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メル友

メル友・・・その12

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待ち合わせまでは、まだ時間がある。
というより、今日は、裕子の方が待ち合わせの時間よりも2時間も早く着いていた。
裕子は、昨夜のメールのやり取りを思い出しながらコーヒーを飲んでいるのだが、
まさか、今更になって、もう一度、自分の名前を呼ばれるとは思ってもみなかった。

両肘をテーブルにつけてコーヒーカップを持つ裕子がいる場所は、
今では、ほとんど見かけることもない、昔ながらの懐かしい感じがする喫茶店である。

「あの人、怒ってないかしら?」

彼からの、いや、彼女からの、どっちでもいいことなのだが、
あの人からのメールのあと、返信しなかったから・・・。
いえ、違うわ。返信しなかったんじゃなくて返信が出来なかったのよ。

だって、なんて返信したらいいっていうのよ?
懐かしいと言えば、確かに懐かしくもある。
嬉しいと言えば、確かに嬉しくもあるし、ドキッとしなかったと言えば、それ嘘になる。

でも、まさかね~。私だって、思ってもみなかったわよ。
ほんの少しだって、そんな出会いがあるなんて、想像さえしてなかったのに。
ってか、普通ありえると思う?どう考えたってありえないわよね?

とはいっても、やっぱり、心のどこかで・・・もしかしたらって?
もし、メル友を探しているうちに。もしかしたら、偶然、あの人と再会したりして?
な~んて考えなかったと言えば嘘になるかも・・・う~ん。

違うわ!そこじゃないわよ!なんでオカマになってるわけ?
いや、オカマじゃなくて女装家・・・あれ?違うわね、確か女性化って言ってたわよね?
ってか、そんなのはどうでもいいけど、なんで女になってるのよ?

普通、ありえないでしょ?んなことなんてさ・・・絶対にありえないわよね。
もしかしてネカマなのかしら?でも、写真を見た時は確かに女性にしか見えなかったし。
んでなくても、普通にスカート履いてたし・・・う~ん。

でも、確かにそうよね。どうして見ず知らず?だったはずのメールのお相手と、
自然にメールで話が出来ていたのかとかって、私も、ちょっと不思議だったんだけど。
考えてみれば、普通に話せた時点で気がつくべきだったわ・・・もしかしてって。

カップの中のコーヒーをスプーンでかき回しながら、ため息をついてしまう裕子である。

裕子が待ち合わせをしている相手というのが、何のことはない、彼女の親友である雪子なのだが。
今、雪子を待っているこの喫茶店も、実を言うと、雪子のお気に入りの喫茶店なのである。

雪子は、今でもそうなのだが、昔から喫茶店で一人の時間を過ごすのが好きな女性である。
彼女は言うには、喫茶店で過ごす時間や雰囲気が好きらしいのである。

雪子に、言うべきだろうか?
それとも、何も言わないで、あの人のことは・・・私だけの・・・。どうしたらいいのかな?
でも、もし、あの人と再会したことを話したら、あの頃のように・・・
また、雪子に、あの人を取られちゃうのかな?
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