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消えていくトリック
消えていくトリック・・・その18
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「ふふっ。気が付いたようね?」
あやねはそう言いながら少し笑みを浮かべてコーヒーに口をつける。
「あの、それじゃ、もし、指紋を残していたらどうなるんでしょうか?」
「それこそ、今捕まってる人が犯人ってなるんじゃない?」
「ですよね・・・。あれ?でも、それじゃ、どっちに転んでも男が犯人になっちゃうじゃないですか?」
「まあね」
「それじゃ、指紋があってもなくても結果は同じになるのだから、そこは気にしなくてもいいのではないでしょうか?とはいえ、あやねさんの言うように指紋が残っていれば確実性は高まるのは間違いないとも思いますけど」
「拭き残しみたいな箇所に指紋をそっと残しておけば尚更」
「ですよね!」
と、何に満足しているのか分からないが、倉根はひとり納得しているのを可愛らしい笑みで眺めているあやねである。
「でも、どうして、あやねさんは指紋を残しておけばって思ったんですか?」
「およっ?」
「へっ?」
「あたしが、それに気が付いちゃったじゃない?」
「いや、それはあやねさんだからですよ!」
「何言ってんのよ!ちょっと勘が鋭い刑事さんが一人でもいたら疑問を持つわよ。ある違和感にね!」
「ある違和感・・・ですか?」
「そっ!被害者の家の中に残されていた、ある違和感に」
「あの・・・それって・・・」
「今捕まってる人ってさ、頭が良い人?それとも、計画性がある人?それとも?」
「どちらかというと、煮え切らないというか、何も考えていないというか・・・という感じですかね」
「まあ、鈍くさいってやつね」
「ええ、言い方は悪いですけど、そんな感じですけど、それが何か関係あるんでしょうか?」
「ちぐはぐなのよ!ち・ぐ・は・ぐ・。分かる?」
「いや~・・・そう言われましても」
「事件現場の指紋、そして、玄関のドアの内側だけの指紋。この、どちらにもまったく指紋が残っていない。んで、今捕まってる人の性格。これを比べてみたら?」
「あっ!」
「勘の鋭い刑事さんならここに違和感を抱くんじゃないかしら?」
「確かに!言われてみれば確かにそうです。と言いますか、そうでした!」
「今捕まってる人が犯人じゃないっていう状況証拠になるもんね!」
犯人ではないという状況証拠?・・・またまた、あやねさん語録が出た!
「でも、犯人である状況証拠の方が遥かに勝っているので、その一点で覆すのはちょっと難しいような気がします」
「角度の誤差。さっき説明したじゃない!もう忘れたの?」
「いや~そう言われましても・・・ははは」
「今、指摘した違和感を起点に捜査を進めていくとしたらどうなると思う?」
「どうなると言われましても・・・」
「あ~ん、まったくもう!ひとつの違和感がもうひとつの違和感へと引き寄せて行くの。そして、その次の違和感へ、そして、また、その次の違和感へって道が作られていくのよ」
「はあ・・・」
「そうやって、ひとつ、またひとつって辿っていくうちに見つからなかった証拠へとたどり着いて行くの。ひとつの違和感がひとつの状況証拠を消していくの。分かる?」
「そうは言われましても・・・」
「まったくもう!ひとつの違和感が犯人ではないという状況証拠を生み出すとね、犯人であるという状況証拠がひとつ消えちゃうの。これを繰り返して行けば?」
「あっ!なるほど!」
「状況証拠ってね、人間が都合よくつじつまを合わせて生み出した産物に過ぎないの。それなら、その逆をすれば、その生み出された状況証拠は消えちゃうってわけなのよ」
なんと強引な語録合わせ・・・とはいえ、間違ってはいないのではないだろうか?
