74 / 189
中編 愛の深まりと婚約
74.誕生日の最後に
しおりを挟む
レイモンドとはいったん離れ、寝支度を整えてからまたいつも通りに彼が来て、ベッド横の椅子に座った。
「さすがに今日は来なくてもよかったんじゃ……。さっきまで一緒だったし質問なんてないけど」
「あーあ。俺は少しでもアリスといたいのに、つれないなぁ」
もっと可愛いことを言ってくれる子を好きになればよかったのに。
「今日は誕生日なのに疲れちゃったでしょ? 明日、デートしようよ」
「え……もう花火も見たし十分だけど。普通に午前はお勉強、午後は魔法特訓でいいけど。はい、誕生日終わりましたーって気分だけど」
「……何か足りないなとか、ないの」
「何もない」
「俺からまだ何もあげてないじゃん」
「あー……」
もういらないけど。
私が今ぬくぬくと入っているお布団の横には、レイモンド手作りツチノコ抱き枕もあるし。
「もう十分。花火も見たし。むしろ今後もなくていい」
「……何かはあるかなーとか、期待くらいしてくれてもいいのになー」
期待なんて……したくない。
お小遣いはもらっているけど、なんでも買えてしまうレイモンドにあげられるものなんてないし。そもそも買い物にも一人では行かないし。
午前中には嗜みの一つとして刺繍も習っている。レイモンドのイニシャルと、何かワンポイントでもハンカチに縫おうかなぁ。
「何かあるの?」
「ツチノコは打ち止めをくらっちゃったしね。気に入ってもらえるかは分からないけど……」
袋を持ってきていると思ったらプレゼントだったのか……そんな気はしていたけど。
「お城の置き物?」
透明なガラス製……かな。中に黄色いゼリーのようにも見えるツルツルの石が入っている。魔石だよね、きっと。
「ああ。夜寝る前に手をかざしてお願いをすれば、いい夢が見られるかもしれない。光の精霊の気分しだいでね」
「気分しだいなんだ」
「ああ、それくらいのもの。起きても、そのいい夢は忘れてしまっているかもしれない」
「寝ている間に、前みたいな可愛いワンちゃんを触ったようなポワポワした気分にさせてくれる感じ?」
「ああ、そうだね」
「……絶対じゃないのがいいね。夢がある。どうかなーってワクワクするね」
「気に入ってくれた?」
「うん、嬉しい」
ベッドの頭側にある棚に置いてくれた。早速、今日使ってみよっと。
この世界にどんな物があるのか……私はまだ全然知らない。何をあげれば喜んでもらえるのかも分からない。
「でもね……レイモンド」
「ん?」
「本当にプレゼントはいらないの。返せるものがないもん。まだ、一人では外に出ない方がいいんでしょ? 何も返せない……」
「あ……いや、本当に俺は何もいらないんだ。一緒にいられるだけで十分嬉しいし幸せだ。でも、俺とばかり外に出るのは飽きるかな。うーん……そろそろ、ソフィと出かける?」
ソフィとお出かけ!
「いいの!?」
「う……嬉しそうだね。ただ、前もって日付は決めてほしい。いきなり今から行こうとかは無理だ」
「うん、ソフィにも仕事があるもんね。分かってるよ」
「後ろに護衛も分からないように付けさせてもらうけど、いい?」
「もちろん。楽しみ、ありがとう! むしろ明日はソフィとのデートでもいい!」
「――うぐっ」
あ……レイモンドが私の布団に突っ伏しちゃった。今のはダメだったかな。
でも、なんだかいきなり世界が広がった気がする! レイモンドはすぐ私が喜びそうなところにばっかり連れていって何かを買おうとするからなぁ~。
なんでもない、ただのショッピングもしたい!
気を取り直したレイモンドが起き上がって、私の頭をなでる。
「でも、俺に何かを買おうとはしなくていいからね」
「うーん……」
「むしろ、何ももらわない方がいいに決まっているよ」
「……意味が分からないけど」
「こうやってアリスが申し訳なく思って……俺からのキスを、快く受け入れてくれるだろう?」
「………………姑息すぎ」
「ああ、姑息なんだ。姑息な俺に好かれてしまったのが運の尽きだよ。他の男なんて選べない。可哀想だから、世界で一番幸せにしてあげる」
燃えるような赤の瞳が近づいてくる。
「ま、待って。これまでだいたい三週間おきくらいにしていたと思うんだけど」
「えー、日付まで数えていたの? 無粋だなぁ」
だって、そろそろかなぁとかドキドキするし!
