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前編 恋の自覚と両思い
47.レイモンドの過去2/5
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「……何をしているんだろう」
アリスを見た時、その謎行動に真っ先に目がいった。
ずっと小さい子の真後ろにいる……にも関わらず、顔が真剣だ。なんでだろう。
髪も黒い。こっちでは魔女さん以外では見たことがない。魔女さんの親戚に見えちゃうよね……。それに、すごくヘンテコな服を着ている。でも、シンプルで動きやすそうだな。さすが異世界だ。家具類も馴染みのないものが多い。
これは……異世界の覗き見にはまりそうだ。俺以外に覗いた奴がいたのなら、本業そっちのけではまっちゃったんじゃないの?
集中して見ていると、声も頭の中に入ってきた。しかし……何を言っているのかサッパリだ。
「うわ! 危ない!」
アリスの目の前にいた小さな男の子が、真後ろへ頭からぶっ倒れた。すかさず彼女がキャッチをする。
そっか……守っていたんだ、あの男の子を。
「つかまり立ちの時期ねぇ~? まだ一人で立つこともできない……生後六ヶ月の光樹くん。女の子は十一歳になって間もない愛里朱ちゃん。夢咲愛里朱ちゃんよぉ~」
俺は十歳だから、一つ上か。
雰囲気としては平民……それなら母親はどうしているんだ?
ああ……料理中か。その間に彼女が世話をしているのか。
あれ、もう一人男の子がいるな……あれは、なんだ? 大きな四角い機械に映像が映っている……生きているように絵が動く。文明ははるかに、異世界の方が進んでいるのか。
男の子が「はぁぁぁぁ!」とか叫んでいる……あの映像の真似をしているのか。あ、また何かを叫んで彼女に手を向けた。
あー……倒れる真似をしてあげている……た、大変そうだな……。
「あの子は大樹くん。六歳になったばかりねぇ~」
「あの大きな四角い機械は何?」
「映像と音声が離れた場所から送られてくる機械で、テレビって名前よぉ~。人間が開発した発明品。魔法は存在しないから使われていないわよぉ。どの家にもほとんどあるわぁ~」
「……すごいな」
声は聞こえるのに意味が分からないのがもどかしい。
でも……彼女の言葉はなんとなく分かるかな。もう一度つかまり立ちを始めた男の子に『すごいね~』と言って拍手をしている。発音がこっちと違うから聞き取りにくいけど、褒め言葉なんだろう。
あれ……テレビより小さな機械を大樹くんが手に持って……ん? さっきと同じ映像になった?
「録画っていってね~、受信した映像を記録しておいて、巻き戻したりもできるのよ~」
異世界……すごいな。魔法を使えない方が人間、試行錯誤をするってことかな。
うわぁ、また大樹くんが彼女に手を向けて……さすがに倒れる真似をしながらため息を吐いて、キッチンを見ている……早くご飯ができないかなって思っているのかな。
あれ。でも今はご飯の時間じゃないよね。
「こことは時間が違うの?」
「お弁当の作り置きを準備しているようね。そのためにアリスちゃんに世話を頼んだみたいよ」
そっか……使用人がいないと、そうなっちゃうのか。
彼女が声をかけて、大樹くんが光樹くんの後ろについた。どこかに彼女は行くみたいだ。
違う部屋……? さっきの部屋よりも狭い。
あれは、なんだろう。ピンクのふわふわした……うわ、めっちゃ怒りながらバーンって叩いた。
「風船ねぇ~。子供の遊び道具。空気を入れて、ふわふわさせるのよぉ」
あれ、また違う部屋に……?
「トイレかしらね~?」
「え」
バシュンッと映像が消えた。
まぁ……そうだよね。
「アリスって名前だっけ」
「ええ、そうよぉ」
「風船を叩いて壁に打ち付けて、何をやっていたんだろう」
「八つ当たりでしょうねぇ~、苛々した時の彼女なりのストレス解消かしらぁ」
「子供の……遊び道具で?」
「ええ、遊び道具で。風船なら誰にも迷惑はかからないものねぇ~?」
……可愛いな。可愛い。なぜか……ドキドキしてきた。
「また……続きを見れるかな」
「念じてみればぁ~?」
光樹くんの方を……あ、映った。え……倒れて泣いているよ……。
アリスが走ってきた!
抱きしめて……大樹くんに怒って、頭とか確認している……涙が滲んで……お母さんに向かって何かを言っているな。
「トイレものんびりできないんだな……」
「これだけ年が離れていると、保護者みたいになっちゃうわよね~」
「俺と大して年齢は変わらないのに……」
乳母に監視されるのは鬱陶しいと思っていたけど……安全のためには仕方がなかったのかな……。
可愛いな、アリス。俺も手伝いに行きたい。俺が光樹くんを見ているから、部屋で少し落ち着いてきなよって言ってあげたい……。
「父親はどうしているんだろう」
「今日はお休みの日だけれど……お仕事が入ったようねぇ~」
やっぱり異世界のことも、なんでも分かるんだな。どっちを創造したのも同じ神だからこそ、簡単に召喚もできるんだろう。
光樹くんが泣き止んだ……よかった……。アリスもほっとしている。涙や鼻水を拭ってあげている。
大樹くんは、やっちゃったって顔で気にしながらもテレビを見ている……そんな年齢って分かるけど苛つくな。あー……でも顔が赤い。目を離したことを小さいながらに後悔しているのかな。
こうやって世話を焼きながら苛々が溜まったら、またアリスは風船を叩くのかな。
可愛いな、可愛いよ……俺、可愛い子を映してって頼んだんだっけ?
