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中編 愛の深まりと婚約
71.ジェニファー様と
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お茶会では「レイモンドのどこを好きになったの?」とか答えにくいことを聞かれたものの「恥ずかしくてここでは……でも、お慕いしています」と適当に答えておいた。魔女さんとはたまにダニエル様も会っているらしく、詳しくは聞かれなかったので安心した。
ダニエル様はどことなく事情を知っているような気はしたものの……私にできるのは誤魔化すことだけだ。
そのあとは、王都にはどんな楽しい場所があるのか教えてほしいなど話題を引き出す役に徹した。……その方が楽だしね。
贈り物には、見る角度によって色を変える人工的につくられた宝飾品加工用の魔石をいただいた。お値段は凄そうだ。持っているだけで怖いので、レイモンドに預かってもらった。
そうしてなぜか私は別室で……ジェニファー様とソファの上で二人きりになっている。
なんで!!!
「ごめんなさい、アリス様。二人きりでお話をしたいとお呼びしてしまって」
ほんっと迷惑だよ。
レイモンドと離れるのは不安で仕方がない。何か失礼なことをしても、フォローしてくれる人がいないのは怖すぎる。
「いえ。私もジェニファー様と二人でお話してみたかったので、お気になさらないでください」
こう言うしかないよね。
まぁ、学園でのことを考えれば……頑張ろう。レイモンドがいない時の、ぼっち回避のために……!
「アリス様は魔女様に選ばれた方。才能もおありで、人格者でも……ありますのよね」
ありませんけど!
むしろ変態魔女さんが拾ったのだから変態でありますのよねって言われた方が、そう思うよねーうんうんって納得するよ……。
「私にはただ、困っていたら拾っていただいたという認識しかありませんわ」
「そんなアリス様に……お願いがありますの」
魔女さん、なんでこんなに信頼されているの。やだなぁ、人格者っぽく振る舞いたくないんだけど。
それに拾ってもらっただけの話がなんで選ばれたってことに……まぁ、普通ならほっとかれるか。不幸な人間をわざわざ救うなんて深い介入はしない。放置されなかった時点で選ばれたってことになるのかな。
「なんでしょうか」
「私は将来の王妃ですわ。つかず離れずの関係を皆様と築かなくてはいけないの。特別親しくなれば、今だけはよくても……いずれ夫を要職に就かせてほしいなどといった要求をされてしまうのよ。それとなくダニエル様に口を利いてくれないかとね。親しくなるのなら、何かをお願いされても強く跳ね除ける心積もりが必要となりますわ」
ああー……大変だ。私には、つかず離れずの関係の相手もいないけどね。
「でも、アリス様は学園卒業後には、また戻りますものね。そのあとに私と会うことも年に数回あるかどうか……」
ああ、そういうことね。
親しくなっても何も要求してこない相手。逆に問題が起きたとしても、どうせ離れるからと気楽に話せる相手。記憶喪失だったからこそ、教えてあげているという形で、こうやって変な要求をするなといったお願いもしやすい。しかも……魔女さんに拾ってもらえたっていうお墨付きがある。
彼女にとって仲よくなってもメリットしかないよね。いずれ強い力を持つ辺境伯の嫁になるなら、仮にいつかレイモンドが王家と対立しそうになっても私が緩衝役になるかもしれないわけだ。
「そうですわね。ジェニファー様と親しくなれるのなら、卒業後にお会いするのも楽しみになりますわ。気が早いかもしれませんけど」
ジェニファー様……女の子だけのスクールカーストでいえばトップだよね。頑張ってほどほどに他の女の子にやっかまれない程度に私も仲よくはしておきたい。
「よかったわ! 実はね、私に付いているメイドも学園に通っていたことがあって……話を聞いて羨ましくなってしまったのよ。私も同じような学園生活を送ってみたいって」
……どんな話を聞いたんだろう。
「アリス様は……レイモンド様がお好きなのよね? ダニエル様には惹かれませんわよね?」
え、婚約者なのに何言って……ああ、側室狙いもいるのか。
「ええ、それはないですわ」
「あの見た目でフランシス様に憧れるご息女は多いのですが……ダニエル様には強いカリスマ性がありますの。浅く広くならフランシス様ですが、あのお歳でもダニエル様に心酔して夢中になってしまう方もいて……少しでも話したいがために私と親しくなろうとする方もいるのよ」
ああ……分かる気がする。
私にダニエル様と仲よくなられてベッタベッタされたら、たまらないよね。
「さっきはお答えになられませんでしたけど、私と二人なら教えていただけるかしら。レイモンド様の、どこをお好きになられましたの?」
レイモンド、助けて!!!
