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潜む殺意
潜む殺意・・・その1
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そろそろ衣替えの季節がお顔を出し始める9月の中を過ぎる頃になると
梅雨を忘れてしまうような晴天続きのお天気の方も少し気まぐれ癖がうずき始めるらしく、
青空だった朝の空も、見えなかった雲たちがいつの間にか寄り合い会議の準備を始めている。
(もち!ひとりで行くんでしょ?)なんて、行けるわけがないでしょうが!
ましてや、あやねさんのところで心霊現象を目の当たりにした僕としては尚更無理ですって!
という事で、倉根は今年配属されたばかりの新人の警察官を誘っての現場検証である。
今回、倉根に同行しているのが、なぜ?警察官なのかというと、他に誰もいなかったから。
というより、今回の事件に不可解な箇所があるなどと、事件の捜査に当たっている同僚には。
なので、もう一度検証をとは、とてもじゃないが言い出せるような雰囲気ではないのである。
なにせ、今、捕まってる想定犯人を確定という事件解決が目の前に迫っているのだから
ここにきて、実は・・・などと、地雷を踏む勇気は倉根には備わっていないのである。
そこで、同じ高校の出身で、昔から知っている後輩を選んだのだが
これにはこれで、それなりに理由のひとつふたつはあるにはある・・・らしい。
ひとつは口が堅い・・・というより、先輩の命令に一番従いやすい存在である。
ふたつには、新米ということなので、事件の場数は皆無である。
最後に、殺人現場に心霊現象という可能性を新米警察官の彼はまだ知らない・・・である。
「先輩、どうして被害者の自宅に?もう、犯人が捕まってるんじゃないんですか?」
「うん・・・まあ、それはそうなんだが・・・」
「なるほど、証拠固めですね?」
「いや・・・まあ・・・」
「決定的な証拠を先輩が見つけて・・・んもう、先輩って抜け目がないですね!」
「そういうわけでもないんだが・・・」
倉根の後輩である新米警官は、刑事の仕事の体験が出来るとして張り切っているらしいのだが。
倉根の方としては、まさか、もしかして幽霊が出るかもしれないから・・・とは言えないわけで、
そうじゃなくても、あやねの家でのポルターガイストを目の当たりにしている以上、
とてもじゃないが殺害現場である被害者の家に一人で行くなど出来るはずもないのである。
「先輩、ほら、見えてきましたよ!」
「うん、そうみたいだな」
「あそこの家であったんですよね?」
「まあな・・・」
「あの家の中で人が殺されたんですよね?」
おおお===い!言うんじゃない!
そういう事を言うんじゃないよ!・・・とは、後輩の手前、倉根は声を大にしては言えない。
なので、「あんまり、そういう事を言うもんじゃないんだよ」と、小声で諭すようにの倉根。
それでも、ただ単に殺人事件があった家というだけであれば、
それはそれで、それなりに割り切ってという考え方も出来るのではあるが、
見たのである・・・。体感したのである・・・。しかも倉根の目の前で・・・である。
とはいっても、こちらもそれだけの事であれば、それはそれで結びつく事もなかったのだが。
倉根には今も聞こえてくるのである。・・・あやねの、あの、ひと言が・・・。
「もち!ひとりで行くんでしょ?」・・・の言葉が、どこからか聞こえてきてしまうのである。
どこにでも見受けられる住宅街の風景。
そして、その風景の中に普通に溶け込んでいるお庭のある2階建ての住宅。
ところが、今の倉根にはそうは見えていないらしい・・・。
あやねの言ったあの言葉が声になって悪魔の手招きのように聞こえてしまう倉根にとっては
倉根の視界に映る被害者の家が、まるでホラー映画に出てくる幽霊の住む家のように見えてきてしまうのである。
「ねえ、先輩?」
「ん?どうした?」
「もしかして、まだ、いるんですかね?」
「いるって、誰が?旦那さんは海外に行ったから今は誰も住んでいないんだよ」
「違いますってば!そっちじゃなくてこっちの方ですってば!」
そっちじゃなくてこっちって、それって・・・どっちなの?・・・とは、訊けない倉根。
「変な事ばっかり言ってないで入るぞ!一応、現場検証なんだから真面目に仕事をしなきゃ駄目だからな!」
と、先輩らしく冷静さを装いながら玄関のノブに手をかけた瞬間、耳元で聞こえてくる囁き声。
「もち!ひとりで行くんでしょ?」に、思わず振り返ってしまう、ちょっと臆病な今日の倉根であった。
梅雨を忘れてしまうような晴天続きのお天気の方も少し気まぐれ癖がうずき始めるらしく、
青空だった朝の空も、見えなかった雲たちがいつの間にか寄り合い会議の準備を始めている。
(もち!ひとりで行くんでしょ?)なんて、行けるわけがないでしょうが!
