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消えていくトリック
消えていくトリック・・・その14
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「あの・・・どうして影猫みたいな秘書って分かるんですか?それと、仕事が出来る召使とかってのも・・・」
「従順だから」
「いや、あの・・・だから、どうしてそれが分かっちゃうのかな~?ってとこが・・・」
「こういうタイプの完全犯罪ってね、普通の完全犯罪とは少し違っててね。余程の信頼がないと出来ないものなの」
「信頼関係ですか?あの、それって、被害者の女性がその真犯人である彼女に対しての信頼ということなのですか?」
「逆よ!逆っ!」
「えっ?でも、それじゃ、なんか変じゃないですか?」
「どうして?」
「だって、被害者の女性は自分を殺して欲しいって彼女に頼んだわけでしょ?それだったら、信頼している方は被害者の女性で信頼されている方が加害者の彼女ってことになると思うんですけど」
「普通ならね」
「ですよね?」
「きっと、名探偵さんでも、あんたと同じように考えると思うわよ」
「名探偵だなんて、はははっ。・・・はい?ってか、違うんですか?」
「これってさ、何をしているところだと思う?」
そう言って、あやねはテレビ画面に映っている被害者の女性を指さした。
「何をしているって言われても、あの、普通に考えればSMプレイになると思いますけど」
「で、どっちがS?」
「どっちがって・・・この場合はおそらく加害者の方の女性?」
「という事は、この縛られている被害者の女性の方がM?」
「に、なるのでは・・・あれ?ちょっと待って下さい。それって、ちょっとおかしくないですか?」
「どこが?」
「えっ?あれ?うんと、じゃあ、どこもおかしくないのかな?いや、やっぱりおかしいですよ!」
「だから、どこがおかしいの?」
「だってですよ?あやねさんの推理の通りとすればですよ?被害者の女性が自分の殺害を加害者の女性に頼んだわけだから、とすれば、命令する側がSになるわけだから、あれ?違うんですか?もしかして被害者のこの女性の方がMなんですか?」
「正解!でも、不正解!」
「えっ?・・・あの・・・」
「ふふっ。自然トリックの発生トラップ地点は正解!まあ、誰でもそう考えるでしょうからね!普通は縛られている方がMって考えてしまうと思うわよ」
「違うんですか?」
「角度の誤差。この被害者の女性は知ってたのね。角度の誤差の法則を」
「あの、いったい、どういうことなんですか?」
「簡単な事よ!人間の心理状態つてね、最初の起点に疑いを持たないまま時間が進んでいくとね、その時間の先に続いている未来が間違っていても気が付かないのよ。この場合は被害者の女性がMで、こういうSMプレイの趣味がある女性だという認識を持ってしまうでしょ?」
「だと思います」
「被害者の女性がMだとする起点とSだとする起点では、10分くらいまではどちらもそれほどの違いはないんだけどね、それが何日、何十日って過ぎて行くとね、全然違う方向へ進んでしまってるの」
「はあ・・・」
「んもう!うんとね、簡単に言うとね、角度が1度違うとするわね。するとね、その1度は1㎝先ではほとんど差がないでしょ?でも、その1度の違いが10m先だったらどう?」
「すごい差になってしまいますね」
「これは、角度という目に見える場合だから、その違いに気が付くけどね。これが人間の感覚とか思考とかってなると目に見える形ではないから分からないわけ。だからね、どれだけ差が広がっていても気が付かないわけなの」
「う~ん・・・」
「あははっ!そんなに無理に理解しようとしなくてもいいわよ!ただね、被害者の女性がMだっていう先入観がありもしない推理を勝手に作ってしまうのよ」
「あの・・・それって、もしかして、あやねさんが最初に言っていた最初から存在しないトリックを僕たち警察が勝手に作ってしまうトラップになっていたという事なんでしょうか?」
「根暗君!正解でしゅ!」
ははは・・・いったい、僕は、いつになったら倉根に戻れるのでしょうか?
とはいえ、正直、倉根はあやねの観察力と洞察力の中にある思考に驚かされていた。
確かに、あやねの指摘した通りなのである。
初めから被害者の女性がMだという先入観が加害者は男性であると決めつけてしまっていた。
というより、捜査線上に浮かんで来たのが男性だった事に何の疑いも持たなかった。
そして、次から次へと出てきた状況証拠に対しも何の疑いも持たなかったのかもしれない。
もし、これが、被害者の女性がMではなくSだったとしたらどうだったのだろうか?
最初の起点が女性はSMの趣味があり、そして、被害者の女性はМである。
そして、基本的にSMプレイとは男性と女性の間で行われる行為であるという先入観。
そして自分たちがいる状況がどんどん違う方向へと進んでいる事に誰も気が付いていないまま、
間違った事実を正しい事実だと思い込んでしまっていたのかもしれない。
これが、あやねの言う、角度の誤差の法則なのだろうか?