もしかして恋バナとか!?
したい系!?
うう……ソファの上でジェニファー様がにじり寄って来た……。
「え、えっと……言葉にするのは難しくて……」
「どうして?」
「んん……優しいところも好きですけど、そう言ってしまったら優しくなかったら好きじゃないみたいだし……むしろ優しくしすぎだから控えてほしいとも思ったり……私のことをいつも考えてくれるのも……嬉しいけど……」
顔が熱いー……絶対真っ赤になってるー……。
「やっぱりもっと自分のことを考えてほしいっていうか……その……」
「アリス様って……とても可愛らしい方ですのね。レイモンド様のことも、とても好きでいらっしゃるのね。ねぇ、その話し方のほうが楽なの? いつもはそうなのかしら」
ああ……付け焼刃が剥がれていくー。
「は、はい。失礼しましたわ」
「ねぇ、私と二人の時だけはその話し方にしてくださらない? アリス、アリスと呼んでいいかしら。私のことはジェニーと」
え……いきなり距離を詰められているんだけど。
「ここだけの話ね、ダニエル様は私のことを特別好きではいらっしゃらないのよ。こんな短期間でどうしたら好きになるのかしら。気になるの。教えてくださらないかしら、アリス」
「え……と、ジェニファー様……」
「私的な場では、ジェニーよ」
短期間で好きになってもらえる方法を探しているのか……コレ、キツイ……!!!
「ジェニー……」
「ええ、そうよ。アリス、あなたは人格者。このこと、誰にも言わないわよね?」
「ええ、絶対に言わないわ」
「秘密の話よ。特別な内緒話。ねぇお願い、教えて? どうしたらそんなに早く好きになるの? レイモンド様はあなたのどこが好きなの?」
ジェニファー様……可愛らしい方だと分かったけど、心臓がぁぁぁ。
ふわーん!
早く!
早く帰らせてー!
ダニエル様はどことなく事情を知っているような気はしたものの……私にできるのは誤魔化すことだけだ。
そのあとは、王都にはどんな楽しい場所があるのか教えてほしいなど話題を引き出す役に徹した。……その方が楽だしね。
贈り物には、見る角度によって色を変える人工的につくられた宝飾品加工用の魔石をいただいた。お値段は凄そうだ。持っているだけで怖いので、レイモンドに預かってもらった。
そうしてなぜか私は別室で……ジェニファー様とソファの上で二人きりになっている。
なんで!!!
「ごめんなさい、アリス様。二人きりでお話をしたいとお呼びしてしまって」
ほんっと迷惑だよ。
レイモンドと離れるのは不安で仕方がない。何か失礼なことをしても、フォローしてくれる人がいないのは怖すぎる。
「いえ。私もジェニファー様と二人でお話してみたかったので、お気になさらないでください」
こう言うしかないよね。
まぁ、学園でのことを考えれば……頑張ろう。レイモンドがいない時の、ぼっち回避のために……!
「アリス様は魔女様に選ばれた方。才能もおありで、人格者でも……ありますのよね」
ありませんけど!