「い、いきなり連続はおかしいよね。意味がないよね」
それを許してしまったら、突然毎日になってしまうかもしれない。夜寝る前にベッドで会うのに毎日はまずいでしょ。だって……ほら……この世界には避妊ジェルなるものが存在するみたいだし……。
――ってことを考えちゃうのって私だけ!? もしかして私の方が変態だったりする!?
いやいや、私はおかしくない……おかしくないはず……。
「俺にはこれだけのわずかな時間でも、まるで三週間は経ったように感じるよ。本当はアリスが寝支度を整えている間も一緒にいたい」
……入浴中もって意味だよね。大丈夫、私だけがエロいことを考えているわけじゃない。
何が大丈夫なんだ!
混乱してきた!
「何も返せないことに引け目を感じて、受け入れてくれる?」
卑怯な卑怯なレイモンド。
私のために言い訳を用意してくれる。
毎日じゃないよって。今日はプレゼントをもらって、返せるものがないからするだけだよって。それならしてもいいかなって思えるように。
大義名分のないキスを受け入れるための言い訳まで用意されたら、もう――。
彼の瞳を、私で埋め尽くすように手をのばす。
――断れるわけがない。
「さすがに今日は来なくてもよかったんじゃ……。さっきまで一緒だったし質問なんてないけど」
「あーあ。俺は少しでもアリスといたいのに、つれないなぁ」
もっと可愛いことを言ってくれる子を好きになればよかったのに。
「今日は誕生日なのに疲れちゃったでしょ? 明日、デートしようよ」
「え……もう花火も見たし十分だけど。普通に午前はお勉強、午後は魔法特訓でいいけど。はい、誕生日終わりましたーって気分だけど」
「……何か足りないなとか、ないの」
「何もない」
「俺からまだ何もあげてないじゃん」
「あー……」
もういらないけど。
私が今ぬくぬくと入っているお布団の横には、レイモンド手作りツチノコ抱き枕もあるし。
「もう十分。花火も見たし。むしろ今後もなくていい」
「……何かはあるかなーとか、期待くらいしてくれてもいいのになー」
期待なんて……したくない。
お小遣いはもらっているけど、なんでも買えてしまうレイモンドにあげられるものなんてないし。そもそも買い物にも一人では行かないし。
午前中には嗜みの一つとして刺繍も習っている。レイモンドのイニシャルと、何かワンポイントでもハンカチに縫おうかなぁ。
「何かあるの?」
「ツチノコは打ち止めをくらっちゃったしね。気に入ってもらえるかは分からないけど……」
袋を持ってきていると思ったらプレゼントだったのか……そんな気はしていたけど。
「お城の置き物?」
透明なガラス製……かな。中に黄色いゼリーのようにも見えるツルツルの石が入っている。魔石だよね、きっと。
「ああ。夜寝る前に手をかざしてお願いをすれば、いい夢が見られるかもしれない。光の精霊の気分しだいでね」
「気分しだいなんだ」
「ああ、それくらいのもの。起きても、そのいい夢は忘れてしまっているかもしれない」
「寝ている間に、前みたいな可愛いワンちゃんを触ったようなポワポワした気分にさせてくれる感じ?」
「ああ、そうだね」
「……絶対じゃないのがいいね。夢がある。どうかなーってワクワクするね」
「気に入ってくれた?」
「うん、嬉しい」
ベッドの頭側にある棚に置いてくれた。早速、今日使ってみよっと。
この世界にどんな物があるのか……私はまだ全然知らない。何をあげれば喜んでもらえるのかも分からない。
「でもね……レイモンド」
「ん?」
「本当にプレゼントはいらないの。返せるものがないもん。まだ、一人では外に出ない方がいいんでしょ? 何も返せない……」
「あ……いや、本当に俺は何もいらないんだ。一緒にいられるだけで十分嬉しいし幸せだ。でも、俺とばかり外に出るのは飽きるかな。うーん……そろそろ、ソフィと出かける?」
ソフィとお出かけ!