というか、もはや冤罪回避が不可能ではないだろうかと思っていた状況だったはずなのに
針の穴よりも遥かに見えない微かな綻び、その一点を見抜いていくあやねの洞察力に倉根はただただ驚くばかりであった。
何よりも、動いていないのである。
あやねは、座っているソファーから一歩も動いていないのである。
あっ、鉢植えの皿を直す時とぬいぐるみを隣の部屋の移すのにちょっとだけ動いたけど・・・
とはいえ、倉根からの話を聞いただけで、その他からの情報も何一つない状態なわけで
その上、倉根が訪ねてきてからまだ1時間も経っていないのだから、倉根が驚くのも無理はないのかもしれない。
あやねはそう言いながら少し笑みを浮かべてコーヒーに口をつける。
「あの、それじゃ、もし、指紋を残していたらどうなるんでしょうか?」
「それこそ、今捕まってる人が犯人ってなるんじゃない?」
「ですよね・・・。あれ?でも、それじゃ、どっちに転んでも男が犯人になっちゃうじゃないですか?」
「まあね」
「それじゃ、指紋があってもなくても結果は同じになるのだから、そこは気にしなくてもいいのではないでしょうか?とはいえ、あやねさんの言うように指紋が残っていれば確実性は高まるのは間違いないとも思いますけど」
「拭き残しみたいな箇所に指紋をそっと残しておけば尚更」
「ですよね!」
と、何に満足しているのか分からないが、倉根はひとり納得しているのを可愛らしい笑みで眺めているあやねである。
「でも、どうして、あやねさんは指紋を残しておけばって思ったんですか?」
「およっ?」
「へっ?」
「あたしが、それに気が付いちゃったじゃない?」
「いや、それはあやねさんだからですよ!」
「何言ってんのよ!ちょっと勘が鋭い刑事さんが一人でもいたら疑問を持つわよ。ある違和感にね!」
「ある違和感・・・ですか?」
「そっ!被害者の家の中に残されていた、ある違和感に」
「あの・・・それって・・・」
「今捕まってる人ってさ、頭が良い人?それとも、計画性がある人?それとも?」
「どちらかというと、煮え切らないというか、何も考えていないというか・・・という感じですかね」
「まあ、鈍くさいってやつね」
「ええ、言い方は悪いですけど、そんな感じですけど、それが何か関係あるんでしょうか?」
「ちぐはぐなのよ!ち・ぐ・は・ぐ・。分かる?」
「いや~・・・そう言われましても」
「事件現場の指紋、そして、玄関のドアの内側だけの指紋。この、どちらにもまったく指紋が残っていない。んで、今捕まってる人の性格。これを比べてみたら?」
「あっ!」
「勘の鋭い刑事さんならここに違和感を抱くんじゃないかしら?」
「確かに!言われてみれば確かにそうです。と言いますか、そうでした!」
「今捕まってる人が犯人じゃないっていう状況証拠になるもんね!」
犯人ではないという状況証拠?・・・またまた、あやねさん語録が出た!
「でも、犯人である状況証拠の方が遥かに勝っているので、その一点で覆すのはちょっと難しいような気がします」
「角度の誤差。さっき説明したじゃない!もう忘れたの?」
「いや~そう言われましても・・・ははは」
「今、指摘した違和感を起点に捜査を進めていくとしたらどうなると思う?」
「どうなると言われましても・・・」
「あ~ん、まったくもう!ひとつの違和感がもうひとつの違和感へと引き寄せて行くの。そして、その次の違和感へ、そして、また、その次の違和感へって道が作られていくのよ」
「はあ・・・」
「そうやって、ひとつ、またひとつって辿っていくうちに見つからなかった証拠へとたどり着いて行くの。ひとつの違和感がひとつの状況証拠を消していくの。分かる?」
「そうは言われましても・・・」
「まったくもう!ひとつの違和感が犯人ではないという状況証拠を生み出すとね、犯人であるという状況証拠がひとつ消えちゃうの。これを繰り返して行けば?」
「あっ!なるほど!」
「状況証拠ってね、人間が都合よくつじつまを合わせて生み出した産物に過ぎないの。それなら、その逆をすれば、その生み出された状況証拠は消えちゃうってわけなのよ」
なんと強引な語録合わせ・・・とはいえ、間違ってはいないのではないだろうか?
というか、もはや冤罪回避が不可能ではないだろうかと思っていた状況だったはずなのに
針の穴よりも遥かに見えない微かな綻び、その一点を見抜いていくあやねの洞察力に倉根はただただ驚くばかりであった。
何よりも、動いていないのである。
あやねは、座っているソファーから一歩も動いていないのである。
あっ、鉢植えの皿を直す時とぬいぐるみを隣の部屋の移すのにちょっとだけ動いたけど・・・
とはいえ、倉根からの話を聞いただけで、その他からの情報も何一つない状態なわけで
その上、倉根が訪ねてきてからまだ1時間も経っていないのだから、倉根が驚くのも無理はないのかもしれない。
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