ましてや、あやねさんのところで心霊現象を目の当たりにした僕としては尚更無理ですって!
という事で、倉根は今年配属されたばかりの新人の警察官を誘っての現場検証である。
今回、倉根に同行しているのが、なぜ?警察官なのかというと、他に誰もいなかったから。
というより、今回の事件に不可解な箇所があるなどと、事件の捜査に当たっている同僚には。
なので、もう一度検証をとは、とてもじゃないが言い出せるような雰囲気ではないのである。
なにせ、今、捕まってる想定犯人を確定という事件解決が目の前に迫っているのだから
ここにきて、実は・・・などと、地雷を踏む勇気は倉根には備わっていないのである。
そこで、同じ高校の出身で、昔から知っている後輩を選んだのだが
これにはこれで、それなりに理由のひとつふたつはあるにはある・・・らしい。
ひとつは口が堅い・・・というより、先輩の命令に一番従いやすい存在である。
ふたつには、新米ということなので、事件の場数は皆無である。
最後に、殺人現場に心霊現象という可能性を新米警察官の彼はまだ知らない・・・である。
「先輩、どうして被害者の自宅に?もう、犯人が捕まってるんじゃないんですか?」
「うん・・・まあ、それはそうなんだが・・・」
「なるほど、証拠固めですね?」
「いや・・・まあ・・・」
「決定的な証拠を先輩が見つけて・・・んもう、先輩って抜け目がないですね!」
「そういうわけでもないんだが・・・」
倉根の後輩である新米警官は、刑事の仕事の体験が出来るとして張り切っているらしいのだが。
倉根の方としては、まさか、もしかして幽霊が出るかもしれないから・・・とは言えないわけで、
そうじゃなくても、あやねの家でのポルターガイストを目の当たりにしている以上、
とてもじゃないが殺害現場である被害者の家に一人で行くなど出来るはずもないのである。
「先輩、ほら、見えてきましたよ!」
「うん、そうみたいだな」
「あそこの家であったんですよね?」
「まあな・・・」
「あの家の中で人が殺されたんですよね?」
おおお===い!言うんじゃない!
そういう事を言うんじゃないよ!・・・とは、後輩の手前、倉根は声を大にしては言えない。
なので、「あんまり、そういう事を言うもんじゃないんだよ」と、小声で諭すようにの倉根。
それでも、ただ単に殺人事件があった家というだけであれば、
それはそれで、それなりに割り切ってという考え方も出来るのではあるが、
見たのである・・・。体感したのである・・・。しかも倉根の目の前で・・・である。
とはいっても、こちらもそれだけの事であれば、それはそれで結びつく事もなかったのだが。
倉根には今も聞こえてくるのである。・・・あやねの、あの、ひと言が・・・。
「もち!ひとりで行くんでしょ?」・・・の言葉が、どこからか聞こえてきてしまうのである。
どこにでも見受けられる住宅街の風景。
そして、その風景の中に普通に溶け込んでいるお庭のある2階建ての住宅。
ところが、今の倉根にはそうは見えていないらしい・・・。
あやねの言ったあの言葉が声になって悪魔の手招きのように聞こえてしまう倉根にとっては
倉根の視界に映る被害者の家が、まるでホラー映画に出てくる幽霊の住む家のように見えてきてしまうのである。
「ねえ、先輩?」
「ん?どうした?」
「もしかして、まだ、いるんですかね?」
「いるって、誰が?旦那さんは海外に行ったから今は誰も住んでいないんだよ」
「違いますってば!そっちじゃなくてこっちの方ですってば!」
そっちじゃなくてこっちって、それって・・・どっちなの?・・・とは、訊けない倉根。
「変な事ばっかり言ってないで入るぞ!一応、現場検証なんだから真面目に仕事をしなきゃ駄目だからな!」
と、先輩らしく冷静さを装いながら玄関のノブに手をかけた瞬間、耳元で聞こえてくる囁き声。
「もち!ひとりで行くんでしょ?」に、思わず振り返ってしまう、ちょっと臆病な今日の倉根であった。
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