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中編 愛の深まりと婚約
88.お風呂でラブドッキリハプニング☆
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中は思ったよりも広い。
白薔薇邸の浴室は一つの部屋のように広いけれど、ここも部屋のようだ。大理石のテーブルもある。
さすがに美容院さんの洗髪台みたいなのはないけど、白い猫足のバスタブはやっぱりテンションが上がる。
ううん、シャワー用の上部の水槽が独特だなぁ……。前の世界では当たり前のようにシャワーがあったけど、技術的には難しそうだよね。
ドレスやらなんやらを、スルスルと脱ぐ。
ううん……あっちの部屋にレイモンドがいると思うと、さすがに恥ずかしいな……。でも、汗臭いのだけは早くなんとかしよう。
足を曲げずに済むように、軽く固定するようにしながら浮かんだりして全てを脱いだ。うん……こんな時のための紐パンかもしれない。便利すぎる。魔法の調整も上手くなっておいてよかった……。
脱いだ服を袋に入れて、テーブルの上に置いた。タオルで髪を包む。捻挫した足も光魔法で覆った。ふわっと浮いて脱衣所から浴室のバスタブの隣へとゆっくり移動する。
おっふろ~おっふろ~ひっとりっでおっふろ~♪
これで足さえ痛くなかったらなぁ。
洗面器を魔法でバスタブの中に入れて湯をすくい、自分にジャバーっとかける。
あったか~い!
気持ちいい~!
これで終わりはさすがに寂しい。臭いが完全にとれるかも怪しい。石鹸もあるし体くらい洗おう。
――そう、私は油断していた。石鹸で洗おうとさえしなければ、あそこまで酷いことにはきっとならなかっただろう。
泡だらけなっていく床。
洗い流そうと立ち上がる私。
突然うにょろうにょろと近づいてきた、ナメクジ。
響きわたる叫び声。
滑ってひっくり返り、風魔法で慌てて衝撃をやわらげながら床に寝そべって――、揺れる足の痛みに違う叫びをあげながら反対の足が当たった先は、シャワー用の魔石。
気付かずに私は慌てて考えた。
――ぬるぬるして起き上がりにくい! 早く石鹸を流さないと!
シャワーから突然、予期せず大量に落ちてくるお湯。そう、私の声を最初から辿るなら、こうだったはず。
「キャァァァァ! う、わぁっ、かぜぇ! 痛ァ! うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「アリス!?」
うん……来るよね……あれだけ騒いだら来るよね……。
どうしてナメクジに、あそこまで動揺してしまったのか。もう一度、あの時点に戻ってやり直したい。
◆◇◆◇◆
「やっぱり女性職員に頼めばよかったね……」
タオルを身体の上に乗せながら、レイモンドに全裸で抱きかかえられている。
もう、お嫁に行けなさすぎる……。
叫びすぎて、これ以上叫ぶ気力がない。息も絶え絶えだ。
「違う。全部どっかにいるナメクジのせい。ソイツがいなければ、こんなことになってない。ソイツ持って出てって」
「ナメクジ……? あ、ほんとだ」
「ソイツがいなければ余裕。驚いて転んだだけ。もう大丈夫だから」
「そ、そっか……。気付かなくて、ごめんね。じゃぁ行くね」
ヒョイとナメクジをつまみ上げて、完全にレイモンドが立ち去ってから、ため息をつく。
酷かった……今までの人生で一番酷かった。
レイモンドは入ってくるなり、バンとシャワーを止めて何も着ていない私を抱き起こした。まだ残っている床の泡を同時にお湯でザーッと流してくれた気がするんだけど……なんか……あの時……一度胸の上に手があった気がするんだよね……いや、忘れたいだけであったよね、絶対。肩まで抱いて起こした時に、左胸まで一瞬回り込んだよね。
慌てて頭に巻いていたタオルを身体の上に乗せて隠したけど……それまでに完全に見られてもいるよね……。
まさか……漫画のようなお風呂でラブドッキリハプニング☆が私の身に起こるとは……。
はー……戻りにくい。
ってか、胸触ったの絶対わざとでしょ!
いや、まぁ……うん……あれだけ叫んだら来るのは分かる。目の前で見たら、触りたくなるのも男子なら……でも触っちゃダメでしょ!
いや、一応勢いあまっての可能性もあることにはある。しかし、しかし……!!!
うん、忘れよう。忘れたフリをしよう。それが一番平和だ。
……思ったより小さいとか思われていないかな。感触が寂しいとか。
自分の身体を見下ろす。
抱き起こされたあの格好……お腹の肉とか、ピンと立っている時よりもあるように見えるよね。お腹、凹ませればよかった……。
はぁ……見られた……。
考えれば考えるほど顔が火照っていく。出るのが遅すぎて、また心配して来てもらっても困る。でも顔だけは元に戻したい。
水で顔を洗おう……。
洗面器に水魔法で冷たい水を入れて、バシャバシャと顔にかける。
冷たいし!
お風呂場で冷たい水なんか触りたくないし!
