなくて男が好きになっちゃったの?」

「違うっちゅ===の!男にはもっと興味がないわよ」

「えっ?男にも女にも興味がないって、もしかして、もう機能しなくなったとかって?」

「きゃはは!んなわけないでしょ?そうじゃなくて、もう恋愛に興味がないってことよ」

「あ~ビックリした」

「そんなにビックリするほどのことでもないでしょ?」

「だって・・・。でも、あなたが自分でお料理とかしてるなんて、な~んかとっても不思議ね」

「そうかしら?ってか、お腹が減ったからシチュー食べるわね?」

「うん、雪子のことは少し考えてみるね」

「あやつのことより、あやつに、あたしのことを話した後の裕子の方が心配になっちゃうから、よく考えてから決めなさい」

いま・・・あやつ、って言った。・・・。
いま・・・雪子のことを、あやつ、って言った・・・。
裕子は、スマホのメールの画面を閉じながら、少しだけ寂しそうに瞳を閉じた・・・。

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