むしろ変態魔女さんが拾ったのだから変態でありますのよねって言われた方が、そう思うよねーうんうんって納得するよ……。
「私にはただ、困っていたら拾っていただいたという認識しかありませんわ」
「そんなアリス様に……お願いがありますの」
魔女さん、なんでこんなに信頼されているの。やだなぁ、人格者っぽく振る舞いたくないんだけど。
それに拾ってもらっただけの話がなんで選ばれたってことに……まぁ、普通ならほっとかれるか。不幸な人間をわざわざ救うなんて深い介入はしない。放置されなかった時点で選ばれたってことになるのかな。
「なんでしょうか」
「私は将来の王妃ですわ。つかず離れずの関係を皆様と築かなくてはいけないの。特別親しくなれば、今だけはよくても……いずれ夫を要職に就かせてほしいなどといった要求をされてしまうのよ。それとなくダニエル様に口を利いてくれないかとね。親しくなるのなら、何かをお願いされても強く跳ね除ける心積もりが必要となりますわ」
ああー……大変だ。私には、つかず離れずの関係の相手もいないけどね。
「でも、アリス様は学園卒業後には、また戻りますものね。そのあとに私と会うことも年に数回あるかどうか……」
ああ、そういうことね。
親しくなっても何も要求してこない相手。逆に問題が起きたとしても、どうせ離れるからと気楽に話せる相手。記憶喪失だったからこそ、教えてあげているという形で、こうやって変な要求をするなといったお願いもしやすい。しかも……魔女さんに拾ってもらえたっていうお墨付きがある。
彼女にとって仲よくなってもメリットしかないよね。いずれ強い力を持つ辺境伯の嫁になるなら、仮にいつかレイモンドが王家と対立しそうになっても私が緩衝役になるかもしれないわけだ。
「そうですわね。ジェニファー様と親しくなれるのなら、卒業後にお会いするのも楽しみになりますわ。気が早いかもしれませんけど」
ジェニファー様……女の子だけのスクールカーストでいえばトップだよね。頑張ってほどほどに他の女の子にやっかまれない程度に私も仲よくはしておきたい。
「よかったわ! 実はね、私に付いているメイドも学園に通っていたことがあって……話を聞いて羨ましくなってしまったのよ。私も同じような学園生活を送ってみたいって」
……どんな話を聞いたんだろう。
「アリス様は……レイモンド様がお好きなのよね? ダニエル様には惹かれませんわよね?」
え、婚約者なのに何言って……ああ、側室狙いもいるのか。
「ええ、それはないですわ」
「あの見た目でフランシス様に憧れるご息女は多いのですが……ダニエル様には強いカリスマ性がありますの。浅く広くならフランシス様ですが、あのお歳でもダニエル様に心酔して夢中になってしまう方もいて……少しでも話したいがために私と親しくなろうとする方もいるのよ」
ああ……分かる気がする。
私にダニエル様と仲よくなられてベッタベッタされたら、たまらないよね。
「さっきはお答えになられませんでしたけど、私と二人なら教えていただけるかしら。レイモンド様の、どこをお好きになられましたの?」
レイモンド、助けて!!!
もしかして恋バナとか!?
したい系!?
うう……ソファの上でジェニファー様がにじり寄って来た……。
「え、えっと……言葉にするのは難しくて……」
「どうして?」
「んん……優しいところも好きですけど、そう言ってしまったら優しくなかったら好きじゃないみたいだし……むしろ優しくしすぎだから控えてほしいとも思ったり……私のことをいつも考えてくれるのも……嬉しいけど……」
顔が熱いー……絶対真っ赤になってるー……。
「やっぱりもっと自分のことを考えてほしいっていうか……その……」
「アリス様って……とても可愛らしい方ですのね。レイモンド様のことも、とても好きでいらっしゃるのね。ねぇ、その話し方のほうが楽なの? いつもはそうなのかしら」
ああ……付け焼刃が剥がれていくー。
「は、はい。失礼しましたわ」
「ねぇ、私と二人の時だけはその話し方にしてくださらない? アリス、アリスと呼んでいいかしら。私のことはジェニーと」
え……いきなり距離を詰められているんだけど。
「ここだけの話ね、ダニエル様は私のことを特別好きではいらっしゃらないのよ。こんな短期間でどうしたら好きになるのかしら。気になるの。教えてくださらないかしら、アリス」
「え……と、ジェニファー様……」
「私的な場では、ジェニーよ」
短期間で好きになってもらえる方法を探しているのか……コレ、キツイ……!!!
「ジェニー……」
「ええ、そうよ。アリス、あなたは人格者。このこと、誰にも言わないわよね?」
「ええ、絶対に言わないわ」
「秘密の話よ。特別な内緒話。ねぇお願い、教えて? どうしたらそんなに早く好きになるの? レイモンド様はあなたのどこが好きなの?」
ジェニファー様……可愛らしい方だと分かったけど、心臓がぁぁぁ。
ふわーん!
早く!
早く帰らせてー!
応援ありがとうございます!
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