「従順だから」
「いや、あの・・・だから、どうしてそれが分かっちゃうのかな~?ってとこが・・・」
「こういうタイプの完全犯罪ってね、普通の完全犯罪とは少し違っててね。余程の信頼がないと出来ないものなの」
「信頼関係ですか?あの、それって、被害者の女性がその真犯人である彼女に対しての信頼ということなのですか?」
「逆よ!逆っ!」
「えっ?でも、それじゃ、なんか変じゃないですか?」
「どうして?」
「だって、被害者の女性は自分を殺して欲しいって彼女に頼んだわけでしょ?それだったら、信頼している方は被害者の女性で信頼されている方が加害者の彼女ってことになると思うんですけど」
「普通ならね」
「ですよね?」
「きっと、名探偵さんでも、あんたと同じように考えると思うわよ」
「名探偵だなんて、はははっ。・・・はい?ってか、違うんですか?」
「これってさ、何をしているところだと思う?」
そう言って、あやねはテレビ画面に映っている被害者の女性を指さした。
「何をしているって言われても、あの、普通に考えればSMプレイになると思いますけど」
「で、どっちがS?」
「どっちがって・・・この場合はおそらく加害者の方の女性?」
「という事は、この縛られている被害者の女性の方がM?」
「に、なるのでは・・・あれ?ちょっと待って下さい。それって、ちょっとおかしくないですか?」
「どこが?」
「えっ?あれ?うんと、じゃあ、どこもおかしくないのかな?いや、やっぱりおかしいですよ!」
「だから、どこがおかしいの?」
「だってですよ?あやねさんの推理の通りとすればですよ?被害者の女性が自分の殺害を加害者の女性に頼んだわけだから、とすれば、命令する側がSになるわけだから、あれ?違うんですか?もしかして被害者のこの女性の方がMなんですか?」
「正解!でも、不正解!」
「えっ?・・・あの・・・」
「ふふっ。自然トリックの発生トラップ地点は正解!まあ、誰でもそう考えるでしょうからね!普通は縛られている方がMって考えてしまうと思うわよ」
「違うんですか?」
「角度の誤差。この被害者の女性は知ってたのね。角度の誤差の法則を」
「あの、いったい、どういうことなんですか?」
「簡単な事よ!人間の心理状態つてね、最初の起点に疑いを持たないまま時間が進んでいくとね、その時間の先に続いている未来が間違っていても気が付かないのよ。この場合は被害者の女性がMで、こういうSMプレイの趣味がある女性だという認識を持ってしまうでしょ?」
「だと思います」
「被害者の女性がMだとする起点とSだとする起点では、10分くらいまではどちらもそれほどの違いはないんだけどね、それが何日、何十日って過ぎて行くとね、全然違う方向へ進んでしまってるの」
「はあ・・・」
「んもう!うんとね、簡単に言うとね、角度が1度違うとするわね。するとね、その1度は1㎝先ではほとんど差がないでしょ?でも、その1度の違いが10m先だったらどう?」
「すごい差になってしまいますね」
「これは、角度という目に見える場合だから、その違いに気が付くけどね。これが人間の感覚とか思考とかってなると目に見える形ではないから分からないわけ。だからね、どれだけ差が広がっていても気が付かないわけなの」
「う~ん・・・」
「あははっ!そんなに無理に理解しようとしなくてもいいわよ!ただね、被害者の女性がMだっていう先入観がありもしない推理を勝手に作ってしまうのよ」
「あの・・・それって、もしかして、あやねさんが最初に言っていた最初から存在しないトリックを僕たち警察が勝手に作ってしまうトラップになっていたという事なんでしょうか?」
「根暗君!正解でしゅ!」
ははは・・・いったい、僕は、いつになったら倉根に戻れるのでしょうか?
とはいえ、正直、倉根はあやねの観察力と洞察力の中にある思考に驚かされていた。
確かに、あやねの指摘した通りなのである。
初めから被害者の女性がMだという先入観が加害者は男性であると決めつけてしまっていた。
というより、捜査線上に浮かんで来たのが男性だった事に何の疑いも持たなかった。
そして、次から次へと出てきた状況証拠に対しも何の疑いも持たなかったのかもしれない。
もし、これが、被害者の女性がMではなくSだったとしたらどうだったのだろうか?
最初の起点が女性はSMの趣味があり、そして、被害者の女性はМである。
そして、基本的にSMプレイとは男性と女性の間で行われる行為であるという先入観。
そして自分たちがいる状況がどんどん違う方向へと進んでいる事に誰も気が付いていないまま、
間違った事実を正しい事実だと思い込んでしまっていたのかもしれない。
これが、あやねの言う、角度の誤差の法則なのだろうか?
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