「いいの!?」
「う……嬉しそうだね。ただ、前もって日付は決めてほしい。いきなり今から行こうとかは無理だ」
「うん、ソフィにも仕事があるもんね。分かってるよ」
「後ろに護衛も分からないように付けさせてもらうけど、いい?」
「もちろん。楽しみ、ありがとう! むしろ明日はソフィとのデートでもいい!」
「――うぐっ」
あ……レイモンドが私の布団に突っ伏しちゃった。今のはダメだったかな。
でも、なんだかいきなり世界が広がった気がする! レイモンドはすぐ私が喜びそうなところにばっかり連れていって何かを買おうとするからなぁ~。
なんでもない、ただのショッピングもしたい!
気を取り直したレイモンドが起き上がって、私の頭をなでる。
「でも、俺に何かを買おうとはしなくていいからね」
「うーん……」
「むしろ、何ももらわない方がいいに決まっているよ」
「……意味が分からないけど」
「こうやってアリスが申し訳なく思って……俺からのキスを、快く受け入れてくれるだろう?」
「………………姑息すぎ」
「ああ、姑息なんだ。姑息な俺に好かれてしまったのが運の尽きだよ。他の男なんて選べない。可哀想だから、世界で一番幸せにしてあげる」
燃えるような赤の瞳が近づいてくる。
「ま、待って。これまでだいたい三週間おきくらいにしていたと思うんだけど」
「えー、日付まで数えていたの? 無粋だなぁ」
だって、そろそろかなぁとかドキドキするし!
「い、いきなり連続はおかしいよね。意味がないよね」
それを許してしまったら、突然毎日になってしまうかもしれない。夜寝る前にベッドで会うのに毎日はまずいでしょ。だって……ほら……この世界には避妊ジェルなるものが存在するみたいだし……。
――ってことを考えちゃうのって私だけ!? もしかして私の方が変態だったりする!?
いやいや、私はおかしくない……おかしくないはず……。
「俺にはこれだけのわずかな時間でも、まるで三週間は経ったように感じるよ。本当はアリスが寝支度を整えている間も一緒にいたい」
……入浴中もって意味だよね。大丈夫、私だけがエロいことを考えているわけじゃない。
何が大丈夫なんだ!
混乱してきた!
「何も返せないことに引け目を感じて、受け入れてくれる?」
卑怯な卑怯なレイモンド。
私のために言い訳を用意してくれる。
毎日じゃないよって。今日はプレゼントをもらって、返せるものがないからするだけだよって。それならしてもいいかなって思えるように。
大義名分のないキスを受け入れるための言い訳まで用意されたら、もう――。
彼の瞳を、私で埋め尽くすように手をのばす。
――断れるわけがない。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
変装して本を読んでいたら、婚約者さまにナンパされました。髪を染めただけなのに気がつかない浮気男からは、がっつり慰謝料をせしめてやりますわ!
石河 翠
恋愛
完璧な婚約者となかなか仲良くなれないパメラ。機嫌が悪い、怒っていると誤解されがちだが、それもすべて慣れない淑女教育のせい。
ストレス解消のために下町に出かけた彼女は、そこでなぜかいないはずの婚約者に出会い、あまつさえナンパされてしまう。まさか、相手が自分の婚約者だと気づいていない?
それならばと、パメラは定期的に婚約者と下町でデートをしてやろうと企む。相手の浮気による有責で婚約を破棄し、がっぽり違約金をもらって独身生活を謳歌するために。
パメラの婚約者はパメラのことを疑うどころか、会うたびに愛をささやいてきて……。
堅苦しいことは苦手な元気いっぱいのヒロインと、ヒロインのことが大好きなちょっと腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(作品ID261939)をお借りしています。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
婚約破棄された公爵令嬢は、飼い犬が可愛過ぎて生きるのが辛い。
豆狸
恋愛
「コリンナ。罪深き君との婚約は破棄させてもらう」
皇太子クラウス殿下に婚約を破棄されたわたし、アンスル公爵家令嬢コリンナ。
浮気な殿下にこれまでも泣かされてばかりだったのに、どうして涙は枯れないのでしょうか。
殿下の母君のカタリーナ妃殿下に仔犬をいただきましたが、わたしの心は──
ななな、なんですか、これは! 可愛い、可愛いですよ?
フワフワめ! この白いフワフワちゃんめ! 白くて可愛いフワフワちゃんめー!
辛い! 愛犬が可愛過ぎて生きるのが辛いですわーっ!
なろう様でも公開しています。
アルファポリス様となろう様では最終話の内容が違います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる