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潜む殺意

潜む殺意・・・その2

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倉根は玄関のノブを手前に引いてそっと家の中を覗いてみる。

「先輩、誰もいないですよ?」

「ん?そ・そうだな・・・」

そう言葉を返す倉根に後輩の警察官はちょっと笑いをこらえてみせる。

「な・なんだよ?」

「だって先輩ってば、なんかこれからこの家に空き巣にでも入るみたいな感じで覗いてたから」

「そうは言っても人の家だからな。やっぱ遠慮っていうか気を遣うっていうか」

「またまた」

「なんだよ?」

「もしかしからいるんじゃないかって思ってるんじゃないんですか?」

「いるって・・・誰がいるっていうんだよ?」

「ほら?ここで殺された女の人とか。もしかして、まだここの家で暮らしていたりして?」

「おいおい、馬鹿な事を言うんじゃないよ!ってか、お前は幽霊とかって怖くないのか?」

「全然!」

「全然って、全然怖くないっていうのか?」

「怖いも怖くないも、幽霊なんているわけないじゃないですか?」

「へっ?」・・・後輩君?・・・そうくるわけ?

「もしかして、先輩?先輩って幽霊が怖いとかって?」

「そんな事を言ったって幽霊っているんじゃないのか?」

「そうかな?」

「そうかな?って、だって、ほら、よく心霊動画とかってあるだろ?」

「あははっ、あれは作りものですよ」

「そうかな?僕にはそうは見えないけどな~」

「まあ、幽霊がいたとしても全然大丈夫ですよ!」

「どうして?」

「だって、しょせんは幽霊ですよ?もともとが透明なんだから突然出てきて驚かす程度くらいしか出来ないですよ」

いや・・・お前は知らない・・・。
飛ぶんだよ!飛ぶの!分かる?飛んでくるんだよ!
しかも、プラスチックじゃないんだぞ?
陶器だぞ?あの重い陶器が飛んでくるんだぞ?しかも、物凄い勢いで飛んでくるんだぞ?

とはいっても、ここで後輩にあやねの家で起きた怪奇現象の事を言ったところで信じないだろうし
それどころか、あやねさんって誰ですか?な~んて、変に勘繰られてもなんか困るような。
んでもって、僕にも紹介して下さいよ~。な~んて言われたらこれまた大変っていうかなんていうかだし。

誰がお前なんかにあやねさんの可愛いお尻を見られてたまるもんか・・・いや、そうじゃなくて
いやいや、そうじゃなくてじゃなくて、そうなんです!うん!間違ってないと思う。

だ~って、あのショートパンツの切れ込みから、あやねさんの可愛いお尻が丸見えに・・・あっ。
いかん!いかん!今は仕事に集中しなくては・・・
でも、こいつにあやねさんの可愛いお尻は見られたくない!よし!

「さあ、仕事に集中するぞ!」

倉根はそう言って玄関の中に入る。
玄関の中に立ち止まって見える家の中は真っ直ぐに伸びる廊下はどこか殺風景に感じる。
二階に通じる階段は廊下の奥側から手前側へと設置されているらしく階段の上り口がこの家の作りの起点になっているらしい。

そのため、階段の上り口に立つと、そこからバスルーム、吹き抜けのリビング、
そして、その中にお洒落なカウンター付のキッチンスペースが見える。

あやねさんの言う通りだ。
倉根の視線の中に映る家の中はリビングもキッチンも整理整頓がきちんとなされている。
おそらく、あやねの言う被害者のパートナーが家の中の掃除も任されていたのだろう。

ここで倉根はある違和感を覚えた。
あれ、おかしいな?被害者のパートナーが家の中の掃除を任されていたのなら、
どうして、家のいたるどころに男の指紋が残っているんだろう?
パートナーが掃除をしていたのなら、当然、拭き掃除もしているはずなのだが・・・。

う~ん・・・まあ、僕の頭では考えても無理っぽいかな?
そう小さく呟いて殺害現場である2階へ上がろうとした時、どこからか女性の笑い声が聞こえた。

マジですか===っ!
その瞬間、伝わるはずのない冷たい汗の背中を流れて落ちる感覚が倉根の脳裏を濡らしていた。

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