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SMと快楽と事件

SMと快楽と事件・・・その10

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誰のために事件を解決しようとしているの?
誰のために・・・正直、倉根は考え込んでしまった。

ついさっきまでは、今、捕まっている男が冤罪ではないのだろうか?
もし冤罪だったとしたら、それはとても大変な問題になってしまうのではないだろうか?
そう思ったので、あやねのところへ相談に来たのだから・・・と、思っていたはずなのに
これでは、まるで、今、捕まっている男のために事件を解決しようとしているみたいではないだろうか?

いや、違う・・・。
違うはずである・・・。
確かに、もし、このまま冤罪などになってしまったら、これは警察の一大事ではある。
それに、この男の冤罪を晴らす事が、そのまま事件の解決への前進にもなるはず・・・
そうなのである。事件の解決への前進になるはず・・・だったはずなのだが・・・。

もし・・・である。
もし、今、あやねが言ったように殺された女性がそれを望んでいなかったとしたら
それじゃ、いったい、誰のために事件を解決しなければならなくなるのだろうか?

これは、この国の法律なのだから・・・
そう言えば、それはそれで間違ってはいないのかもしれない。

「あら?答えに迷ったの?」

「あっ、いえ・・・その・・・」

「ふふっ。答えに迷ったんじゃなくて、初めから決められている答えにたどり着くための都合の良い屁理屈を探しているんだったわね?」

「そうハッキリと言われてしまうと・・・はあ・・・」

確かに、その通りである。
今、あやねが言ったように、確かに倉根は、初めから決められた答えのために・・・
いや、初めから決められている答えは間違っていないはずなのだと、そのための言い訳を探しているのかもしれない。

それと同時に、倉根は、今のあやねの一言には驚くしかなかった。
それは、あやねが使った、答え、という言葉である。

犯人を捕まえる・・・これが正義である。
これは、倉根に限らず、日本中の、いや、世界中の警察の正義なのではないだろうか?
その、世界中の警察の正義を、あやねは、答え、という言葉で皮肉ったのである。

倉根は、あやねの言った一言に、あの事件を思い出していた。
警察の、いや、世の中の正義とは、いったい、何なのだろうか?
世の中の正義は、いったい、誰のための正義なのだろうか?
その答えが、いまでも分からない、いや、分からなくなってしまった事件だった。

今回の、この事件も、あの事件と本質は同じなのではないだろうか?
今回の事件も、言い訳なりつじつま合わせの言葉ならいくらでも思い付いてしまう。

例えば、いくら殺された女性が、それを望んでいないとしても、
殺人を犯した犯人にとって罪の意識が無いはずはない。
もし、このまま捕まらければ、この先、一生、罪の意識に苛まれながら生きていかなければない。
そんな犯人の罪の意識を少しでも軽くしてあげるのも、警察の仕事なのだと言い聞かせる事も出来る。

冤罪だと分かっていながら、それから目を逸らして黙認する事は法律に背く行為になる。
それどころか、犯人でもない人を犯人にしてしまう事は、警察として見過ごす事など出来るはずがない。

つじつま合わせの言い訳など、他にもいくらでも見つける事は出来るのだろう。
それなら、つじつま合わせが出来てしまう正義とは、いったい、何なのだろうか?

待てよ?
だったら、今、捕まってる男の無罪を証明出来て、
そんでもって、そのまま真犯人が捕まらなければどうなる?

「そうすれば、誰も傷つかないって?」

「あのですね?僕は何も言ってないのに、どうして、僕が考えている事が分かってしまうんですか?」

「で・・・どう思うの?」

で・・・どう思うの?って。
違う!違う!そうじゃない!そういう問題じゃない!
どうして、あやねさんには、僕が考えた事が分かってしまうのか?
そこが問題です!と、思う。僕は、正しいと思う。
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