……もう出よ……。
ズキズキする足の痛みを抱えつつ諦めてもう一度しっかりと洗い流す。包帯は光魔法への意識が消えてしまったためずぶ濡れだ。塗ってもらった薬も水に濡れてしまったはず。
乾かすこともできるけど……薬のことを考えると外しておこうかな。
包帯をとり、普段の顔に戻そうと意識しながら身体を拭くためにタオルを掴んだ。
白薔薇邸の浴室は一つの部屋のように広いけれど、ここも部屋のようだ。大理石のテーブルもある。
さすがに美容院さんの洗髪台みたいなのはないけど、白い猫足のバスタブはやっぱりテンションが上がる。
ううん、シャワー用の上部の水槽が独特だなぁ……。前の世界では当たり前のようにシャワーがあったけど、技術的には難しそうだよね。
ドレスやらなんやらを、スルスルと脱ぐ。
ううん……あっちの部屋にレイモンドがいると思うと、さすがに恥ずかしいな……。でも、汗臭いのだけは早くなんとかしよう。
足を曲げずに済むように、軽く固定するようにしながら浮かんだりして全てを脱いだ。うん……こんな時のための紐パンかもしれない。便利すぎる。魔法の調整も上手くなっておいてよかった……。
脱いだ服を袋に入れて、テーブルの上に置いた。タオルで髪を包む。捻挫した足も光魔法で覆った。ふわっと浮いて脱衣所から浴室のバスタブの隣へとゆっくり移動する。
おっふろ~おっふろ~ひっとりっでおっふろ~♪
これで足さえ痛くなかったらなぁ。
洗面器を魔法でバスタブの中に入れて湯をすくい、自分にジャバーっとかける。
あったか~い!
気持ちいい~!
これで終わりはさすがに寂しい。臭いが完全にとれるかも怪しい。石鹸もあるし体くらい洗おう。
――そう、私は油断していた。石鹸で洗おうとさえしなければ、あそこまで酷いことにはきっとならなかっただろう。
泡だらけなっていく床。
洗い流そうと立ち上がる私。
突然うにょろうにょろと近づいてきた、ナメクジ。
響きわたる叫び声。
滑ってひっくり返り、風魔法で慌てて衝撃をやわらげながら床に寝そべって――、揺れる足の痛みに違う叫びをあげながら反対の足が当たった先は、シャワー用の魔石。
気付かずに私は慌てて考えた。
――ぬるぬるして起き上がりにくい! 早く石鹸を流さないと!
シャワーから突然、予期せず大量に落ちてくるお湯。そう、私の声を最初から辿るなら、こうだったはず。
「キャァァァァ! う、わぁっ、かぜぇ! 痛ァ! うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「アリス!?」
うん……来るよね……あれだけ騒いだら来るよね……。
どうしてナメクジに、あそこまで動揺してしまったのか。もう一度、あの時点に戻ってやり直したい。
◆◇◆◇◆
「やっぱり女性職員に頼めばよかったね……」
タオルを身体の上に乗せながら、レイモンドに全裸で抱きかかえられている。
もう、お嫁に行けなさすぎる……。
叫びすぎて、これ以上叫ぶ気力がない。息も絶え絶えだ。
「違う。全部どっかにいるナメクジのせい。ソイツがいなければ、こんなことになってない。ソイツ持って出てって」
「ナメクジ……? あ、ほんとだ」
「ソイツがいなければ余裕。驚いて転んだだけ。もう大丈夫だから」
「そ、そっか……。気付かなくて、ごめんね。じゃぁ行くね」
ヒョイとナメクジをつまみ上げて、完全にレイモンドが立ち去ってから、ため息をつく。
酷かった……今までの人生で一番酷かった。
レイモンドは入ってくるなり、バンとシャワーを止めて何も着ていない私を抱き起こした。まだ残っている床の泡を同時にお湯でザーッと流してくれた気がするんだけど……なんか……あの時……一度胸の上に手があった気がするんだよね……いや、忘れたいだけであったよね、絶対。肩まで抱いて起こした時に、左胸まで一瞬回り込んだよね。
慌てて頭に巻いていたタオルを身体の上に乗せて隠したけど……それまでに完全に見られてもいるよね……。
まさか……漫画のようなお風呂でラブドッキリハプニング☆が私の身に起こるとは……。
はー……戻りにくい。
ってか、胸触ったの絶対わざとでしょ!
いや、まぁ……うん……あれだけ叫んだら来るのは分かる。目の前で見たら、触りたくなるのも男子なら……でも触っちゃダメでしょ!
いや、一応勢いあまっての可能性もあることにはある。しかし、しかし……!!!
うん、忘れよう。忘れたフリをしよう。それが一番平和だ。
……思ったより小さいとか思われていないかな。感触が寂しいとか。
自分の身体を見下ろす。
抱き起こされたあの格好……お腹の肉とか、ピンと立っている時よりもあるように見えるよね。お腹、凹ませればよかった……。
はぁ……見られた……。
考えれば考えるほど顔が火照っていく。出るのが遅すぎて、また心配して来てもらっても困る。でも顔だけは元に戻したい。
水で顔を洗おう……。
洗面器に水魔法で冷たい水を入れて、バシャバシャと顔にかける。
冷たいし!
お風呂場で冷たい水なんか触りたくないし!
……もう出よ……。
ズキズキする足の痛みを抱えつつ諦めてもう一度しっかりと洗い流す。包帯は光魔法への意識が消えてしまったためずぶ濡れだ。塗ってもらった薬も水に濡れてしまったはず。
乾かすこともできるけど……薬のことを考えると外しておこうかな。
包帯をとり、普段の顔に戻そうと意識しながら身体を拭くためにタオルを掴んだ。
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