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後編 魔法学園での日々とそれから

145.誘惑作戦実行へ

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 そうして、ソフィに言った通りに隠れ家の三階へ直接鍵を開けて入る。

「それじゃ、今から寝室で水着に着替えてくるから、三着のうちどれを着てほしいか選んで。あと、誰が選んだか当てて」
「え、は、え、水着!? い、今から……え、着るの!?」
「見せてって言ったじゃん」
「え、いや、あ……え!?」

 すっごく驚いている。
 ……分かっている。見せてって言ったのは、単にこれですとそれそのものを広げて見せるって意味でだよね。

 いきなりの私の申し出に放心状態のまま、そのまま見せるだけでいいと言うか言うまいか悩もうとするのを遮る。

「じゃ、待っててね」
「あ……分かった」

 そんな苦しそうな声を出さないでほしいよね。でも、隠しきれていない期待の眼差しに悪くはない気分だ。

 寝室に私だけ移動して、置いてある紙袋から一つを取り出し服を脱いでいく。

 ううん……私だけがここで真っ裸って、それだけで恥ずかしすぎるな……早く着替えよう。

「はい、レイモンド。一つ目。どう?」

 なんでもない様子を装って、レイモンドの元へ戻り露出度の高いファッションショーを始める。

 胸の部分だけはハート型で白くてふわりとした生地が使われている。透けないように二重構造だ。他は水色でやはりフリルが多い。何段にもなっているし、リボン付きだ。

「可愛い……でも胸元に視線がいきやすいな。やっぱり白と水色の組み合わせっていいよね。アリスって守りに入りやすいし、普段の色を選びそう。アリスのチョイスじゃないかな」

 分析モードに入ってる……。

 答は言わずに寝室に戻ってまた着替える。
 次の水着はユリアちゃんと同じ、セーラー系だ。こっちはピンク。前のお忍び服を見てピンクも似合うと思ったのでと言ってくれた。

「ピンクか……むしろユリア嬢にアリスが勧めそうなデザインだよね。お揃いに近いものを彼女に勧められた可能性もありそうだ」

 当たってる……レイモンド、怖い!

 最後の水着はセクシーな黒系だ。印象を変えてみたらどうかしらと言われたものの……見た瞬間にエロい。絶対にレイモンドが選ぶとは思っていない。ジェニーのお遊び選択だ。

「な!? これは……あ、前にあんなのをジェニファー様に着せたから仕返しされたでしょ!」

 うん……私もそう思った。

「それで、どれを着てほしい?」
「その黒のは避けよう。……一応聞くけど、ジェニファー様が買ったのはセーラー風のではないよね。ユリア嬢はそんな感じ?」
「鋭すぎるね……」
「それなら最初のかな。たぶんアリスが選んだやつ」

 二人がお揃いの水着を着て一人だけ違うって状況を避けようって主旨だよね。

「当たり。私が選んだ。すごいね、全部当たっちゃったし」
「分かりやすかったしね」

 ソファの上に私も座って、にじり寄る。

「ねぇねぇ、黒も似合う?」
「似合うけど……ぐらっぐらする。もう着替えてきなよ」

 ……このまま我慢できなくなって押し倒してくれればいいのに。

「あのね……もう一着あるの」
「もう一着!?」
「水着ではないんだけど……」
「水着じゃないの!? アリスは本当によく分からないな……」
「着替えたら呼ぶから、寝室まで来て」
「え……?」

 どんな顔をしていいのか分からない。それだけ言って急いで寝室へと戻る。二つ目の紙袋から、フリルレースのリボン付きベビードールを取り出した。

 ピンク色で前開きだ。黒リボンを解いてしまえばそれだけで前がはだける。しかも、胸から下は透け感すらある。

 私は何をしているんだろう。
 
 この部屋に来てしまえば、誰もいない場所で裸になろうとする変な女だ。薄暗い中、ベッドに置いたベビードールを見て少し平静さを取り戻す。
 
 この世界に来た時、あれだけレイモンドを変態だと罵ったのに……寝室でこれを着て彼を呼ぶって……完全に変態は私だ。私の頭はもう壊滅的におかしくなった……おかしくさせられた。たった二年でこんなことになるなんて――。

 緊張しながら黒水着をスルスルと脱いでいく。

 まだやめておこうなんて言われないかな。怖いな……怖い。拒否されるのも、されないのも怖い。

 この世界に来る前の中学三年生だった時、風の噂で「あの子はもう、したらしい」なんて情報が耳に入ってきた。別のクラスの二人。それ以外は聞いたことがない。高校生だと、どうだったのかな。中学よりはいたのかな。

 ここではもう結婚もできるけど、私の感覚ではまだ早い。それを今までのやり取りから感じて、まだその時ではないんだなとレイモンドも自分を律してくれている……。

 ――これは戦闘服だ。

 あと戻りできないこの服を着て、自らを鼓舞する。
 
 私がかけさせてしまったレイモンドの理性の鍵を――、私の手でぶっ壊す!

 決意を新たに、寝室の扉をそっと開いた。
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