愛して欲しいと言えたなら

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メル友

メル友・・・その15

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裕子が言うように、確かに、雪子はのんびり屋さんである。
話し方もそうだし、訊き方もそうなのである。

高校を卒業して自動車の免許をとってから一般公道で自動車を運転していた時である。
何処にでもあるような農道といわれる片道一車線の平凡な道を、制限速度を守りながら自動車を走らせていた時に白バイのお巡りさんに止められた事があった。

雪子は自分はちゃんと制限速度を守って走っていたのに、どうして白バイに止められたのだろうと思っていたら、白バイのおじさんがバイクを降りて雪子の方に近づいてきて「少し遅すぎます、もう少し速度を上げて走ってもらわないとかえって危険ですよ」と、注意されてしまったくらいなのである。

というのは制限速度40キロの道を20キロ以下で走行していたらしいのだ。
確かに制限速度を守ってはいるのだが、どうも、一般的な制限速度と雪子が考える制限速度とは少し違うようなのである。それ以来、雪子は自動車を運転する事を遠慮するようになったのだが。

そのことを裕子が訊いてみると「だって危ないよ」・・・なのだそうである。
いったい、何が危ないのか分からないのだが。
このように、何につけても、のんびり屋さんなのが雪子なのである。

これはこれで、その人それぞれの生まれ持った性格といえばそれまでなのだが、
裕子には、どうしてもそうは思えないところがあった。
というのは、雪子が、あの人と付き合っていた時は、
しょっちゅう喧嘩をしていたみたいだったし、
中には、1週間に一回は決まって喧嘩をしていたという時期さえもあったというのである。

あの、のんびり屋さんの雪子が、喧嘩?
はじめは信じられなかった裕子だったのだが、どうやら嘘ではないらしい。

それを、時々、雪子から聞かされていた裕子は、
この二人は、この先、きっと結婚するんだろうな・・・そんな風に思っていた。
もしかして、あの人が裕子と付き合うようになったのは・・・
いえ、裕子と付き合うより前、あの500円の時から物語は始まっていたのかもしれない。

今でも信じられない、裕子がとった不可解な行動である、あの時の500円玉は、
二人の赤い糸の始まりであり、あの人と雪子は初めから出会う運命だったのかもしれないと、
裕子は、嫉妬やあきらめよりも、人の縁とは不思議なものだなと思っていたものである。

「ねぇ~裕子?なに一人でニヤニヤしてるの?」

「えっ・・・?」

「もしかして、私の旦那さんのことで、何か、私の知らない情報でも手に入れたの?」

「どうして?」

「だって、さっきから、私が旦那さんとうまくいってるの?とかって訊くし」

「ふふっ・・・。違うわよ」

かといって、関連性がないかといえば、決して、そうとは言い切れないのよね。
私としては、雪子が付き合ってきた男性や、ある程度の日常はそれなりに知ってるつもりだし、
あの人と別れた後、雪子が何人かの男と付き合ったことは付き合ったのだが・・・。

それは恋人、いやカップル、いや、それ以前に付き合うという言葉が当てはまるとは、
到底思えないような、どう説明をすれば分かるだろうか?
ようは、男の側の方が、何となく付き合ってる彼女がいると、
勝手に勘違いしているとでも言った方が分かりやすいだろうか?

雪子は、どちらかというと、一人でいる方が好きなタイプだし、たとへ付き合っているとしても、
あっちの方はおろかキスさえしないのだから。どうみても付き合ってるとは言えないような・・・
そんな感じの、少し変わった付き合いだったのである。

それに、今の旦那さんにしたってそうだし。
だって、18年以上も今の旦那さんとあっちの方はご無沙汰だなんてさ。
雪子のことを何も知らない人が聞いたら、いつも、のんびり屋さんの雪子だから、
ま~そうかもしれないわね。と、納得の一つもするかもしれないけどさ。

でも、あたしとしては、そうは問屋はおろさない!なのよね。
なにせ、あの人と付き合ってた頃の雪子は、
いつもの、あの、のんびり屋さんの雪子とは到底考えられないくらい、
毎日のようにやりまくってたのを、私は、知っているのである。

まるで、あの人以外の他の人の前では、猫をかぶってるとしか思えない。
雪子を知ってる私としては、時々、そんな風に思えてしまうわ。
あれ?そういえば、雪子が、今の旦那さんと結婚を考えた時期って・・・確か・・・まさかね。

「ねぇ~、裕子?」

「えっ?何?」

「何か、私に隠してることな~い?」

だから、やめんかい!その猫なで目線で私を見るのは・・・。
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