ちょっとエッチな心霊探偵 あやね

見える世界と見えない世界

見える世界と見えない世界・・・その5

「見える世界と・・・見えない世界・・・？」

「ええ、そうよ」

「あの・・・それっていうのは？」

「現世の世界に居ながら、同時に別の異世界に居る感じかな？」

「それって、今の世界にいながら別の世界に飛んじゃうってことなんでしょうか？」

「そそ・・・そんな感じ！」

「あの・・・それじゃ、いつも居る世界の私は二人存在しているってことなのでしょうか？」

「うんとね、ちょっと違ってるみたい」

「ちょっと違ってる？」

「うんと、簡単に言うと、時間は止まらないままで別の世界に飛んじゃう感じかな？」

「えっ？それじゃ今の世界にいる自分はどうなるんですか？」

「うんとね、別の世界に飛んでる間は現世の世界から消えちゃうみたい」

「消えちゃう・・・んですか？」

「そうみたいですよ」

「でも、それじゃ、周りの人とかびっくりしちゃうんじゃないですか？」

「急に消えちゃうから？」

「ええ・・・」

「それが、そうでもないみたい」

「えっ？だって突然消えちゃうんですよ？」

「そこが私も不思議だったんだけどね」

「ですよね？」

「まあ、その辺は適当みたい。というか、私もよく分からないんだけどそうみたいですよ」

「はあ・・・あの、それじゃですよ？それじゃ、今の私はどうなってるんでしょうか？」

「飛んじゃってるかってこと？」

「ええ・・・」

「まだ、飛んでないみたいですよ。ちょうど現世と異世界の真ん中にいる感じかな？」

「ちょうど真ん中？・・・ですか」

「うんとね、分かりやすく言いうと幽霊が見えている人と見えていない人が同時に存在している感じと思うといいかも？」

「あっ、そっか！幽霊が見えている人が存在している世界と幽霊が見えない人が存在している世界ってことなんですね」

「ええ、そんな感じかな？同じ世界に存在していながら片方には幽霊が見えてもう片方には幽霊が見えていないんだけど、どちらも同じ世界に存在しているでしょ？」

「確かに・・・」

「だから、美奈子さんも私もどちらも幽霊が見えている世界に同時に存在しているって感じだから、このくまが動いていても何も違和感がないんだと思うんですよ」

「あの、それじゃ、このくまさんが動いているのが見えない人だったらどうなるんですか？」

「ふふっ、くまが動いているのが分からない人の場合はすぐに分かるので、その時は、ただのくまのぬいぐるみが飾ってあるって感じで」

「でも・・・動いていますよ？もしかして、その時はこのくまさんは動かないでじっとしているんですか？」

「ううん。勝手に動いているみたいですよ」

「えっ・・・だって、そしたらくまさんのぬいぐるみさんが勝手に移動しているんだから、動いていなくても位置が変わっているわけだからびっくりするんじゃないんですか？」

「あっ、それは、記憶の上書きになるみたいですよ」

「記憶の上書き・・・？」

「なので、この、くまが勝手に動いて位置が変わっていても、見えていない人には、初めからそこにくまのぬいぐるみが飾ってあるみたいに見えているみたいですよ」

美奈子は、ちょっと信じられないような出来事を普通に話すあやねの言動に驚いていた。
というのは、あやねが話す不思議な出来事に対する説明が不思議とつじつまが合っているのである。
もちろん、信じる信じないは美奈子の自由なのではあるが・・・動いているのである。
確かに動いているのである・・・しかも、今、美奈子の目の前でである。

世の中には不思議な事もあるものなのね、と、それでいて、なぜか心地よい感じがしている美奈子である。