いや……違うな。その条件は入れていない。小さい子の世話をしたことがあって……えっと、他は…………。
――――五年以内に死ぬ子だ…………。
いきなり……深い深い海の底にでも落ちた気になった。
アリスを見た時、その謎行動に真っ先に目がいった。
ずっと小さい子の真後ろにいる……にも関わらず、顔が真剣だ。なんでだろう。
髪も黒い。こっちでは魔女さん以外では見たことがない。魔女さんの親戚に見えちゃうよね……。それに、すごくヘンテコな服を着ている。でも、シンプルで動きやすそうだな。さすが異世界だ。家具類も馴染みのないものが多い。
これは……異世界の覗き見にはまりそうだ。俺以外に覗いた奴がいたのなら、本業そっちのけではまっちゃったんじゃないの?
集中して見ていると、声も頭の中に入ってきた。しかし……何を言っているのかサッパリだ。
「うわ! 危ない!」
アリスの目の前にいた小さな男の子が、真後ろへ頭からぶっ倒れた。すかさず彼女がキャッチをする。
そっか……守っていたんだ、あの男の子を。
「つかまり立ちの時期ねぇ~? まだ一人で立つこともできない……生後六ヶ月の光樹くん。女の子は十一歳になって間もない愛里朱ちゃん。夢咲愛里朱ちゃんよぉ~」
俺は十歳だから、一つ上か。
雰囲気としては平民……それなら母親はどうしているんだ?
ああ……料理中か。その間に彼女が世話をしているのか。
あれ、もう一人男の子がいるな……あれは、なんだ? 大きな四角い機械に映像が映っている……生きているように絵が動く。文明ははるかに、異世界の方が進んでいるのか。
男の子が「はぁぁぁぁ!」とか叫んでいる……あの映像の真似をしているのか。あ、また何かを叫んで彼女に手を向けた。
あー……倒れる真似をしてあげている……た、大変そうだな……。
「あの子は大樹くん。六歳になったばかりねぇ~」
「あの大きな四角い機械は何?」
「映像と音声が離れた場所から送られてくる機械で、テレビって名前よぉ~。人間が開発した発明品。魔法は存在しないから使われていないわよぉ。どの家にもほとんどあるわぁ~」
「……すごいな」
声は聞こえるのに意味が分からないのがもどかしい。
でも……彼女の言葉はなんとなく分かるかな。もう一度つかまり立ちを始めた男の子に『すごいね~』と言って拍手をしている。発音がこっちと違うから聞き取りにくいけど、褒め言葉なんだろう。
あれ……テレビより小さな機械を大樹くんが手に持って……ん? さっきと同じ映像になった?
「録画っていってね~、受信した映像を記録しておいて、巻き戻したりもできるのよ~」
異世界……すごいな。魔法を使えない方が人間、試行錯誤をするってことかな。
うわぁ、また大樹くんが彼女に手を向けて……さすがに倒れる真似をしながらため息を吐いて、キッチンを見ている……早くご飯ができないかなって思っているのかな。
あれ。でも今はご飯の時間じゃないよね。
「こことは時間が違うの?」
「お弁当の作り置きを準備しているようね。そのためにアリスちゃんに世話を頼んだみたいよ」
そっか……使用人がいないと、そうなっちゃうのか。
彼女が声をかけて、大樹くんが光樹くんの後ろについた。どこかに彼女は行くみたいだ。
違う部屋……? さっきの部屋よりも狭い。
あれは、なんだろう。ピンクのふわふわした……うわ、めっちゃ怒りながらバーンって叩いた。
「風船ねぇ~。子供の遊び道具。空気を入れて、ふわふわさせるのよぉ」
あれ、また違う部屋に……?
「トイレかしらね~?」
「え」
バシュンッと映像が消えた。
まぁ……そうだよね。
「アリスって名前だっけ」
「ええ、そうよぉ」
「風船を叩いて壁に打ち付けて、何をやっていたんだろう」
「八つ当たりでしょうねぇ~、苛々した時の彼女なりのストレス解消かしらぁ」
「子供の……遊び道具で?」
「ええ、遊び道具で。風船なら誰にも迷惑はかからないものねぇ~?」
……可愛いな。可愛い。なぜか……ドキドキしてきた。
「また……続きを見れるかな」
「念じてみればぁ~?」
光樹くんの方を……あ、映った。え……倒れて泣いているよ……。
アリスが走ってきた!
抱きしめて……大樹くんに怒って、頭とか確認している……涙が滲んで……お母さんに向かって何かを言っているな。
「トイレものんびりできないんだな……」
「これだけ年が離れていると、保護者みたいになっちゃうわよね~」
「俺と大して年齢は変わらないのに……」
乳母に監視されるのは鬱陶しいと思っていたけど……安全のためには仕方がなかったのかな……。
可愛いな、アリス。俺も手伝いに行きたい。俺が光樹くんを見ているから、部屋で少し落ち着いてきなよって言ってあげたい……。
「父親はどうしているんだろう」
「今日はお休みの日だけれど……お仕事が入ったようねぇ~」
やっぱり異世界のことも、なんでも分かるんだな。どっちを創造したのも同じ神だからこそ、簡単に召喚もできるんだろう。
光樹くんが泣き止んだ……よかった……。アリスもほっとしている。涙や鼻水を拭ってあげている。
大樹くんは、やっちゃったって顔で気にしながらもテレビを見ている……そんな年齢って分かるけど苛つくな。あー……でも顔が赤い。目を離したことを小さいながらに後悔しているのかな。
こうやって世話を焼きながら苛々が溜まったら、またアリスは風船を叩くのかな。
可愛いな、可愛いよ……俺、可愛い子を映してって頼んだんだっけ?
いや……違うな。その条件は入れていない。小さい子の世話をしたことがあって……えっと、他は…………。
――――五年以内に死ぬ子だ…………。
いきなり……深い深い海の底にでも落ちた気になった。
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